新型プリウスに試乗|TOYOTA
Toyota Prius|トヨタ プリウス
新型プリウスに試乗
楽しむために乗る意味のあるクルマ
昨年12月9日にデビューした新型プリウス。4代目となる今回のモデルでは、TNGAと称されるトヨタの新プラットフォームやリチウムイオンバッテリーが初採用されるなど、大きな進化を遂げているという。モータージャーナリスト、小川フミオ氏がさっそく試乗した。
Text by OGAWA Fumio Photographs by TSUKAHARA Takaaki
新世代開発における眼目
結論を先に書くと、初めて「プリウス」が欲しくなった。2015年12月に発売された4代目プリウスは、試乗すると、それほどよく出来ていると感心するのだ。
新型プリウスは、プラグインハイブリッド化せず、従来どおり、1.8リッターエンジンに電気モーターを組み合わせる。72kW(98ps)の最高出力と142Nmの最大トルクを出すエンジンと、163Nmの最大トルクを出すモーターとを組み合わせている。
エンジンは、吸気ポートの形状変更や、燃焼効率向上のためにインテークマニフォルドにおおけるEGR分配経路の構造変更などを実施。最大熱効率40パーセント達成を実現。これにさらに高効率化したハイブリッドシステムを組み合わせることで、燃費は最高で40.8km/ℓ(JC08モード)を実現している。
バッテリーは、一部車種にはリチウムイオン電池が用意されたが、併売される従来のニッケル水素と、性能的には同等という。
燃費の向上は、従来からのプリウスの路線継承だ。いっぽう、まったく新しい、特筆すべき特徴がある。TNGAと称されるトヨタの新しいプラットフォームが、4代目で採用されたのだ。
なぜ、新しいプラットフォームが、新型プリウスの最大の特徴なのか。それこそ、まさに“乗ればわかる”といいたい。「トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー」と名づけられた新世代のプラットフォーム(クルマの土台となる部分)を開発した結果、ハンドリングがすばらしく向上し、乗るのが楽しいクルマに仕上がっている。
新型プリウスに、従来のプリウスから乗り換えると、違いが歴然としているのに驚くほどだ。ドライビングポジションがじつに自然なのだ。3代目プリウスではステアリングホイールを寝かせ気味と感じられたが、新型は、シートにおさまって、すっと手を伸ばしたところに、自然な角度でステアリングホイールがある。
「従来のプリウスの弱みは、走りの楽しさと乗り心地にあったと分析しました。それを克服するのが、新世代開発における眼目のひとつでした」と開発エンジニアは説明してくれた。座っただけで新しい(気持ちいい、というべきか)と感じられる新型プリウスは、まったく別モノに仕上がっていた。
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TNGAがもたらすもの
「TNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャー)で目指したのは、低重心・高剛性です」。開発担当者が語るように、新型プリウスでは重心高の見直しが徹底的に行われたという。
従来型は高めの着座位置が設定されていて、そのためシートポジションを下げると、ステアリングホイールを(トラックのように)抱え込む姿勢になってしまった。もちろん、着座位置が高めなのは、高齢者などには好評だったそうだ。しかし新型では、走りの楽しさのために、あえてそこから離れたようだ。
「少しシートが下がって乗り降りが不便になったとユーザーの方からお叱りを受けました」。担当者は苦笑するが、僕には大歓迎だ。後席に座った際に、眼の前に前席シートがそびえ立つような圧迫感が薄れたことが嬉しい。かつ、ステアリングホイールの角度もアクセルやブレーキなどの角度もじつに自然になった。それが、走り出しも加速もよく、かつロールが抑えられてスポーティともいえるクルマの操縦性とよく合っている。
「TNGAの究極的な目標は、トヨタ車全体として、ひとつのテイストを出すこと。これまでは車両ごとに、開発の総責任者であるチーフエンジニアや主査の考えが色濃く反映されていましたが、その方向性を統一していこうというところから、TNGAのプロジェクトはスタートしました」
裏話としては、TNGAの担当チーム(大きくいうと前輪駆動と後輪駆動に分かれるようだ)は、自分たちで“これだ”という操縦性を与えた車両を作り、車内のチーフエンジニアらに乗ってもらったという。その中から新型プリウスも生まれた。開発総指揮を担当した豊島浩二チーフエンジニアは「その方向性は完璧に腑に落ちました」と話してくれた。
そうやって開発された車両は、ひとことで言って軽快。この原稿を書いている時点で世界は記録的な原油安。レギュラーガソリンの価格がリッターあたり100円を切ろうかというときに、純粋にハイブリッド車を燃費のために買おうというのでは、なかなか“元”がとれない。一説によると8万km走らないと無理だとか。300万円前後の新型プリウスは、しかし、楽しむために乗る意味のあるクルマなのだ。従来とまったく違う価値観を持ったクルマである。
