Patek Philippe|名誉会長に訊く - パテック フィリップ175年の歴史
Watch & Jewelry
2015年3月24日

Patek Philippe|名誉会長に訊く - パテック フィリップ175年の歴史

Patek Philippe|パテック フィリップ

名誉会長フィリップ・スターン氏、
『パテック フィリップ・ミュージアム』所蔵のミュージアムピースを語る

パテック フィリップ175年の歴史を遡る

パテック フィリップ創業175周年、スイス日本間の国交樹立150周年を記念して、1月17日~19日、明治神宮外苑聖徳記念絵画館で開催された『パテック フィリップ展 ~歴史の中のタイムピース~』。1万3200人もの来場者を集め、盛況のうちに幕を閉じたが、同展で展示された時計はすべてスイス・ジュネーブにあるパテック フィリップ・ミュージアム所蔵のもの。そして、これらを収集してきたのがパテック フィリップS.A.の名誉会長フィリップ・スターン氏である。

Text by KOIZUMI Yoko

40年以上をかけ、少しずつ集めた歴史的な遺産たち

スイス・ジュネーブにある『パテック フィリップ・ミュージアム』には16世紀から19世紀のオールド・コレクションが約1000点、創業からの自社製品が1000点あまり、工具が400種類以上、そして文献約8000冊収蔵されている。人類が“時”を携行できるようになってから以降の時計史を俯瞰できる、世界最大クラスの時計専門の博物館である。フィリップ・スターン氏は世界中に散逸していたさまざまなタイムピースや関連する工具、書籍を40年以上に渡り収集し続け、2001年にミュージアムとしてオープさせている。

創業175周年を迎えた今年1月、明治神宮外苑にて『パテック フィリップ展~歴史の中のタイムピース~』が開催された

パテック フィリップS.A.の名誉会長を務めるフィリップ・スターン氏

──コレクションを始めたきっかけは?

パテック フィリップが創業した1839年は、ご存知のとおり懐中時計が主流でした。創業からすぐに世界に顧客を持ち、またその顧客の多くが世界の王族や著名な文豪といった歴史に名を残す人物です。しかも時計は一点モノばかりで、さらに技術の粋を集めた逸品揃い。

こうした時計を集めて、きちんとしたパテック フィリップのコレクションがつくりたいと思ったのがきっかけです。当初は、永久カレンダーやスプリット秒針クロノグラフなど、さまざまな機構を備えた懐中時計が揃ったら壮観ではないかと思っていました。

──コレクションするうえでの留意ポイントは?

時計を集めるのは簡単ですが、やみくもに集めても意味がありません。ですからスタートする前に私自身が「どういうコレクションにしたいのか」を明確にする必要があり、ビジョンをしっかりと練り上げることから始めました。まず保管状態が良好なものを厳選しました。どれも100年以上前に製作されたものですから、とくにムーブメントは慎重に鑑定しましたね。

何しろ弊社には優れた時計師がおりますから。購入を検討する際は彼らを伴い、ムーブメントのチェックは念入りに行ないましたよ。また、創業当時のムーブメントはシンプルなものでしたが、徐々に進化し、より複雑に、より洗練された機構をつくれるようになっていきました。その過程もわかるよう特徴的な機構を搭載しているかにも配慮しています。そしてもうひとつ、誰がオーナーだったのかもポイントですね。

ヴィクトリア女王のペンダント・ウォッチとブローチ

Patek Philippe|パテック フィリップ

名誉会長フィリップ・スターン氏、
『パテック フィリップ・ミュージアム』所蔵のミュージアムピースを語る

パテック フィリップ175年の歴史を遡る(2)

努力し続けること。そして古きを知ること

──今回、展示されている時計は、見事な装飾も特徴です。

私がコレクションをするうえで、ムーブメントの状態、搭載される機構に加えて、どんな装飾なのかも大切な要素になっています。懐中時計にはさまざまな細工が施されていますが、その素材にも注目しています。

──タイムピースを集めるうえで学んだことは?

努力し続けることです。そして古きを知ることに学びは不可欠だということでしょう。時計史を理解していなければコレクションはおかしなものになってしまいます。専門的なこと、たとえば用語などは書籍で勉強し、さまざまなアーカイブも参考にしてきました。ただしどんなことでもそうですが、趣味なら楽しいものですが、義務になってしまうと苦痛を伴います。私はずっと楽しみながら学び、知識と経験を重ねてきました。だから長続きしたと思いますね。

シンギング・バード

──どのようにして情報収集を?

いまではプライベートオーナーから直接購入するのは非常に難しくなっていますので、基本的にはオークションです。私が収集をはじめた1960~1970年代は、価格も高くありませんでしたから、集めやすい時代だったといえますね。いまはたくさんのコレクターがアンティークウオッチを欲しがっていますし、価格も高騰する一方です。パテック フィリップの人気も非常に高い。ですから、いまから同じコレクションをつくろうとしても、点数も揃わないですし、金額も天文学的になり、きっと不可能でしょうね。

そうそう、学んだことには“根気”もありましたね。マーケットの状況によっては10~15ピースが入手できるときもあれば、欲しい時計がまったくないこともありますから。待つことも大切なのです。最初に買った時計ですか? もう、忘れてしまいました(笑)う~ん、クロノグラフと永久カレンダーが搭載された懐中時計だったように思います。

Patek Philippe|パテック フィリップ

名誉会長フィリップ・スターン氏、
『パテック フィリップ・ミュージアム』所蔵のミュージアムピースを語る

パテック フィリップ175年の歴史を遡る(3)

歴史的遺産といえるタイムピース

──2001年にミュージアムを開館されましたが、そのときのご感想は?

それまで集めたタイムピースは金庫に保存しているだけでしたから、多くの方に見ていただけるのは嬉しかったですね。今回も美意識が高い日本の、それも多くの方に見ていただけたことを本当に嬉しく、誇りに思っています。

キュリー夫人の懐中時計

──今回は厳選した90点の展示でしたが、パテック フィリップ・ミュージアムには膨大な所蔵品があります。その特徴は?

自社製品のみならず16世紀からの歴史的遺産といえるタイムピースから現代にいたるまで、豊富な時計が揃っていること、それと腕時計のコレクションは気に入っていただけると思います。実は1965年くらいから並行して腕時計も集め始めたのですが、そのころは市場にユニークな腕時計がたくさんあったのです。

なにしろ当時は腕時計に興味を持つ人がさほどいなくて(笑) そのおかげもあって、腕時計コレクションはとても充実しているのです。ぜひミュージアムのコレクションから時計の歴史、そしてパテック フィリップの175年間を体感いただきたいですね。

パテック フィリップ・ミュージアム
住所|Rue des Vieux-Grenadiers 7 CH-1205 Geneva SWITZERLAND
開館時間|火曜日-金曜日/14:00~18:00、土曜日/10:00~18:00
Tel. +41 (0)22 807 09 10
www.patekmuseum.com

パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
Tel. 03-3255-8109
http://www.patek.com

           
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