CHAPTER1エポックモデルから紐解く、チューダークロノグラフの歴史|TUDOR

腕時計の独創的なデザインと同様に、当時7000シリーズは、鮮やかなオレンジのプレゼンテーションケースに収められていました。

WATCH & JEWELRY / FEATURES
2020年8月5日

CHAPTER1エポックモデルから紐解く、チューダークロノグラフの歴史|TUDOR

TUDOR|チューダー

1970年の誕生から2020年に至る半世紀を徹底検証。チューダーが、クロノグラフで独自スタイルを貫く理由

チューダーの半世紀を振り返ると、このようなエポックモデルがラインナップします。
[チューダーのクロノグラフ年表]
1970年    SERIES7000 “HOMEPLATE”(ホームベース)
1971年    SERIES7100 “MONTE CARLO”(モンテカルロ)
1976年    SERIES9400 AND 79100 “BIG BLOCK”(ビッグ・ブロック)
1995年    SERIES79200 “SAPPHIRE CHRONOGRAPH”(サファイアクロノグラフ)
2010年    チューダー製クロノグラフ誕生40周年記念“HOMEBASE”の復刻
2013年    “MONTE CARLO” の復刻
では、それぞれのモデルについて、詳しく見ていきましょう。チューダー製クロノグラフの歴史にタイムトリップです!

Text & Edit by TSUCHIDA Takashi

SERIES 7000 “HOMEPLATE”(ホームベース)

オイスターデイトRef.7031
チューダー初のクロノグラフ、正式名称「オイスターデイト」は、1970年に発表。すぐさま機械式スポーツウオッチとしての地位を確立しました。カム式のクロノグラフ伝達機構を備える手巻きキャリバー「VALJOUX7734」を搭載し、操作を繰り返し使用してもメカニズムに損傷を与えない堅牢性をアピール。均整がとれたシャープでマスキュリンなデザイン、そして個性的なダイアルを備えていました。
このモデルにはべゼルのデザインが異なる3つのバリエーションが存在します。Ref.7031は500ユニットのタキメーター目盛り入り、プレキシガラスで表面を覆ったベゼルが特徴。Ref.7032(※写真なし)はサテン仕上げのスチール製ベゼルを採用し、同様に500ユニットのタキメーター目盛りが刻まれていました。
残るRef.7033は、ブラックの12目盛り入りアルマイト加工を施した両方向回転ベゼルが特徴でしたが、このモデルはプロトタイプのみの製造に留まりました。
これらのモデルは、ダイアルにグレーのツートーンカラーを採用。独特な五角形のルミネッセンスのアワーマーカーのフォルムから“ホームベース”というニックネームで呼ばれました。さらに一般的な30分積算計とは異なる、45分積算計のクロノグラフ ミニッツカウンターが採用されたことも特徴として挙げられます。
五角形のアワーマーカーは、ニックネームでもある野球のホームベースを想起させるデザインです。
そう、チューダーのクロノグラフには代々、ペットネームが付けられてきました。それは、このブランドのクロノグラフが時計愛好家から強く愛されてきた証です。
それもそのはず、オイスターケースに収められ、誕生したチューダーのクロノグラフは、すなわち誕生当初から高い防水性が保証され、精緻なメカニズムを持つクロノグラフを堅牢に守る実用機として高い完成度を誇ったからです。真剣勝負のモノづくりが、ファンの心に響かないはずはありません。
チューダーのクロノグラフにおける最初の広告キャンペーンには、ラリードライバーが採用された!!!! いわゆる有名俳優の露出ではなく、当時、人気があった自動車レースの華やかさにフォーカスするでもなかったのです。この質実剛健なアティテュードがチューダーらしさであり、チューダー製クロノグラフの精神的支柱なのです。

SERIES 7100 “MONTE CARLO”(モンテカルロ)

現在ではチューダーのシグネチャーカラーのひとつとなっているブルー。このカラーは、1971年のクロノグラフモデルで初採用されました。
チューダーにおける第2世代のクロノグラフは1971年に登場、1977年までのカタログに掲載されました。そのモデルとは、カジノのルーレット盤を想起させるダイアルから、コレクターに“モンテカルロ”と呼ばれる7100シリーズのクロノグラフ。ケースやダイアルのデザインは、前シリーズを受け継いだものとなっています。
ムーブメントは「VALJOUX7734」に代わり、同じく手巻きキャリバー「VALJOUX234」が搭載されました。この新たなキャリバーは、クラッチとコラムホイールを備え、クロノグラフ機構はより洗練されたものとなりました。
またこのシリーズから、新たにブルーカラーを採用。このブルーは、今やチューダーを代表するイメージカラーとなっています。この視認性を高める配色は、機能的であることに加えて、腕元の存在感を高めることにもひと役買いました。
このシリーズは前作同様、3種類のリファレンスで構成されていました。500ユニットのタキメーター目盛り入りプレキシガラスインサートベゼルを特徴とするRef.7149/0が、Ref.7031/0に代わってカタログに登場。またタキメーター目盛りが刻まれたサテン仕上げのスチール製ベゼルが特徴のRef.7159/0がRef.7032/0に代わって掲載されてます。そしてRef.7169/0は、回転ベゼル付きのプロトタイプRef.7033/0をもとに登場、ついに製品化されました。

