MOVIE│“劇画”の生みの親、辰巳ヨシヒロの自伝的半生を映像化『TATSUMIマンガに革命を起こした男』
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2015年1月17日

MOVIE│“劇画”の生みの親、辰巳ヨシヒロの自伝的半生を映像化『TATSUMIマンガに革命を起こした男』

MOVIE│“劇画”を生み出した男の自伝的半生と5つの代表的な短編を映像化

長編アニメーション『TATSUMIマンガに革命を起こした男』

「劇画」の生みの親として知られる辰巳ヨシヒロ。彼の自伝的半生と、5つの代表的な短編を映像化した長編アニメーション『TATSUMIマンガに革命を起こした男』が、11月15日(土)より角川シネマ新宿ほか全国順次公開される。

Text by YANAKA Tomomi

監督はシンガポールを代表するフィルムメイカー、エリック・クー

辰巳ヨシヒロは、日本はもとより、1980年代からフランスやアメリカなど、海外で高い評価を受けてきたクリエイターだ。もともと子どものものであった「マンガ」に対し、デフォルメや笑いを排除し、ページ数の多い単行本の特徴を生かした大人の読み物へと昇華させた「劇画」の名づけ親として知られている。

マンガを大人の鑑賞に堪えうる「芸術」へと引き上げた立役者でもある辰巳の自伝的半生であり、2009年の手塚治虫文化賞大賞を受賞した『劇画漂流』と短編作品5話を原作に、シンガポールのエリック・クー監督が映像化した長編アニメーション『TATSUMIマンガに革命を起こした男』が日本に“逆輸入”された。

カンヌ国際映画祭の常連であり、実写作品を撮りつづけてきたエリック・クー監督。辰巳の作品に感銘を受け、最新技術により映像化し、“動くマンガ”のような映像化を実現。日本語版では声の出演に辰巳自身が参加しているほか、俳優の別所哲也がひとり6役に挑戦している。

MOVIE|『TATSUMIマンガに革命を起こした男』 02

MOVIE|『TATSUMIマンガに革命を起こした男』 03

浮かれる世の中に対し、日陰の人たちを描きつづけた辰巳

手塚治虫の影響で兄とともにマンガを描きはじめた、中学生の辰巳少年。その後交流をもつことになった手塚からの「長編マンガを描きなさい」という言葉に奮起した辰巳少年は、高校卒業後晴れてプロの漫画家となる。

そして大人向けの作品を描いていた辰巳は、自身の作品を語感が強く、ドラマ性を感じられる「劇画」と命名。仲間と「劇画工房」を結成し、劇画ブームへの火付け役となっていく。劇画が広く世間に受け入れられ、人気作家が次々と登場すると皮肉なことに辰巳への注文は減少。生活のために描くようになった彼は高度経済成長期で浮かれる世の中への怒りを作品に吐き出すように、日陰に暮らす人びとを描くようになっていく。

このほかにも、従軍カメラマンとして原爆直後を撮影した男について描いた『地獄』や、サルと暮らす孤独な男の物語『いとしのモンキー』など、短編5作も収録された『TATSUMIマンガに革命を起こした男』。世界が絶賛しながらも、日本が知らない辰巳ヨシヒロの才能をいま、あらためて感じたい。

『TATSUMIマンガに革命を起こした男』
11月15日(土)より、角川シネマ新宿ほか全国順次公開
監督│エリック・クー
声の出演│別所哲也、辰巳ヨシヒロ
配給│スターサンズ
2011年/シンガポール/96分
http://tatsumi-movie.jp/

           
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