富士登山の第一人者と一緒に登頂する格別体験。「グラマラス富士登山」のススメ|TRAVEL
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2021年8月9日

富士登山の第一人者と一緒に登頂する格別体験。「グラマラス富士登山」のススメ|TRAVEL

TRAVEL|星のや富士

世界遺産となった富士山の大自然に触れ、その歴史・文化を実践で学ぶ超プレミアムな体験型プログラム

「星のや富士」が開業以来、提供し続けている「グラマラス富士登山」。この貴重なプログラムが、万全のコロナ対策のもとで今年は再開されることになりました。2021年の開催日程は、8月30日(月)、9月1日(水)、3日(金)、6日(月)の全4回。各日ひと組限定、最大4人までと、わずかな受付人数ですが、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として2013年に世界文化遺産に登録された、その奥義に触れられることを、この私がお約束いたします。

Text & Edit by TSUCHIDA Takashi

日本一の霊峰「富士山」で、人生のお土産をいただく

「グラマラス富士登山」のグラマラスとは、日本初の“グランピングリゾート”(グラマラス・キャンピング・リゾート)として誕生した「星のや富士」の立ち位置から命名されたもの。確かにこのアクティビティは“超”別格です。
スイス・ツェルマット仕込みのプレミアムツーリズムを実践する富士登山の第一人者、「富士山登山学校ごうりき」http://www.fujitozan.jp/tour/近藤光一氏によるプライベートガイドと、「星のや富士」のホスピタリティにより、単なるラグジュアリーに留まらない、心に刺さる内容だからです。
そもそも近藤さんがナビゲートする行程は、富士登山につきものの人間渋滞とは無縁です。テレビで目にする登山渋滞。富士山の山開きシーズンは、例年7月上旬から9月上旬までです。このわずかな期間に登山者が押し寄せるのですから仕方ないのですが、その一方で日本一の霊峰にまで赴いて、人間の多さにげっそりでは残念すぎます……。そこを近藤さんは、経験則に基づく巧みなタイムスケジュールで、人の少ない穴場帯をかいくぐります。
そして近藤さんの指導は呼吸法から入ります。
「たくさんの空気を吸うには、お腹の空気をしっかりと吐き出すこと。吐き出すことができれば、自然と新鮮な空気が身体に入ってきます」
普段はあまりに当たり前の空気が、富士山では薄いんです。本当に、薄い。
クルマで気軽に登っていける五合目ですら、すでに薄いです。だから「意識して呼吸をすることが大切」と、近藤さん。言葉で繰り返し深呼吸の大切さを解き、ヒィー、フーと、声に出すほどに幾度となく呼吸をして見せてくれます。近藤さんと登る富士登山中は、ずっと「マインドフルネス」の実践状態。私、歩を進めていくうちに、感覚が鋭敏になっていく気がしました。
ザクっ、ザクっと踏み出す足音。頬に伝わる夏風。人間を歓迎しているかどうかはわからないけれども、あちこちで聴こえる野鳥たちの会話。
富士山は、思いもよらずドラマチックです。肌を突き差すほどの真夏の太陽が降り注ぐ、その一瞬先には辺り一面が霧の中という具合に、その変化っぷりが半端ではありません。それは高尾山や筑波山とは比べものにならない圧倒的な標高と、独立峰であることによる激しい気象変化環境によるものです。
ところで、ひとは、なぜ富士山に登るのでしょうか?
「かつて富士登山は信仰の一環でした。人々は“六根清浄“と口にしながら登山の苦行を達成することで、煩悩や迷いを断ち切り、清らかに生まれ変わろうとしたんです」(近藤さん)
近藤さんのガイドは、富士山の歴史背景や、自然環境問題の話など多岐にわたり、想像力を掻き立てます。
ではここで、プログラムの概要を説明します。
滞在スケジュール例)登山の前日に宿泊する場合がこちら。
<1日目>
15:00 チェックイン
16:00 エナジーバーづくり
18:00 キャビンにて夕食「星のや富士流御師料理」
20:00 ガイドによる直前レクチャー、装備の確認
<2日目>
10:00 チェックアウト
11:30 富士スバルライン五合目集合
13:00 ガイドと合流、準備運動
14:00 登山開始
18:00 山小屋到着
19:00 夕食
<3日目>
5:00 山小屋出発、途中朝食
10:30 吉田口山頂到着、昼食(別料金)
12:00 下山開始
16:00 富士スバルライン五合目到着・登山終了
「グラマラス富士登山」プログラムでは、富士登山の前日もしくは下山後の1日を「星のや富士」で過ごすほか、登山中の一夜を、提携する山小屋で過ごします。ちなみに近藤さんのオススメは、「星のや富士」に前泊する上記のコース。
河口湖畔にある「星のや富士」の標高がおよそ海抜800メートル。すなわち首都圏の平野で暮らす私たちにとっては、ここでも十分に高地です。したがって「星のや富士」で前日から身体を慣らしておくと、翌日の富士五合目、すなわち標高2500メートルへのさらなる環境変化に身体が順応しやすく、有利なのです。
そして登山の道中にお世話になる山小屋の名は「東洋館」。標高3000メートル、七合目に連なる最後の山小屋として江戸時代から続くそうです。
