新型BMW X1を試乗する|BMW
CAR / IMPRESSION
2015年10月15日

新型BMW X1を試乗する|BMW

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

新型BMW X1を試乗する

BMWのSUVファミリーの末っ子として2009年にデビューを飾った「X1」が、今年、二代目へと進化を遂げた。これまでのFRプラットフォームから、MINIや、2シリーズの「アクティブツアラー」と共通の前輪駆動プラットフォームを採用するなど、大胆に生まれ変わったニューモデルを、河村康彦氏が試乗する。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

名前以外は従来型とすべてがことなる

その名称が、「全ラインナップにおける末っ子SUV」という"体"をずばりあらわすモデル ―― それが、BMWの「X1」だ。2009年にブランニューモデルとしてデビューをしたのが初代のX1。それから6年の時間を経て、初のフルモデルチェンジを受けた2代目が発表をされた。

もちろん第2世代のX1も、前述のような基本的ポジションニングは不変のまま。世界の販売累計台数は73万台以上。「そこに大きな市場アリ」というのは、もはや明らかになっていることがらだ。

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BMW X1 xDrive25i

BMW X1 xDrive25i

そもそも、アメリカ市場狙いで開発された巨大なSUVを乗り回すのは抵抗がある。が、"身の丈サイズ"のモデルならば、一度は乗ってみたい、という人は少なくないはず。今度のX1も、そうした人々にとって、大いに気になる1台となるにちがいない。

いっぽうで新型は、「名前以外は従来型とすべてがことなる」と紹介ができる内容の持ち主であることも、じつは大きな特徴だ。その骨格のベースとされたのは、ひと足先にデビューを遂げて話題となった、2シリーズの「アクティブツアラー」や「グランツアラー」。すなわちそれは、BMWのXシリーズにとっては初めての、前輪駆動プラットフォームをベースに開発されたものなのだ。

となれば、「3シリーズ ツーリング」がその叩き台とされていた従来型とは、まさに「何もかもがことなる」ということになるのも必然。そう、おなじ立ち位置を狙ったモデルが、まったくことなるアプローチから生み出されたのが、今度のX1と言っても良いわけだ。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

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ずっとSUVらしいルックス

前述のような生い立ちもあって、Xシリーズの中にあっても、もっともステーションワゴン的な雰囲気が強かった従来型。それに比べると、新型の佇まいの方がずっと逞しく、いわゆるSUV風味がグンと強い、という点に関しては、恐らくは誰からも異論は現れないだろう。

実際、"末っ子"という立場はキープをしつつも、新型のプロポーションは従来型とはその趣を大いに異とする。4,439×1,821mmという全長×全幅サイズは、わずかに短く、そして幅広くはなったものの、端的に言えば「従来型と大差ナシ」の仕上がり。

BMW X1 xDrive25d

BMW X1 xDrive25d

けれども、見逃せないのはその全高とホイールベース。50mm以上低く、90mmも短縮された結果は、見た目の雰囲気に大きな影響を与えている。キャビンが前進しながら大きくなり、ルーフもその位置を上げつつ厚みも増したことで、新型のルックスは、ずっとSUVらしく仕立てられているのだ。

こんな高さではもう、ウチの立体駐車場には入れられない ―― と、そんな切実な声が生まれる可能性はありつつも、刷新された新型のスタイリングが「Xシリーズの一員としてより相応しいものになった」のは、まちがいない。今度の方がカッコ良い!と、巷でもズバリそんな声が聞ける可能性は高そうだ。SUVにとっては、ユーティリティ性の高さも重要なポイントと考えるのであれば、新型はよりそうしたポテンシャルの高いパッケージングの持ち主になったとも表現ができる。

それがもっとも顕著なのが、よりアップライトな姿勢で座り、前席下への足入れ性に優れることもあって、「じゅうぶん広い」という感覚の強いリアシートでの居住性だ。事実、前述のようにホイールベースを短縮しながらも、「ニースペースは37mmの拡大」という。このあたりは、まさにFFレイアウトをベースとしたことによる大きなアドバンテージであるのだろう。

