渡辺謙も出演、樹海で知る生と死の狭間『追憶の森』|MOVIE
MOVIE|マシュー・マコノヒー×渡辺謙×ガス・ヴァン・サント
樹海で知る生と死の狭間『追憶の森』
『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞®主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒーと、『ラスト サムライ』でアカデミー賞®候補になって以来、日本を代表する国際派スターとして活躍する渡辺謙。演技力と存在感で映画界に確固たる地位を築いた2人が初めてタッグを組み、驚きと感動に満ちた異色のミステリーを誕生させた。アカデミー賞®監督賞にノミネートされた名匠ガス・ヴァン・サントが描く光溢れる樹海の美しさを、ぜひ映画館で堪能して欲しい。公開は4月29日(金・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
Text by OPENERS
ガス・ヴァン・サントが描く光溢れる樹海の美しさは必見
この映画を見て、一番驚かされたのは樹海をとても美しい場所に感じてしまうことだ。物語の冒頭で、妻を亡くした傷心のアメリカ人アーサーが、パスポートと少しのお金と手紙だけを持って日本に入国し、新幹線を乗り継いで富士の樹海までたどり着く。樹海といえば、日本では死の森として恐れられ、物々しい雰囲気だとばかり思っていた。しかし、そんな樹海も名匠ガス・ヴァン・サントの手にかかれば、たちまち美しい森に豹変する。木々が生い茂り、その隙間から光が差し込み、アーサーにその光がさんさんと降り注ぐ。意図的に環境音を削られた、吐息だけが漏れる映像を見ていると、そこは空気が澄んでいて綺麗な森だと意識をさらっていく。
そう、そこはとても綺麗な森だった、血まみれの男・タクミこと渡辺 謙が登場するまでは――。タクミの登場によって、だんだん状況が変わっていく。夜が近づくにつれ、空気は冷え込み、生と死が繋がる『追憶の森』に変貌する。誰かから命を狙われて逃げ惑うわけでもないのに、夜が長く自然が怖いことを、この映画は見せつける。昼と夜のコントラストの激しさに、恐怖すら感じるだろう。
もう一つこの映画で驚かされるのは、随所に「謎」が隠されたミステリーになっている点だ。最初は、亡き妻への想いに気づいた男が樹海へ向かい、一人の男と運命的な出逢いを果たし生きる希望を見出す…、そんな感動ヒューマンドラマかと思っていた。しかし、そうではなかった。
妻への本当の想いに気づいた主人公アーサーを絶望の淵に追いやり、樹海へと向かわせたものは何だったのか? 突然、現れたタクミとは何者なのか? なぜ、彼らは出逢ったのか? いったい、この森にどんな秘密が隠されているのか? 出口を求めてさまよう二人のたどり着く先とは?――たくさんの謎が散りばめられ、パズルのピースがすべてハマったあと、振り返ってもう一度最初から見たくなる――、そんな魅力を秘めた感動のミステリーだった。
アーサーを演じるのは『評決のとき』から20年にわたりハリウッドの第一線を走り、『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞®主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒー。罪悪感と喪失感を抱えて樹海へ足を踏み入れたアーサーが救いの光を見出すまでの旅路を人間味たっぷりに演じきり、観る者の感涙を誘う。
そんなアーサーと森のなかで出逢うタクミには、『ラスト サムライ』でアカデミー賞®候補になって以来、映画のみならずNYブロードウェイの舞台にも挑戦し、トニー賞主演男優賞ノミネートにもされる日本の至宝・渡辺謙。弱く傷ついた人物でありながらアーサーの魂を解放へと導いていく不思議な役どころを、存在感満点に演じている。情けない渡辺謙が見れるのは、この映画だけかもしれない。
さらに、ドラマの謎解きの要ともいうべきアーサーの妻ジョーンを、『21グラム』と『インポッシブル』でオスカー候補になった演技派女優のナオミ・ワッツが演じているのも話題だ。
そんなオスカー俳優たちをまとめ上げるのが、『グッド・ウィル・ハンティング/ 旅立ち』『ミルク』でアカデミー賞®監督賞にノミネートされた名匠ガス・ヴァン・サント監督。『[リミット]』で脚光を浴びたクリス・スパーリングの脚本を、今回はスピリチュアルで詩的な味わいのある映画に仕立てた。
ガス・ヴァン・サントが描く光溢れる樹海の美しさを、ぜひ映画館で堪能して欲しい。公開は4月29日(金・祝)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
『追憶の森』
2016年4月29日(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督│ガス・ヴァン・サント
出演│マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ
配給│東宝東和
2015年/アメリカ/原題「The Sea of Trees」
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