MOVIE|巨匠ツァイ・ミンリャン監督、最後の長編作品『郊遊<ピクニック>』
MOVIE|孤独な父親を主人公に“現代”と“孤独”を繊細に描き出す
巨匠ツァイ・ミンリャン監督、最後の長編作品『郊遊<ピクニック>』
台湾映画界の巨匠ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の引退作であり、昨年のベネチア国際映画祭で審査員大賞、今年の台北映画祭で最優秀主演男優賞を受賞した『郊遊<ピクニック>』。9月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
主演の父親役はツァイ作品の“顔”リー・カンション
1957年に生まれ、1994年に長編2作目となる『愛情萬歳』でベネチア国際映画祭の金獅子賞に輝き、これまで『河』『西瓜』など名作を送り出してきたツァイ・ミンリャン監督。記念すべき長編10作目として出品された本作は、昨年のベネチア国際映画祭では審査員大賞を受賞。そして、その場で発表された突然の引退宣言は、世界中の映画ファンに大きな衝撃を与えた。
そんなツァイ監督の最後の長編となる『郊遊<ピクニック>』が日本でも公開。
幼い子どもを抱える孤独な父親を主人公に、第一作から描きつづけてきた“現代”と“孤独”を、独特のユーモアで包みながら、これまでにない大胆な描写で繊細に、豊饒に映し出した。
主演はツァイ作品の第一作から出演しつづけた“顔”ともいえるリー・カンション。彼の実の甥と姪が幼い娘と息子役を演じ、さらなるリアリティが追求されている。ほかに、ツァイ作品を支えてきたチェン・シャンチー、ルー・イーチン、ヤン・クイメイも顔をそろえた。
人間看板の父親、そしてピクニックのように楽しげに街をうろつく子ども
台北に住む父と、幼い息子と娘。水道も電気もない空き家にマットレスを敷いて3人は眠っていた。父は、不動産広告の看板を掲げて路上に立ちつづける「人間立て看板」でわずかな金を稼ぎ、子ども達は試食を目当てにスーパーマーケットの食品売り場をうろつく毎日だ。
そんな貧しい暮らしでも、子どもたちは、まるで郊外に遊ぶピクニックのよう。だが、土砂降りの雨の夜、父はある決心をするのだった――。
癒されぬ人間の孤独と、子どもたちの純粋なきらめきが美しく切なく交差する本作。映画史に残るであろう驚異的な長回しのラストシーンは特に見逃せない。
『郊遊<ピクニック>』
9月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開
監督│ツァイ・ミンリャン
出演│リー・カンション、ヤン・クイメイ、ルー・イーチン、チェン・シャンチー
配給│ムヴィオラ
2013年/台湾、フランス/138分
http://www.moviola.jp/jiaoyou/
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