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2019年8月9日
「知る」は、おいしい! 星のや京都|TRAVEL
TRAVEL|星のや京都
このひと皿と出合うために、星のや京都へ 会席料理「五味自在」(2)
久保田氏の思いがこの一皿に炸裂しています
たとえば、冒頭で紹介した、先附の「茄子の涼味寄せ」。
「初夏の定番である賀茂茄子を使った先附には、同じナス科のパプリカを、涼を感じてもらえるようにアイスにして合わせました。いわば、京のラタトゥイユです。出汁はかつお出汁だと強すぎてしまうので、野菜だけの出汁をベースに、少しだけ二番だしを加えています」
繊細、かつ可憐で、涼やかという言葉がぴったりの先附ですが、インパクトは主役級。トップにはコンソメのジュレも使用しており、日本料理の伝統を踏襲しながらも、決して既存の枠にとらわれないという久保田氏の思いがこの一皿に炸裂しています。OK、理解しました(笑)。これからどんなめくるめく世界が待っているのか、期待で胸がはちきれそうです。
「初夏の定番である賀茂茄子を使った先附には、同じナス科のパプリカを、涼を感じてもらえるようにアイスにして合わせました。いわば、京のラタトゥイユです。出汁はかつお出汁だと強すぎてしまうので、野菜だけの出汁をベースに、少しだけ二番だしを加えています」
繊細、かつ可憐で、涼やかという言葉がぴったりの先附ですが、インパクトは主役級。トップにはコンソメのジュレも使用しており、日本料理の伝統を踏襲しながらも、決して既存の枠にとらわれないという久保田氏の思いがこの一皿に炸裂しています。OK、理解しました(笑)。これからどんなめくるめく世界が待っているのか、期待で胸がはちきれそうです。
久保田氏がほれ込んだという、野口繁次氏作の焼き〆に乗った八寸も、それぞれが抜群の個性を放っています。福井県剣先産の青梅を、中までシロップが通るように細かく針打ちし銅鍋で煮た「青梅蜜煮」や、明石の蛸を小豆で色だし、寝かしてから赤米酒で炊いた「蛸柔煮」、産卵期を迎えた鱧の卵を使った「鱧子豆腐」など、どこから手をつけようか真剣に悩んでしまうところですが、久保田氏によれば、「先附の塩気が口内に残っている状態で、青梅蜜煮を食べていただくのがおすすめです。若狭の香りを、ぜひ京都で味わってください」。
もちろんそうさせていただきます!
もちろんそうさせていただきます!
椀物は、「鱧吉野打ち 翡翠冬瓜」。夏の吸い口(お椀に入れる香り)には、青ゆずが用いられることが多いのですが、「青ゆずは今回、八寸でも使っていますし、鱧にはゆずの香りは少し強いので、和製グレープフルーツと言われている河内晩柑(かわちばんかん)を使用しています。柑橘の清涼感、あっさりとした味わいが、梅肉の代わりに鱧を引き立てます」と久保田氏。ふわっと立ち込める香りがフレッシュに、上がりっぱなしだった口角がさらに上がったことを実感します。ひとつひとつの料理に、こんな計算やこんな思いが込められているなんて。料理って、五感で、いえ、五感以上に、多彩に楽しめる、極上のエンターテイメントなんですね。
「料理と器が会話することも大切なんです」と語る久保田氏には、器にも並々ならぬこだわりがあります。たとえば、強肴(この日は「牛フィレ炭火焼きと旬野菜含メ煮」でした)に使う器は、星のや京都のオリジナル。肉と野菜がそれぞれの個性を存分に発揮した状態でいただけるようにと作家に相談し、左右の空間が独立した器を作ってもらったのだとか。
「料理と器が会話することも大切なんです」と語る久保田氏には、器にも並々ならぬこだわりがあります。たとえば、強肴(この日は「牛フィレ炭火焼きと旬野菜含メ煮」でした)に使う器は、星のや京都のオリジナル。肉と野菜がそれぞれの個性を存分に発揮した状態でいただけるようにと作家に相談し、左右の空間が独立した器を作ってもらったのだとか。