SERIES 9400 AND 79100 “BIG BLOCK”(ビッグ・ブロック)

プリンス オイスターデイト Ref.9430
1976年、チューダーにとって小さな革命が起こりました。チューダーの歴史上初の自動巻きクロノグラフ「プリンス オイスターデイト」が誕生したのです。ケースフォルムは前シリーズからのシェイプを保ちつつ、自動巻きムーブメントのローターを収めるために、厚めのデザインを採用しています。この形状を指し、コレクターからは“ビッグ・ブロック”の愛称を得ています。そしてこの“ビッグ・ブロック”の名称は、1989年に発表されるRe.79100シリーズへと受け継がれていきます。
Ref.9400シリーズも、これまでと同様にベゼルのデザインが異なる3種類のモデルで構成されており、続くRef.79100シリーズでも同じく3モデル構成が踏襲されました。その一方で、ダイアルについては数種類のバリエーションを展開しており、そこには2つの美学が存在しています。ひとつは過去2シリーズから着想を得たデザイン。もうひとつはブラックとホワイトまたはシルバーとホワイトを組み合わせた大胆なカラーコントラストです。
新しいクロノグラフの心臓部は、新キャリバー「VALJOUX7750」が採用されました。今までの「VALJOUX234」と同じ直径ですが、前モデルよりも1.5mm厚く、高い信頼性を誇るカム式のクロノグラフ機構を備えています。この新たなムーブメントの導入により、アワーカウンターの追加、ダイアル左側へのカウンター位置変更、3時位置への日付表示窓の配置変更といったダイアルの再編成がなされています。

SERIES 79200 “SAPPHIRE CHRONOGRAPH”(サファイアクロノグラフ)

プリンス オイスターデイト Ref.79260
1995年、Ref.79200シリーズの登場により「プリンス オイスターデイト」のデザインは生まれ変わることになります。それはわずかな違いながら、非常に大きな意味を持つものでした。
3世代に渡って受け継がれてきたケースは、研ぎ澄まされた存在感をそのままに、より洗練された柔らかなフォルムへと変更されています。ひと目でそれと分かる印象的なシルエットを保ちつつ、美しく丸みを帯びた曲線デザインへと生まれ変わりました。
4世代目となる本シリーズにおけるデザインの進化、それはニックネームにもなっているサファイアクリスタルの採用をはじめ、その他にもゴールドとスチールの組み合わせやレザーストラップの追加などが挙げられます。またムーブメントは、大幅に改良された自動巻きキャリバー「VALJOUX7750」を搭載しています。
防水性、堅牢性を表現する当時の広告ビジュアル。2000年代はじめにおいてもなお、単なるステイタスシンボルではなく、プロフェッショナルたちに向けた堅牢性にフォーカスされていました。

チューダー製クロノグラフ誕生40周年記念“HOMEPLATE” “MONTE CARLO” の復刻

2010年に復刻された「ヘリテージ クロノ」。通称”ホームベース”。
2010年、チューダーのクロノグラフが誕生40周年を迎えたことを記念して「ヘリテージ クロノ」が発表されました。Ref.7033(12時間目盛りの両方向回転ベゼルを搭載した1970年のプロトタイプ)のエッセンスを取り入れつつモダンなデザインへと昇華された本モデルは、台形フォルムで縁がポリッシュ仕上げの針や、リュウズガード、回転ベゼルやプッシャーに施されたテクスチャーなど、ユニークな特徴を持つモデルです。
1970年リリースのRef.7033(左)と、2010年に復刻されたRef.70330N(右)
グレーにブラックのサブカウンター、もしくはブラックにグレーのサブカウンターといった、1970年代のモデルから着想を得た2種類の異なるダイアルが本モデルには採用されました。ホームベースと呼ばれた五角形のアワーマーカーはオリジナルではペイントでしたが、同じ形状を保ちつつも、ダイアルと高低差をつけることでより洗練されたデザインとしています。
また本モデルはスチールブレスレットだけでなく、ブラック、オレンジ、グレーが配されたファブリックストラップに取り付けることが可能でした。このチューダーがいち早く実現してきたファブリックストラップの採用は、今や腕時計業界全体へと影響を与えています。
1971年リリースのRef.7169(左)と、2013年に復刻されたRef.70330B(右)
そして2013年、同モデルの新たな製品として「ヘリテージ クロノ ブルー」が発売。ブルーのカラーはもちろんのこと、通称“モンテカルロ”と呼ばれる第2世代のダイアルから着想を得たデザインが用いられました。
これらのモデルには、新たに45分積算計と6時位置の日付表示を備えたキャリバー「2892」が採用されました。
問い合わせ先

日本ロレックス / チューダー
Tel.03-3216-5671
https://www.tudorwatch.com/ja

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