新宿からおよそ100分で冬グラ。そしてMt.Fujiの懐に抱かれる|HOSHINOYA Fuji
HOSHINOYA Fuji|星のや富士
星のやグランピングは“年中無休”。
真冬でさえも最適・快適・感動的ナリ(1)
あーん、今年こそはキャンプ行きたい! マシュマロ焼きながら、スキットルでウヰスキーをちびちび飲んでみたい。誰にも邪魔されずに、炎を眺めてゆったりしたい。たまには自分と会話したい。「俺、いま、幸せかい?」なんて、恥ずかしくて絶対に声に出せないような自問自答をしてみたい……。って、皆んな、案外同じコト考えているのかも? アウトドアブランドの焚き火ツールの売れ行きが相変わらず絶好調だって。ところが、いざ行動に移そうとすると、初心者にはめちゃハードルが高い。知人に連れて行ってもらえるヒトはいいけれど、頼れる仲間がいないと、ノウハウはおろか、ひと通りのキャンプセットを全部自前で用意しなくちゃならない。あれも必要、これも必要と、リストをつくるうちに、予算はうず高く積み上がる。だから今年も、夢は夢のままで終わるんだろうな……。ハイ、そんなあなたに朗報です。2018年は、即実行。「星のや富士」で叶える冬グラのススメ、ぜひご一読を。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
今宵、ぼくはハックルベリー・フィンになった
マーク・トウェインが古き良き時代のアメリカに生きる少年を描いた小説『トム・ソーヤの冒険』。子どもの頃、読みましたか? あるいは40代、50代の僕と同じ、多少お歳を召しちゃった方々なら、日曜夜のTVアニメで知ってるよ、なんて人も多いと思います。そのトム・ソーヤの親友にして自由人のハックルベリー・フィンのような生活に憧れをいだいた人、そりゃ多いでしょうよ。でなきゃ、こんなにキャンプ流行ってないもん。
自分も子供のころ、あのふたりを必死に真似たことを思い出します。大人に内緒で基地を作ったり、そこに宝物を隠したり。木々の揺れる音を聴いて過ごした夕暮れ。草木の薫り。空気の感触。自然に近いところに身を置くと、人間って皮膚感覚が冴えるというか、忘れていたアンテナ感度が、もう一度ピンと立つんだと思います。
その最たるものが、炎。
ゆらめく炎を眺めていると、不思議と癒やされるのはなぜだろう……。林間学校。はじめてのキャンプファイアーで、炎を取り囲みながら唱った歌。今では何を歌ったか忘れてしまったけれども、あの時、感じたポジティブな記憶のかけらが、いつかまたキャンプに来たい、そして思う存分、炎を見つめたいって思わせるんだと思います。
ハイ、さくっと実現出来ました。
片道100分で。
下準備もないまま。
しかも真冬の季節に。
都会のフツーの身支度で。
ここは「星のや富士」の広大な森の傾斜地、その最も高いところにあるテラス。宿泊客が共有する焚き火ラウンジです。宿泊設備全40室、最大100人強が利用するには十分なサイズの面積。焚き火からやや離れたスペースにも段差やタープなどで緩やかにプライベート空間を阻害しない工夫が凝らされ、焚き火から遠くにいても屋外ガスストーブでほっこり。
そして焚き火の炎は、火守りスタッフがしっかりと管理しています。雨が降ろうと、風が吹こうと、よほどのことが無い限り、その灯火が消えることはありません。なぜならこの焚火が「星のや富士」の象徴だから。この焚火を求めて、人々がこの施設を目指してくることの意味を、スタッフが十分受けとめているからなのです。だから、このラウンジは、宿泊者全員の“リビングルーム”。
そしてここが、非常に重要。「星のや富士」では、多少の雨なら、焚き火を十分堪能できます。
雨が降ったら、雨露を防ぐ大きな傘を広げます。そして、その傘の下に椅子を並べるのです。もちろん、相手は大自然なのだから、完全防御とまでは行かないかも。でも、雨が降ったら降ったで、その成り行きを観察できるほど、自然と近い距離に身を置ける感覚は、キャンプそのものです。
炎の周りでゆったりとした時間を過ごせるように、必要なものはスタッフが気を利かして届けてくれます。もちろん、すぐ隣のライブラリーには暖炉があり、こちらでヌクヌクしながら、ゆらめく炎を楽しむことも良さそうです。
飲み物だって、なんでも。はじまりのシャンパンから、ワイン、ウイスキー、厳選されているとはいえ、有名どころの各種銘柄が揃います。
ちなみに、取材当日の最低気温は0℃。都会の冬着じゃまったく寒いのですが……、キャビンには防寒性に優れたコートが用意され、冷気を楽しめる程度に屋外ガスストーブでラウンジ全体を温めてくれているから、まったくヘーキ。そのうえで、まだ寒ければブランケットを使えばOK。さらには屋外コタツという切り札まで登場しちゃいます。したがって、念願のウヰスキーを心ゆくまでちびちび、という行為が、ストレスフリーで楽しめるのです。
夜9時には東京からアーティストを呼んで、「森の演奏会」。これ、平日も含めたエブリデイイベント。気分はまるで、Vivaプライベートフェス。
Page02. 冬のごちそうは、ジビエで決まり!
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星のやグランピングは“年中無休”。
そして真冬でさえも最適・快適・感動的ナリ(2)
冬のごちそうは、ジビエで決まり!
