特集|2013年国際映画祭速報|第85回アカデミー賞
MOVIE|第85回アカデミー賞
各部門の受賞作品を最速レポート!
2月25日(月)、世界最大の映画祭典「第85回アカデミー賞」の授賞式がアメリカのロサンゼルスで行われた。さまざまなジャンルで選ばれた各部門の優秀作を紹介する。
Text by OPENERS
Photographs by The Academy of Motion Picture Arts and Sciences
伝記からミュージカルまで!
今年の注目作品は作品賞を受賞した、実話に基づいた『アルゴ』と、監督賞を受賞した『ライフ・オブ・パイ』。『アルゴ』は俳優ベン・アフレックが監督兼主演の話題作。そして、台湾の監督アン・リーは『ライフ・オブ・パイ』で、再度アカデミー賞の監督賞を獲得した。また、映画『レ・ミゼラブル』に出演した女優アン・ハサウェイがオスカー初受賞という栄冠に。今回のアカデミー賞は映画のジャンルにとらわれることなく、素晴らしい作品が率直に評価される結果となった。
Courtesy of Warner Bros./Claire Folger
作品賞
『アルゴ』
製作国:アメリカ
監督:ベン・アフレック
公開中
俳優ベン・アフレックが監督を兼任したノンフィクション
全世界を震撼させた、イランのアメリカ大使館で人質事件が起きたのは、1979年11月4日。だが、この事件にまつわる真相は、謎に包まれたままだった。事件発生から実に18年後、当時のアメリカ大統領ビル・クリントンが機密扱いを解除したことから、前代未聞の人質救出作戦がはじめて世に明かされた。その全容を映画化したのが2010年の映画『ザ・タウン』につづく監督・主演作となるベン・アフレックと、プロデューサーを務めるジョージ・クルーニーだ。
革命の嵐が吹き荒れるイランで、過激派がアメリカ大使館を襲撃、大使館職員たちを人質にとった。彼らの要求は、悪の限りを尽くして失脚し、アメリカに入国した前・国王パーレビの引き渡しだった。大混乱のさなか、裏口から6人の大使館職員が脱出。カナダ大使の家に身を隠すが、見つかれば彼らの命はもちろん、まだ人質となっている仲間の身も危ない。絶望的な状況を打破するため、彼らはCIAのトニー・メンデスに助けを求めた。
そこでメンデスが出した“名案”とは、嘘の映画を企画し、6人をロケハンに来た撮影スタッフとして出国させるというもの。メンデスはイランどころかアメリカ政府までも欺(あざむ)き、特殊メイクの第一人者、ジェン・チェンバースとプロデューサーを味方につけて、タイムリミット72時間のハリウッド作戦に取りかかった。緊迫状態のなか、CIAからは作戦中止の命令が。はたして6人の命の行方は。
主演俳優賞
ダニエル・デイ=ルイス
『リンカーン』
製作国:アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
2013年4月19日(金)より、全国ロードショー
史上初! 3度目の主演俳優賞受賞
社会を大きく左右する決断を迫られたとき、未来を見据えた選択ができるかどうか──それがリーダーとしての資質を決定づける。1865年1月、ひとりの男がまさにその決断のときを迎えていた。アメリカ第16代大統領のエイブラハム・リンカーンである。
人が自由であるための道を開く、米国憲法修正第13条を議会で通過させ、南北戦争という悲惨な内戦をどのように終結させるか。若者を“死地”に送る痛みに苛まれながらも、人間の自由を確立しなければならない。心で葛藤を繰り返しながら、ふたつの命題を実現するため、リンカーンは知恵と勇気、不屈の闘志を駆使する。理想を貫くためにはどんな策もいとわない彼の一面、これまであまり伝えられなかった妻や子どもとの葛藤などが、アメリカ映画界を代表する巨匠スティーヴン・スピルバーグの巧妙な語り口で浮き彫りにされていく。そこには自らの信念に従って、孤独や誤解を恐れずに戦い抜くひとりの男のドラマが香り立つ。
だれもが歴史の教科書で拝見したであろう、あの印象的な容姿のリンカーンになりきってみせたのは、1989年の映画『マイ・レフトフット』と2007年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で2度のアカデミー主演男優賞に輝いたダニエル・デイ=ルイス。感情を抑えた内省的な男性像を、存在感豊かに表現してみせている。
助演女優賞
アン・ハサウェイ『レ・ミゼラブル』
製作国:アメリカ
監督:トム・フーパー
公開中
アン・ハサウェイがついに初受賞
1985年の初演以来、ロンドンで27年間にわたり上演がつづき、いまなおロングラン記録を更新しつづけている『レ・ミゼラブル』。世界43カ国、21カ国語に翻訳され、6000万人を超える観客を動員しているこの作品は、まぎれもなく世界でもっとも愛されているミュージカルの最高峰だ。タイトルの「レ・ミゼラブル(悲惨な人びと)」のとおり、つらい境遇にある登場人物たちが貫く“真実の愛”で、世界中の人びとを魅了しつづける舞台の興奮と感動が、名曲とともに壮大なスケールで映画化された。
パンを盗んだ罪で19年間服役し、仮釈放されるものの生活に行き詰まり、再び盗みを働いてしまうジャン・バルジャン。しかし、その罪を見逃してくれた司教の真心に触れた彼は、身も心も生まれ変わろうと決意。マドレーヌと名前を変え、工場主として成功を収める。そんなバルジャンを執拗に追いかける警官のジャベール。そして、不思議な運命の糸で結ばれた女性フォンテーヌ。彼女から愛娘コゼットの未来を託されたバルジャンは、ジャベールの追跡をかわしてパリへ逃亡、コゼットに限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。そんななか、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発し、だれもが激動の波にのまれていく──。
妊娠中に恋人に捨てられ、娘を育てるためにバルジャンの工場で働くが、生活苦のために娼婦へと身を落としてしまう薄幸な女性、フォンテーヌに扮したのがアン・ハサウェイ。夢やぶれた女性の張り裂けそうな想いを、名曲『夢やぶれて』に乗せて表現した。
主演女優賞
ジュニファー・ローレンス『世界にひとつのプレイブック』
製作国:アメリカ
監督:デヴィッド・O・ラッセル
公開中
助演男優賞
クリストフ・ヴァルツ『ジャンゴ 繋がれざる者』
製作国:アメリカ
監督:クエンティン・タランティーノ
2013年3月1日(金)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
長編ドキュメンタリー賞
製作国:アメリカ
監督:マリク・ベンジェルール
2013年3月16日(土)より、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
外国語映画賞
製作国:オーストリア
監督:ミヒャエル・ハネケ
2013年3月9日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー