「エキサイティングなアドベンチャー」というアプローチで冒険の旅へといざなう

クライブ・ニーソン監督はとてもユニークな男性だ。幼少期をアフリカ東部でゾウやライオンといった野生動物と隣り合って過ごし、その後、ニュージーランドに移り住む。豊かな大自然しかない環境で、工夫しながらさまざまな遊びや冒険に仲間たちとともに挑戦。エクスストリーム・スポーツのパイオニアとしても知られてきた。一方、学問の世界では物理学で博士課程を修め、世界初の気象監視機器やデジタルカメラの開発をてがけてきたことでも知られる。

そんな彼が待ったなしの重要な環境問題を突きつける『ラスト・パラダイス』。私たちはニーソン監督が45年間にわたり記録してきた映像の変遷を見ることで、かつて正常だった地球の姿が一世代で激変してしまったことを知ることに。

しかし、そこには説教めいたところは一切ない。ニーソン監督をはじめ、バンジー・ジャンプの生みの親であるAJ・ハケットや秘境スキーやハングライダーの先駆者ジェフ・キャンベルといった仲間たちが楽しんできた“エキサイティングなアドベンチャー”というユニークなアプローチをとおして、私たちも旅を、そして冒険しているような気分になれる作品に仕上がっている。

“創意工夫”をもっていかにして、自然を守っていくのか

アフリカ東部でゾウやライオンと隣り合って少年時代をすごしたニーソン少年。彼はニュージーランドへと移り住んだ後も、仲間たちと遊具をつくったり、自然とともに創造力あふれる生活を送ってきた。

やがて彼らはサーフィンをはじめる。やんちゃな子どもたちは若者になると楽しいことの限界を押し広げ、その視点は海から山へ。クルマや森で寝泊りし、“山のサーフィン”、現在のスノーボードをはじめるのだった。

そして楽園を求めて旅に出た若者たち。サーフボードを手に、メキシコ、スペイン、インドネシア、オーストラリアをまわり、故郷ニュージーランドに戻って気づかされたのはニュージーランドの素晴らしさだったのだ。そして、彼らは次々とあたらしいエクストリーム・スポーツを生み出していく。

自然とともに遊ぶ彼らの夢は次世代にもこの楽しさを伝えること。しかし、この夢は悪夢に変わりつつある。森林伐採と農地の開発が遊び場だった自然を破壊しているのだ。

さまざまな創意工夫をもって遊びを生み出してきたニーソン監督やその仲間たち。この“創意工夫”をもっていかにして、豊かな自然を守っていくのか。魅力あふれるアクションとアドベンチャーシーンとともにニーソン監督や仲間たちだけが知り、もう残ってはいない“素晴らしき自然”そして、失ったものの大きさを私たちはあらためて知ることとなる。

『ラスト・パラダイス』
2月14日（土）より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
監督・脚本・撮影・製作│クライブ・ニーソン
出演│AJ・ハケット、バリー・グリーン、ジェフ・キャンベル、アラン・バーン、デイブ・スミザーズ
配給│レイバック・コーポレーション
2013年/ニュージーランド/100分
http://www.laidback.co.jp/lastparadise/