旅の楽しみのひとつ、食事に話題を移しましょう。「星のや富士」が冬季にススめているのが、ジビエ料理。秋から熟成させたイノシシ肉や、冬に収穫した鹿肉を、じっくりと時間をかけて火入れ。一流の猟師が仕留め、適切な処理をスピーディに行なうため、臭みが少なく、肉の旨味を楽しめるそう。
なかでも冬季に採れる鹿肉は、木の皮やもみがらをエサとしているため、脂分が減り、身が引き締まっていて、クセがなく、はじめての人でも難なくペロリ。一方のイノシシ肉のハムは、熟成が進んだ肉だけを使用するため、生肉よりも柔らかく、旨みが凝縮されています。
このコースは、屋外ダイニングに設えたコタツテーブルにて提供。冬の森の冷気のなか、足元ほんわか、ジビエをハフハフして食べるのが楽しい。しかもグランピングマスターのサポートのもと、ダッチオーブンによる食材の火入れや盛り付けなど、料理は自分たちで行なうのだから、その味わいはひとしお。キャンプの楽しみのエッセンスを凝縮して届けるホテル側の演出がニクイです。
またジビエつながりとしてもうひとつ、「山麓の鹿しゃぶ鍋」をセレクトすることも可能。こちらは宿泊キャビン内のテラスに設置されるコタツにて食すスタイル。言わば“ルームサービス鍋”です。
クセがなくさっぱりと食べられる冬季の鹿肉は、火を通しすぎないシンプルな料理法にもぴったり。鉄分やビタミンB2を豊富に含み、高タンパク低カロリーな鹿肉は健康面、美容面でも優れています。
鹿肉に合わせるのは、ダイダイのポン酢、春菊のペースト、木の実のゴマダレの3種類。鹿が過ごしてきた山合いの環境から着想し、鹿が口にしてきたであろう、木の実や野菜など山の食材を敢えてチョイス。まずはタレを使わずに出汁でひと口いただいた後、コクのあるタレをからませて食します。
ちなみに、ジビエはちょっと苦手かな?……というあなた、ええ、大丈夫です。メインダイニングではグランドメニューがあります。選択肢がひとつにならない、というところも“グランピング”ならではと言えそうです。
Page03. そして、そして、しかと見よ!
HOSHINOYA Fuji|星のや富士
星のやグランピングは“年中無休”。
真冬でさえも最適・快適・感動的ナリ(3)
そして、そして、しかと見よ! Nipponが誇るこの絶景を
目の前にドッカーンと富士山。河口湖畔に写り込む逆さ富士。これ観たら、泣きますよ。ええ泣きました。デッケェなーって、当たり前のことを思いながら。でもこの感動を得るためには、ちょっぴり早起きして出かけなくちゃならないんです。なぜなら風が吹かず、水面を揺らさない早朝でないと、この景色には出合えません。しかも富士山に雲がかかりにくい冬の早朝。釣り人や観光船が起き出す前の早朝カヌー。冬グラでは欠かせないアクティビティです。
「星のや富士」が提供するカヌー・アクティビティに参加するには、ホテルの待合所に朝6時50分に到着するツアーバスに乗らなくてはいけません。日の出前の薄暗い時間から、バスを待つのはなかなかしんどく、心折れそうになりますが、キャンプ♪キャンプ♪レッツゴーです。そして河口湖までは5分程度(もう、目と鼻の先)。インストラクターさんから説明を受けながらゆっくりとカヌーを滑らせていくので、危険なことはありません。もちろん海外からお越しの皆さんは、この絶景に大はしゃぎ。そんな楽しい外国人の姿をそれとなく観察するのも、おもしろいです。
グランピング。それはグラマラスなキャンプという意味だそう。かつてヨーロッパの諸侯たちが幾日もかけて王都に詣でる際に、途中、キャンプを張って宿を作りますが、そうして自然のなかに日常とできる限り変わらない自分たちのスタイルを持ち込んだことがルーツだそうです。
しかし「星のや富士」が提供するグランピングとは、ただ単に、自然のなかにラグジュアリーな非日常体験をもたらすものではありません。彼らが考えるラグジュアリーとは、高価な酒でも希少食材でもなく、むしろ大自然そのもの。彼ら自身が富士の自然に畏敬の念を払うと同時に、都会人が慣れていない自然との関わり方について、手厚くサポートすることに徹しています。欧米で生まれたグランピングという旅のスタイルをベースにして、八百万に神を見るNippon独自のグランピングスタイルをつくっているんですね。
雨が降った、風が吹いた、ひと際寒い、と、思ったら蒸してきた……。「星のや富士」で過ごすと、そうした自然現象が、いちいち不満ではちなく、「だったらどうしよう?」「どう攻略してみようか?」という、ちょっとした楽しみ・可笑しみに変わってくる。それがこの宿の特殊な効果・効用です。
星のや富士
住所|山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
アクセス|新宿バスタから高速バスで河口湖駅までおよそ100分。タクシーで20分程度。駐車場あり。
チェックイン・アウト|IN15時 OUT12時
宿泊費|1泊1室 4万5000円〜(税・サービス料10%込、食事別)
追伸:なんでわざわざ、この寒い冬季に、屋外でグランピングなのか、実際に行ってみたら分かりました。だって厳しい自然環境であるほど、森が雄弁に語りかけてくるんだもん。それに、そこは単なるキャンプとは異なるところで、グランピングマスターの知恵と経験で、しっかり守ってくれるしね。
追伸2:「風が騒ぐ夜は家に帰りたくないよ」。BO GUMBOSのどんとさん、かつて、そう唱ってましたね。うん、いまならすごく分かる気がします。