MOVIE|人生のはざまで揺れ動くある女性の愛 『パリ、ただよう花』
MOVIE|“製作禁止”が解かれた中国の鬼才、ロウ・イエ監督が描く
人生のはざまで揺れ動くある女性の愛 『パリ、ただよう花』
異なる人種や文化、暴力と優しさ、愛とセックスのはざまで揺れ動くある女性の愛の問題を描く、『パリ、ただよう花』。12月21日(土)より渋谷アップリンク、新宿K'sシネマほかで全国順次公開される。
Text by KUROMIYA Yuzu
「どんなにセックスを重ねても、愛には届かない」
パリと北京、ふたつの都市で居場所を求めてさまよう女性を描き出した『パリ、ただよう花』。監督は、本作をもって5年間の中国国内での映画製作の禁止が解かれたロウ・イエ。リウ・ジエの実体験をもとにした小説「裸」がベースであり、ロウ・イエ監督にとって原作のある作品は本作がはじめてとなる。
この小説を映画化しようとした理由をロウ・イエ監督はこう語る。「僕が常に興味を持っている愛というテーマを、女性の視線で率直かつ正直に、人間的な視線で提示していました。愛は人間にとって日常的な問題です」
また、「セックスは、自然で自由な人間にとって欠かせない要素です。人間を描きたいならセックスを避けることは困難ですし、時代を描くのに人間を避けることもできません」とも話し、激しく体を求め合うふたりを描くことで表現できる、人間らしい感覚、孤独、愛し愛されたいという欲求を見事に映し出した。
出演は、フランス生まれの中国人モデル兼女優コリーヌ・ヤンと、『預言者』(2009年)のタハール・ラヒム。中国から来た女教師とフランスに住む建設工という対称的なふたりを圧倒的な存在感で熱演している。また、登場人物をカメラの支配から解放するかのように、手持ちカメラで撮影したリアリティのある映像も注目だ。
「静」と「動」、対照的なふたりが出会い惹かれあう
北京からパリにやってきたばかりの若い教師、花(ホア)。なじみのない街で彼女はさまざまな男と体を重ね、自分の狭いアパートと大学の間、かつての恋人たちとフランスであらたに出会った人びとの間を漂っていく。ある日、建設工のマチューという男と出会い一目で恋に落ちたふたりは、激しく肉体を求め合う。お互い、秘密を抱えたまま――。
体を重ねただけでは得られない心を満たす愛とは。数々の衝撃作を生み出してきた中国の鬼才ロウ・イエ監督版『ラストタンゴ・イン・パリ』ともいえる愛の物語がここに完成した。
『パリ、ただよう花』
12月21日(土)より、渋谷アップリンク、新宿K'sシネマほかで全国順次公開
監督|ロウ・イエ
出演|コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム
配給・宣伝|アップリンク
フランス・中国/2011年/105分
http://www.uplink.co.jp/hana/