488 スパイダー、早くもジャパンプレミア|Ferrari
CAR / NEWS
2015年10月28日

488 スパイダー、早くもジャパンプレミア|Ferrari

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

フェラーリ 488 スパイダー、早くもジャパンプレミア

フェラーリ・ジャパンは10月23日、横浜の大さん橋ホールを会場に「488 スパイダー」のジャパンプレミアを開催した。488 スパイダーは、先のフランクフルト モーターショーで一般公開されたV8ミッドシップの最新モデル。今年3月に開催されたジュネーブ モーターショーでワールドプレミアされた「488 GTB」のオープン版であり、デビューからわずか約1ヵ月の早さで日本上陸を果たしたことになる。

Text by SAKURAI Kenichi

クーペとオープン、ふたつのスタイル

フェラーリ「488 スパイダー」は、今年3月のジュネーブ モーターショーで発表されたベルリネッタ(クーペ)、「488 GTB」のオープン仕様となるモデルだ。これまでであれば、ベルリネッタの登場から2、3年後にオープンモデルを追加するのがフェラーリでは一般的だった。かつてないスピードでクーペにつづきオープンモデルを発表したのにはふたつ理由がある。

ひとつは、ボディやシャシーのデザイン、ボディ構造の解析から、衝突実験、風洞実験(空力特性の熟成)にいたるまでを、いまではどのメーカーでも当たり前となったデジタル技術を駆使した開発によっておこない、従来よりも大幅に開発時間が短縮できているからだ。実際488 スパイダーも、開発はクーペの488GTBとほぼ同時であったという。数々のシミュレーションをバーチャルでおこなうことによって得られた時間や予算の節約など、開発上のメリットはじつに大きい。もちろん、これはフェラーリだけにかぎった話ではない。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

Ferrari 488Spider(2015)

Ferrari 308GTS|フェラーリ 308GTS

Ferrari 308GTS(1977)

そしてもうひとつ。それは、ライバル、ランボルギーニの存在だ。先のフランクフルト ショーで488スパイダーは、ランボルギーニの新型オープンモデル、「ウラカン LP610-4 スパイダー」と期せずして同日のワールドプレミアスケジュールとなった。この両モデルはミッドシップスーパーカーの好敵手であり、世界の市場人気を二分する双璧でもある。ライバルに先駆け「世界でもトップクラスに位置する重要な市場」とフェラーリ・ジャパン代表取締役社長リノ デパオリ氏がいう日本で、いち早くその詳細を公開することはマーケティング戦略のうえでも欠かせないプランだったと想像することはたやすい。

10月23日、横浜は大さん橋ホールを会場に、「308 GTS」から先代「458 Spider」まで、約40年にわたる同社のオープンエアドライビングを支えてきた歴代のV8ミッドシップオープンモデルが並ぶなか、新色である「ブルー コルサ」のボディカラーを採用した488 スパイダーが日本で披露された。

488 スパイダーのジャパンプレミアには、先のフェラーリ・ジャパン代表取締役社長リノ・デパオリ氏のほか、フェラーリ極東エリア統括マネージングディレクターのディーター・クネヒテル氏が出席。「史上もっともパワフルな性能をもつV8ミッドシップマシンの極上なドライビングと、オープンエアモータリングを楽しんでもらう。それが488 スパイダーの開発コンセプトであり魅力。オープントップを開けてダイレクトなエンジンサウンドを楽しめるほか、2名乗車時にじゅうぶんな室内の快適性と実用性も兼ね備えています」と説明した。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

フェラーリ 488 スパイダー、早くもジャパンプレミア (2)

スペックのみならず実用性も向上

ジャパンプレミアを果たした488 スパイダーの詳細は登場時のリポートに明るいので割愛するが、史上最強のV8オープン フェラーリとして注目されるパワーユニットは、先にモデルチェンジをおこなったベルリネッタ、488 GTBに準じたパワートレインと同一。すなわち最高出力670ps/8,000rpm、最大トルク760Nm(77.4kgm)/3,000rpmを発揮する3.9リッター直噴V8ツインターボエンジンである。

これは、先代モデルである458 スパイダー比で約100psもパワーを向上したことになり、0-100km/h加速が3.0秒フラット、最高速度は325km/h以上と発表されている。0-100km/h加速タイムはベルリネッタの488 GTBと同一、最高速度はわずかに5km/hおよばないが、いずれにしてもフェラーリのオープンモデル史上、最速の称号を得ていることはまちがいない。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