BMW X1 xDrive25d

BMW X1 xDrive25d

同様に、後席使用時で従来型を85リットル上回るというラゲッジスペース容量も、レイアウトが大きく見直されたことによるプレゼントだ。スペース効率という観点からすれば、この新型と従来型とは、まさに「比べ物にならない」ということだ。いっぽう、ドライバーズシートへと乗り込んだ時点で、SUV風味がずっと強くなったのも新型での特徴。その主たる要因はヒップポイントの高さで、フロントシートで36mm、リアシートでは64mmと、それぞれ着座位置が従来型よりも大幅に高くなっている。

かくして、見ても乗り込んでもその"SUV度"が大きく増したあたらしいX1。が、BMW車であるからには、それより気になるのはやはり走りの実力、と、そうした人ももちろん多いはずだ。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

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FFレイアウトベースへと大変貌

「M」の記号が与えられた各モデルはもとより、古くからの伝統あるネーミングを備えたBMW車に比べれば、まだ若いXシリーズは、"走り"に拘るユーザーは少ないと言えるのかも知れない。

それでも、数あるブランドの中からあえてBMW車を選んだとなれば、そこにある程度の"ドライビングの愉しみ"を期待する向きは少なくないはずだ。そうした中で、3シリーズ由来のFRレイアウトベースから、MINI由来のFFレイアウトベースへと大変貌を遂げたX1は、果たしてしっかりと期待に応えてくれるのだろうか?

BMW X1 xDrive25i

BMW X1 xDrive25i

オーストリアで開催された国際試乗会に用意をされた新型は、「25i」と「25d」という2つのグレード。BMW車の流儀によって、前者がガソリンエンジン、後者がディーゼルエンジンの持ち主であることは明らかだ。

具体的には、いずれも搭載するのは2リッター4気筒のターボ付き直噴ユニット。前者が350Nm、後者が450Nmと、その最大トルク値がディーゼルの方が大きいのは半ば想像通り。が、意外なのはその最高出力が、ともに231psと共通値であること。すなわち、見方によっては「ディーゼルの方がハイパフォーマンス」なのが、"25"の数字を与えられたX1であることになる。

まずは25iで走りはじめる。と、端的に言ってすぐに「じゅうぶん速い」と実感ができるその動力性能の仕上がりぶりだ。そうした印象の裏には、ワイドな変速レンジと小さなステップ比を両立させた8段ATの、巧みな働きも大きく貢献しているにちがいない。

BMW X1 xDrive25i

が、兎にも角にもスタートの瞬間のスムーズさから加速の力感まで、特に不満など感じさせられないことは確かだ。

なかでも、1,500rpm付近でアクセルを踏みくわえた際の、まるで良くできたディーゼルユニットをも彷彿とさせるトルクの盛り上がり感の強さは、ちょっと感動的ですらある。いっぽうで、燃費改善を強く意識したゆえか、極めて低回転のままに高いギアを掴みにかかる場面で、わずかに振動を伴うのは気になると言えば気になる点だ。

今回テストの車両には、オリジナル比で+1インチ径の18インチシューズが、電子制御式可変減衰力ダンパーとともにオプション装着されていた。基本は2人乗り状態でのテストドライブだったが、コンフォートモードでは時にダンピングが少々甘く、スポーツモードではやや揺すられが強いと感じられる場面も。

そんなわけで、ダンパーの減衰力的には"その中間"が欲しいと思えることにもなったが、そんな印象は標準仕様の17インチモデルであれば、また異なるものになったのかも知れない。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

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ガソリンモデルに遜色ないディーゼル

そんな25iからディーゼルの25dへと乗り換えると、より力強い動力性能がさらに新鮮であると同時に、恐らくはフロント側を中心に35kgほど増している重量が、乗り味的にはむしろ好印象に繋がっている感覚を抱くことにもなった。タイヤが発するノイズなど"暗騒音"が小さなスタート直後の、主に1速ギアの守備範囲内では、ディーゼル特有の強めのエンジン放射音が耳に届くし、1,200rpm付近ではステアリングホイールに、エンジンを起振源とした微振動を感じもする。