そうそう。星のや京都の夕食は離れのダイニングでの提供となりますが、朝食は部屋食が基本。これは、全25室のすべての客室がリバービューという、この宿ならではの景観とともに、存分に朝食を楽しんでもらいたいという配慮です。メインが野菜たっぷりのお鍋というのも、京都らしくて、にんまり。出汁をたっぷり吸い込んだ〆の雑炊は、京都が誇る調味料・原了郭の黒七味をかけて召し上がれ。食後は、座った時の目線の高さで窓の景色を楽しめる、星のやオリジナルの「畳ソファ」に身を委ね、名画のような風景を眺めながらくつろぐことにしましょうか。桜や紅葉の季節には視界一帯が鮮やかに色づきますが、濃密な深緑が迫り来る夏も風景絶佳です。極楽、極楽。
平安時代から貴族の別荘地として親しまれてきた京都・嵐山。その中心地である渡月橋の畔から、雄大な嵐峡(らんきょう)を眺めながら大堰川を小舟で遡ること約15分。星のや京都が、明治創業の老舗旅館をリノベーションするかたちで誕生してから、今年で9年目の夏を迎えました。およそ10年の歳月を経て、開業当初に新たに植えた木々は成長し、小道を覆うほどのアーチを描くようになりました。
思い思いに、京都の自然、そこに息づく文化を存分に体感できる「水辺の私邸」。枯山水をテーマにした「奥の庭」では、毎朝、宿泊のゲストを対象にした、「水辺の深呼吸」が催されます。大堰川にせり出したウッドデッキにあつらえられた「空中茶室」はこの世の桃源郷(笑)。この空間、切り取って自宅に持ち帰ってもいいですか? 日本に古来より伝わる「聞香(もんこう)」を体験できるアクティビティも実施しています。香道は、室町時代に始まった京都の伝統文化。かつての戦国武将たちも戦の合間に嗜み、リラックスをはかったのだとか。前身時代に作庭された双滝を再現した「水の庭」で、自然の音やトロッコの音に抱かれ、瞑想にふけるのもいいでしょう。雄大な自然の中、洗練された文化を楽しもうではありませんか!
楽しく、美味しい京都の季節を堪能すべく今度はいつ戻ってこようかと、渡月橋という現実世界に向かう帰路の船のなかではすでに、今後の予定に思いを巡らせていました。
「8、9月は戻りカツオ、アコウダイもいいですね。9月はタコ飯も予定しています。10月は長ナスのシーズンです。秋のサバやサンマもいいですよ」
久保田氏の言葉が反芻されます。ああ、どれもこれもいただきたい! あわよくば、いつの日か、氏が休みの日に作っているというタイ料理も賞味してみたいものです。
全幅の信頼のおける料理人の季節の料理を楽しみに京都を旅する──、そんな悦楽に浸れるなら、やっぱり年を重ねるのは悪くありません。
楽しく、美味しい京都の季節を堪能すべく今度はいつ戻ってこようかと、渡月橋という現実世界に向かう帰路の船のなかではすでに、今後の予定に思いを巡らせていました。
「8、9月は戻りカツオ、アコウダイもいいですね。9月はタコ飯も予定しています。10月は長ナスのシーズンです。秋のサバやサンマもいいですよ」
久保田氏の言葉が反芻されます。ああ、どれもこれもいただきたい! あわよくば、いつの日か、氏が休みの日に作っているというタイ料理も賞味してみたいものです。
全幅の信頼のおける料理人の季節の料理を楽しみに京都を旅する──、そんな悦楽に浸れるなら、やっぱり年を重ねるのは悪くありません。
星のや京都
所在地|京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
アクセス|阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICよりクルマで約30分
客室数|25室
料金|一泊一室あたり10万6000円〜(食事別、税・サービス料10%別)
※入荷の状況で異なる食材を用いることがあります。
所在地|京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
アクセス|阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICよりクルマで約30分
客室数|25室
料金|一泊一室あたり10万6000円〜(食事別、税・サービス料10%別)
※入荷の状況で異なる食材を用いることがあります。
問い合わせ先
星のや京都
Tel.0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/