MOVIE|アンジェリーナ・ジョリー渾身の監督作『最愛の大地』
MOVIE|ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の知られざる真実
アンジェリーナ・ジョリー渾身の監督作『最愛の大地』
女優アンジェリーナ・ジョリー初の長編監督作品が完成。1990年代にヨーロッパで起きたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の、“知られざる真実”をもとに描いた『最愛の大地』だ。8月10日(土)より新宿ピカデリーほかで全国ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
サラエボ出身の女優らリアリティを追求した配役
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の特使として、そして人道活動家として、弱い立場の人びとに手を差し伸べてきたアンジェリーナ・ジョリー。そんな彼女がボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で被害に遭った女性たちの話を聞き、どうしても映画にしなければならないと立ち上がり、監督、脚本を務めた『最愛の大地』が、日本にも上陸する。
俳優陣は、主役でセルビア兵から攻撃を受けるムスリム人の画家アイラに、戦禍の地となったサラエボ出身のザーナ・マリアノヴィッチ。戦争によりアイラと敵同士となってしまうセルビア将校の元恋人役には、セルビア系ボスニア人のゴラン・コスティックと、よりリアリティを追求した配役が実現している。
収容所で女性としての尊厳を貶められるアイラ
1992年、ボスニア・ヘルツェゴビナで起きた内戦が激しくなり、セルビア兵士に捕らえられ、収容所に収監されることになった画家のアイラ。収容所での生活は苦しく、女性としての尊厳を貶められる屈辱の日々を迎えることになる。
しかし、そんなアイラをかばうため、かつての恋人である、セルビア将校のダニエルは彼女に画家として彼の肖像画を描くという任務を与える。ダニエルに囲われるというかたちで地獄から一時的に抜け出したアイラ。そして、彼の肖像画を描くうちにふたりの間にはかつての愛が蘇るのだった。だが、そんな気持ちとは裏腹に戦争は激化していく。
「人間の盾として使われ、ひどく痛めつけられた女性の話を聞き、貶められた彼女たちの気持ちにどれだけより添えられるか不安だった。が、これはわたしでなくては描ききれないと感じた」と語るアンジー渾身の初監督作品。残虐な争いの歴史をもとにした深い愛の物語が誕生した。