TOYOTA PRIUS|トヨタ・プリウス(前編)
CAR / IMPRESSION
2015年4月16日

TOYOTA PRIUS|トヨタ・プリウス(前編)

TOYOTA PRIUS|トヨタ・プリウス(前編)

トヨタの経営にとっての大動脈

日本車史上かつてない14万台というバックオーダーを抱える、新型トヨタ・プリウス。ホンダ・インサイトに遅れること4カ月。このたびデビューした元祖ハイブリッドカーに、気鋭の自動車ジャーナリスト、渡辺敏史が試乗した。

文=渡辺敏史写真=河野敦樹

リッター38kmの低燃費を実現

日本車史上かつてない、14万台というバックオーダーを抱える新型プリウス。日本の2工場で生産されるその能力は早速上方修正され、現在は5万台/月という規模でフル稼働している。前型のほぼ倍、80カ国に輸出されることを鑑みても、この数は尋常ではない。物語るのは、もはやプリウスはトヨタの経営にとって大動脈に等しい存在になったということだ。

新型プリウスのグレード体系は3つ。スタンダードに相当する「S」と、シート表皮やステアリング等の内装周りの加飾が充実する「G」、そして205万円というもっとも安い値段のつけられた「L」は、装備が簡略化(それでもオーディオ以外はフル装備に相当)されるものの、フロア下の空力効果を狙ったアンダーパネルが付けられるなど、シリーズ中もっとも優れた燃費(38km/ℓ)を記録する、文字通りのエコグレードとなっている。そして「S」と「G」には、17インチタイヤや専用サスペンション、レクサスLSやRXのハイブリッドにも用いられるLED式ヘッドライトが装着されるツーリングセレクションという仕様が別途設定される。

どんな高級車よりもエレガントに映る

イグニッションキーを捻る……ではなくボタンを押すと、メーターにREADYの表示が灯るとともに「ヒーン」というインバータの作動音が微かに響く。プリウスではおなじみのひと時だが、いざこれに慣れてしまうと、油を燃やして走るごく当たり前なクルマがひどく野蛮なものに思えてくるから困ったものだ。

音もなく走りはじめるその所作は、考えようによってはどんな高級車よりもエレガントに映る。それは走行中も然りで、モーターの稼働が大きく、エンジンがほとんどアイドリングに等しい中低速域の静穏さは、時に自分が乗っているものが3クラスは上の高級車に思えてくるほどだ。

そして新型プリウスでは、このモーター稼働領域が確実に増大した。前型に対して小型・高回転化されたモーターはコストダウンに一役担うとともに、高速域までモーターの守備範囲を広げるための選択だ。それがリダクションギアを介することによって中低速域のアシストにもしっかり作用している。

モーターとエンジンの力配分をリニアにコントロールする遊星ギア式無段変速はプリウスの技術の要。そこにリダクションギアがくわわることでとことんまでモーターの旨味を絞り尽くす。つくづく、プリウスは歯車に支えられたクルマだなぁと思う。

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