新開発のツインスクロール ターボチャージャーには、ボールベアリングを使用したクランクシャフト、低密度チタニウム合金による軽量なコンプレッサーホイールなど、F1由来の技術を採用。フェラーリの本格量産モデルとしては、3車種目のターボモデルとなるが、「ターボラグはほとんどゼロにちかい自然吸気エンジンのようなフィーリング」(フェラーリ極東エリア統括マネージングディレクターのディーター・クネヒテル氏)と、フェラーリは胸を張る。組み合わせられるトランスミッションは、488 GTBとおなじく7段デュアルクラッチトランスミッションで、MTの設定はない。

注目のオープントップは、先代モデルである458スパイダーから基本キャリーオーバーの、軽量なアルミニウム素材を用いたリトラクタブル ハードトップ。従来比でマイナス25kgとなる、この軽量トップの開閉に要する時間は僅か14秒。2分割されたトップが重なりながら、シート後方エンジン上部の収容容積わずか100ℓとコンパクトなスペースに収められるその動きはまさに芸術的だ。

ちなみに前代の458スパイダーではオープン/クローズの作業は車両停止状態にておこなうとされていたが、新型488 スパイダーでは、45km/hまでの速度であれば、走行中も操作が可能であるという。こうした実用性の向上も、抜かりないのである。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

フェラーリ 488 スパイダー、早くもジャパンプレミア (3)

官能的なV8サウンドを味わえる

クローズ状態では、ほぼ488GTBと変わらない、ベルリネッタと言っても過言ではないフォルムをもたらす一方で、トップを開けた状態では、特徴的なトンネルバックスタイルが強調される。「エンジンフードはダイナミック効果を生成する立体的な直列リブを備えた形状」(フェラーリ極東エリア統括マネージングディレクターのディーター・クネヒテル氏)となり、残念ながら488 GTBのようにガラス製ハッチが備わっていないので、美しいフォルムのエンジンを車外から眺めることはできない。

しかし、リアウィンドウが開閉するため、トップを閉めた状態であってもリアウィンドウを開けさえすれば、官能的なV8ターボサウンドが、直接キャビンにみちびかれダイレクトに聴くことができる。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

ボディデザインは、488GTBに準じたエアロダイナミクス性能をもち、オープンモデルとしてはトップレベルのスペックを掲げる。F1由来となる、エアをボディ後端から排出するフェラーリ独自のブロウンスポイラーやリアデフューザー、ビークルダイナミクスシステムと統合制御され、スピードや車両状況に応じて最適に動く可変フラップ、ボーテックスジェネレーターを採用したアンダーボディなどが、空力効率=1.53というフェラーリのオープンモデル歴代最高数値をもたらす。

スペースフレームには、11種類ものことなる6000系アルミニウム合金を使用。ルーフにも応力をもたせる構造としたことで、ベルリネッタの488GTBと同等のねじれ/屈折剛性を実現したという。総合的なシャシー性能は、先代458スパイダー比で、23パーセント向上している。

さらに注目したいのは、スマホ感覚の直感的操作ができる新インフォテインメント システムの採用だ。キーデバイスにはほかのフェラーリ ラインナップ同様「Apple CarPlay」を標準装備している。音楽を楽しめるのはもちろんのこと、スマートフォンと連動し、電話やメッセージなどの通信が簡単におこなえるほか、グーグルマップで目的地や周辺情報の検索も簡単に実行可能。いままで以上にドライブが便利に楽しめるはずである。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

フェラーリ 488 スパイダー、早くもジャパンプレミア (4)

フェラーリにとっての、日本市場の意味

フェラーリ極東エリア統括マネージングディレクターのディーター・クネヒテル氏は、プレゼンテーションのあと、OPENERSのインタビューに対し、「ワールドプレミア(9月)の翌月に日本で最新モデルを紹介できるのはとてもうれしく思っています。これは、我われがスーパースポーツカーに対し成熟した日本市場をいかに重要視しているのかの証明でもあります」と、今回のジャパンプレミアを振り返り答えてくれた。

すでにマラネロで488スパイダーに試乗済みで、「フィオラーノのテストコースも走りました。488GTBと変わらないパフォーマンスは、フェラーリのファンの期待に必ずや応えるもの。エンジン音がダイレクトに楽しめることこそが、488スパイダーの最大の魅力だと再認識しました」とファーストインプレションを述べた。

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

「我われは、日本のユーザーはフェラーリにとても造詣が深く、パフォーマンスやデザイン、そして製品のクオリティに世界でもっとも厳しい目をもち評価をする成熟した市場だと理解しています。プレミアム スポーツカーに対しての情熱があり、フェラーリのコレクターも非常に多く、熱心だと感じています。ですから日本での成功は我われにとって非常に重要なのです。アジアでいち早く正式発表したのもそのためです」。

担当するアジアのほかの地域と日本市場にちがいがあるとすれば、それは何だろう?