が、そうした限定的な部分を除けば、ノイズやバイブレーションにまつわる性能は、ガソリンモデルに遜色ない ―― どころか、発生トルクが強いためにより高いギアが選択され、結果的にはさらに低いエンジン回転数が常用されることからむしろ静粛性は高い印象も受けることになった。

BMW X1 xDrive25d

BMW X1 xDrive25d

いっぽうで、アクセル操作に対するレスポンスが、ガソリンユニットほどにはシャープではないのは事実。それでも、日常シーンでは大半となる定常的なエンジン動作の範囲内では、やはり「25iよりも強力」と感じる人が大多数となりそうなのが、こちら25dの走りではある。

こちらもまた、オプションの"ダイナミック・ダンパーコントロール"を採用していたが、前述重量差の影響もあってか、その乗り味は全般によりしっとりとしたテイストが印象的。かくして、動力性能面でも総合的な乗り味という点でも、こちらの仕上がりをより好意的に受け取る人は少なくなさそうだ。

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BMW X1 xDrive25d

ところで、そんな新型X1のハンドリング感覚は、「ごく自然ではあるが、格別に"駆けぬける歓び"が高いというわけではない」というのが実際の思いだった。大多数の人にとって、それはもちろん満足のいくものではあるはずだ。

それでも、従来型がコーナーからの脱出時点などで時に姿を覗かせた、特有の後輪蹴り出し感が失われたことについては、「前のモデルの方が好ましかった」と、そんな感想を持つ人も現れそうではある。

このあたりの走りのテイストの変化をどのように受け取るかで、居住性やユーティリティ性は大きく改善をさせながら、SUVならではの見た目の雰囲気も上乗せをしたあたらしいX1をどのように評価するかが別れることにもなりそう。むろん、生みの親であるBMWにとっては、そんな新旧モデルのキャラクターの変化は当然"想定内"に違いないもの。それを含めて、さらなる"勝算"を確信しながら世に送り出されたのが、この新生X1であるということなのだ。

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BMW X1 xDrive25i│ビー・エム・ダブリュー X1 xドライブ25i
ボディサイズ│全長 4,439 × 全幅 1,821 × 全高 1,598 mm
ホイールベース│2,670 mm
トレッド 前/後|1,561/1,562 mm
車両重量|1,540 kg
エンジン│1,998 cc 直列4気筒 ターボ
最高出力│170 kW(231 ps)/ 5,000 - 6,000 rpm
最大トルク│350 Nm/ 1,250 - 4,500 rpm
トランスミッション│8段AT
駆動方式│4WD
トランクスペース│505 - 1,550 リットル
サスペンション 前|シングルジョイント スプリングストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ│ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|225/55R17 / 225/55R17
燃費(NEDC複合)|6.4 ℓ/100 km(およそ15.6 km/ℓ)
CO2排出量|149 g/km

BMW X1 xDrive25d│ビー・エム・ダブリュー X1 xドライブ25d
ボディサイズ│全長 4,439 × 全幅 1,821 × 全高 1,598 mm
ホイールベース│2,670 mm
トレッド 前/後|1,561/1,562 mm
車両重量|1,575 kg
エンジン│1,995 cc 直列4気筒 ディーゼルターボ
最高出力│170 kW(231 ps)/ 4,400 rpm
最大トルク│450 Nm/ 1,500 - 3,000 rpm
トランスミッション│8段AT
駆動方式│4WD
トランクスペース│505 - 1,550 リットル
サスペンション 前|シングルジョイント スプリングストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ│ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|225/55R17 / 225/55R17
燃費(NEDC複合)|5.0 ℓ/100 km(およそ20.0 km/ℓ)
CO2排出量|132 g/km

           
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