「東洋館」は、最近改修したばかりで真新しく、建材の新たな香りが漂う気持ちのいい小屋なのですが、なんとここにはメゾネットタイプの独立した個室空間が存在します。そして「グラマラス富士登山」では、この空間を専有できるのです。山小屋とは、肩がぶつかるほどの雑魚寝が相場。他人と同室で寝付けないなど当たり前ですが、このプログラムではそんな環境とは無縁です。
しかも「星のや富士」のスタッフが、このプログラムのためだけに前もって登山して、参加者を出迎えます。スタッフももちろん、自らの足で登山しているのです。ホスピタリティのために、スタッフ自ら汗をかいていることに頭が下がります。七合目の山小屋とはいえ、少なからず難所があります。
「グラマラス富士登山」参加者が山小屋に到着するやいなや、温かい足湯で歓迎。これがどんなに気持ちをほっこりとさせてくれることか! 山小屋では、飲水さえも超貴重。ましてやお湯なんて……。そんな中での余りあるもてなしです。私、泣きそうになりました。
山小屋の夕食も、驚愕のテーブルセッティング。「星のや富士」料理長によるビーフシチューのほか、明日の糧になるプロテインたっぷりの料理がテーブルを彩ります。シチューに合わせた勝沼ワインまで! 山小屋で深酒はNGですが、ほど良いアルコールは、緊張感を解きほぐし、落ち着きを取り戻させてくれます。ここでのテーブルサーブは、下界の何十倍もありがたい。この体験は、まさに宝物です。
さてさて。私、先程からあたかも実際に登ってきたかのように書いてますが、ハイ、この記事を作成するにあたり、実際に登らせていただきました。そして「東洋館」まで辿り着きました。ただし、迎えた3日目の朝5:00の時点で、残念ながら山頂の天候が悪く(※体験取材は7月に富士山が開山されて以降、梅雨明け前に行われ、当日はいまだ梅雨前線が横たわっている状態でした)、山頂へのアタックはせずに下山した次第です。でも正直、諦めたことでほっとした自分もいました。日本一の標高を持つ富士山登山、もちろん“お手軽”なわけはありません。
壁ではありませんよ。富士吉田ルートの登山道です。↑がその印。こんな所ばかりではありませんが、こんな所が幾つかあるのもまた事実。※「東洋館」を出てすぐ、八合目につながる岩場。
登山では、すべてが自己責任。ガイドの近藤さんは随所でベストなサジェストをしてくれますが、自分の足で踏み出さない限り、場面は変わりません。空気の薄さや岩場の足元など、剥き出しの自然が恐怖心を焚き付けます。その状況は、まさに心を映し出す鏡。その弱い自分に向き合うことは、人生そのものであり、なるほど、生まれ変わろうとする昔の人達の心の有り様に多少なりとも触れられた気がします。
近藤さんは、「自分は富士山ガイドで一番ゆっくりと登るガイドです」とおっしゃいました。歩幅を小さく、息を大きく吐きながら歩み続ければ、ちゃんと目的地に到着すると。その通りです。自分のペースで歩けばいい。辛いなと思ったら、ペースを落とせばいい。それでもまだ辛いなら、立ち止まって深呼吸すればいい。そのアドバイスの意味が、人生のお守りだ! と思えるほどに腑に落ちたのは、あの環境のなかで、近藤さんとともに足取りを揃えたからだと思っています。
結局、私の場合は富士山登頂を果たせなかったわけですが、富士山という場所を単に制覇自慢だけで終わらせたらもったいない。世界遺産に選ばれた背景にこそに面白みがあると、今では感じています。その点において、近藤さんに下山後に行ってみるといいよと教えてもらい、自分で訪ねた下記3箇所は、近藤さんの話を裏付ける素晴らしい場所でした。
・富士山世界遺産センターhttp://www.fujisan-whc.jp
・ふじさんミュージアムhttps://www.fy-museum.jp
・北口本宮冨士浅間神社https://www.sengenjinja.jp
またいつか富士山に挑戦したいと本気で思っています。その時は、もう一度、近藤さんと登りたいなあ。きっとこれまでに参加した誰もがそう思っているに違いありません。54歳の大ベテランにして今なお現役。富士山とともに生きている近藤さんの物語が、今も私の脳裏には焼き付いています。

「グラマラス富士登山」概要

  • 日程|2021年8月30日、9月1日、3日、6日
  • いずれも登山の出発日。星のや富士での登山前後の宿泊予約が別途必要です。
  • 料金|1名 26万円(税・サービス料込)*星のや富士および山小屋の宿泊料別
  • 含まれるもの|事前カウンセリング、登山ガイド、山小屋での夕食・朝食1回、
  • 登山前の宿泊を選択した場合:エナジーバーづくり、御師料理
  • 登山後の宿泊を選択した場合:フットトリートメント、御師料理
  • 定員|1回1組 *1組1~4名
  • 対象|小学4年生以上、69歳以下の健康な方
  • 予約|公式サイトhttps://www.hoshinoya.com/fuji/より1か月前までに要予約
  • 備考|ご来光・星空は、天候により見られない場合があります。ツアー内容は、コロナの感染状況、自然条件、参加者の体力等により変更する場合があります。
問い合わせ先

星のや総合予約
Tel.0570-073-066
https://hoshinoya.com