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楽しむために乗る意味のあるクルマ (3)
スポーツモデルが出てほしい
新型プリウスに乗ると、スタートからしてスムーズ。加速を続けると、滑らかにEVモードからエンジンモードに入るが、エンジン回転は低いまま、十分に力強さを感じさせる走りが味わえる。ステアリングホイールを切った時の車体の動きは素直で気持ちよい。将来的にスポーツモデルが出たらいいなと思わせるほどだ。
タイヤも新開発。現在は新型プリウスにのみ用意される。特徴は、開発者らが目指した「安心」「自然」「上質感」を実現したところという。先代も燃費効率などのために真円度の高さなどにこだわっていたが、新しいタイヤは接地性や騒音など、新たな基準をクリアしたものとなったそうだ。
アクセルペダルのオンオフによるスピードコントロールにも気が遣われているようだ。減速したいときはアクセルペダルをゆるめることで、ドライバーの感覚と合った減速感が得られる。アクセルペダルを踏み込んで目標とする速度に達する正確性とともに、2つのペダルは絶妙なフィールで調整されている。見えない上質性だ。
ブレーキのフィールにも気を遣ったと開発担当者が言うとおり、ブレーキペダルを踏んだときの減速感もまた、新型プリウスの魅力だ。軽量スポーツカーに乗っているようだ。ブレーキペダルのオーバーサーボ感はなく、自然に軽い車体を制動していく感覚がとてもよい。ただし何台か試乗した中で、踏んだときの感覚がすこしゴムっぽく感じたものもあり、まだ初期の段階で品質のばらつきがあるかもしれない。
今回は後輪を電気モーターで駆動する「e-four」を搭載したフルタイム4WD仕様にも乗った。積雪のある地方のユーザーのニーズに応えた結果というが、それほど車体の重さも感じさせず、操縦性もナチュラルだ。雪が降らない地方であえてこのクルマを選ぶ意味はないだろうが、プリウスの世界観が拡大したという意味で、エポックメーキングなモデルといえるかもしれない。
Toyota Prius A Premium|トヨタ プリウス A プレミアム
ボディサイズ|全長 4,540 × 全幅 1,760 × 全高1,470 mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,530 / 1,540 mm
重量|1,380 kg
最低地上高|130 mm
エンジン|1,797 cc 直列4気筒 DOHC
ボア×ストローク|80.5 × 88.3 mm
エンジン最高出力| 72 kW(98 ps)/ 5,200 rpm
エンジン最大トルク|142 Nm(14.5 kgm)/36,000 rpm
フロントモーター|交流同期電動機
モーター最高出力|53 kW(72 ps)
モータートルク|163 Nm(16.6 kgm)
バッテリー|リチウムイオン電池(ニッケル水素電池) 56 個 /3.6 Ah
トランスミッション|電機式無段変速機
駆動方式|FF
タイヤ 前/後|195/65R15
サスペンション 前/後|ストラット / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|37.2 km/ℓ
CO2排出量(JC08モード)|62 g/km
トランク容量|502 ℓ
価格|310万7,455円
Toyota Prius A Premium Touring Selection E-Four|トヨタ プリウス A プレミアム ツーリングセレクション E-Four
ボディサイズ|全長 4,540 × 全幅 1,760 × 全高1,475 mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,510 / 1,520 mm
重量|1,460 kg
最低地上高|135 mm
エンジン|1,797 cc 直列4気筒 DOHC
ボア×ストローク|80.5 × 88.3 mm
エンジン最高出力| 72 kW(98 ps)/ 5,200 rpm
エンジン最大トルク|142 Nm(14.5 kgm)/36,000 rpm
フロントモーター|交流同期電動機
モーター最高出力|53 kW(72 ps)
モータートルク|163 Nm(16.6 kgm)
リアモーター|交流同期電動機
モーター最高出力|5.3 kW(7.2 ps)
モータートルク|55 Nm(5.6 kgm)
バッテリー|リチウムイオン電池[ニッケル水素電池] 56 [28] 個 /3.6 [6.5] Ah
トランスミッション|電機式無段変速機
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|215/45R17
サスペンション 前/後|ストラット / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|34.0 km/ℓ
CO2排出量(JC08モード)|68 g/km
トランク容量|502 ℓ
価格|339万4,145円
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