「我われが若い市場と表現する発展が著しい新興国市場では、GTモデルよりもスポーツモデル、つまり488GTBやスパイダーの需要が高くなります。国によってことなりますが、その割合は4対6か、3対7という地域もあります。

いっぽう日本でのその割合はほぼ半々。つまり、スポーツモデルだけでなく、「カリフォルニアT」や「FF」「F12」といったFRモデルを楽しむベースができているということです。ミッドシップスポーツカーは非常にわかりやすく強いキャラクターをもっていますが、GTモデルは歴史的にも重要であり、フェラーリはそうした伝統を大切にしています。車種が偏らずバランスが良く、GTの価値を理解できる市場は、我われにとって大きな意味をもっているのです」

Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー

フェラーリ 488 スパイダー、早くもジャパンプレミア (5)

488GTBか488スパイダーか

フィオラーノのラップタイム1分23秒と発表されている488スパイダーだが、気になるディーター・クネヒテル氏のラップタイムはというと「クルマの走りを確かめることに集中していたので、タイムを狙ってはいませんでした」という。本気で走るとフェラーリのF1パイロットであるキミ ライコネンに迫るタイムを出してしまうから、多少遠慮した? と水を向けると「残念ながら我がF1パイロットの走りには遠く及びませんでしたが、じつは我われには知らされていなかったのですが、本社は参加者のタイムを計っていました。参加者中ちょうど真ん中ぐらいのタイムだったことをあとで知らされました(笑)」。

自身は謙遜していたが、そのタイム、じつはなかなかのものではなかったかと想像する。というのも、ディーター・クネヒテル氏は、ルノーから自動車メーカーのキャリアをはじめ、フェラーリ入社以前は中国でBMWやポルシェ、ベントレーといったプレミアムブランドの事業構築に携わってきたキャリアの持ち主。日本への駐在経験もある、かなりのカーガイだと見込んでいる。

フェラーリ極東エリア統括マネージング ディレクターのディーター・クネヒテル(Dieter Knechtel)氏

ディーター・クネヒテル氏

フェラーリ極東エリア統括マネージング ディレクターのディーター・クネヒテル(Dieter Knechtel)氏

愛用する腕時計は、フェラーリとコラボレーションするウブロの「ビッグバン」。文字盤やケース、ベルトまでがブラックで統一された、シャープな印象をもたらすスーツとマッチしたモデルだった。「ビジネスシーンでは、コンサバなスタイルに落ち着いてしまいますが、休日は意外とアクティブに動くことが多いので、アウトドアも楽しめるようなカジュアルファッション選ぶ傾向があるかもしれません。オーストリアの出身地域では、イタリアの文化もドイツの文化も程よく混ざり、独自の文化を形成していますが ―― (フェラーリのディレクターだけに)どちらかといえばイタリア寄りのファッションが好きかもしれません(笑)」

最後に意地悪な質問を。488GTBと488スパイダー、もしも個人的に選ぶのならどちらを選ぶのだろう。「そういった質問がでることもあるだろうと想像していましたが(笑)、本当に聞かれるとこれはかなりタフな質問ですね。現実問題として自分で購入するのであれば、多分ほかには何も手が付かず3日間はそれだけを考えて過ごしてしまうでしょう(笑)。こうと決めた後でも、日によって(結論が)ことなることもあるかもしれません。しかし、488スパイダーを発表した今日は、自信をもってスパイダーを選ぶと答えたいと思います。理由は、やはり官能的なエンジン音をより楽しめるからです。さらにその日の気分や、ドライブ先によってふたつのボディスタイルが楽しめるのもポイントです」

アジアでもっとも早く正式発表した488スパイダー。価格は3,450万円で、日本では2016年春からデリバリーを開始する予定であるという。

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Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー
ボディサイズ|全長 4,568× 全幅 1,952 × 全高 1,211 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,679 / 1,647 mm
車両重量(乾燥)|1,420 kg
重量配分 前/後|41.5% / 58.5%
エンジン|3,902 cc V型8気筒 ターボ
ボア×ストローク|86.5 × 83 mm
圧縮比|9.4:1
最高出力| 492 kW(670 ps)/ 8,000 rpm
最大トルク|760 Nm(77.5 kgm)/ 3,000 rpm
トランスミッション|7段AT(F1デュアルクラッチ)
駆動方式|MR
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
0-100km/h加速|3.0 秒
最高速度|325 km/h以上
燃費(ECE+NEDC)|11.4 ℓ/100km(およそ8.8km/ℓ)
CO2排出量|260 g/km
トランク容量|230 ℓ
価格|3,450 万円

           
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