感動美食を求めて軽井沢No.1のレストラン「ブレストンコート ユカワタン」へ|TRAVEL
LOUNGE / EAT
2018年9月11日

感動美食を求めて軽井沢No.1のレストラン「ブレストンコート ユカワタン」へ|TRAVEL

EAT|ホテルブレストンコート

なるほど、クルマで片道3時間かけても通いたい!

「ブレストンコート ユカワタン」にて
もてなしの心が溢れるクラシックフレンチを食ス(1)

えっと質問ですが、皆さん夏休みはもう取りましたか? 酷暑でヘトヘト? 仕事に追われてそれどころではない? って、うーん、たしかに……。いや、ちょっと待った! それじゃ何のために生きてるか分からないじゃないですかっ。ときには魂を揺さぶられる感動に出合いましょうよ。それには、旅。旅先の美食への追憶は、見えないお守りとなって心の中でじんわり輝き続けます。

Photographs by INABA Hirofumi(HOSHINO Resorts)Movie by OZAWA Shinzo(HOSHINO Resorts)Text by TSUCHIDA Takashi

だから大人の旅にはオーベルジュがオススメ

3日、4日と欲張らず、ひと晩でいいんです。自分のために時間を作り、生活を離れ、心を解き放ち、とびきりのテーブルに臨んでください。そこではシェフとの一騎打ち。アンテナ感度フルパワーでキャッチした食材の香り、舌の上の感触、その味わいは、残暑、紅葉、年の瀬と、これからどんどん加速していく時間の流れのなかで、溺れないためのパワーの源になるはずです。

さて、本題。そもそも、この企画の発端はこうでした。星野リゾート広報のYさん(現在は青森県の奥入瀬渓流ホテルへ異動。彼女ならきっといい企画をこれからたくさん発信していくに違いありません。今後このホテルを要チェックです!)と打ち合わせをしている際に「ぜひ紹介したい料理人がいるんです。歳はまだ若いのに、クラシックフレンチにこだわっていて」と切り出されたのがきっかけでした。軽井沢No.1のレストラン「ブレストンコート ユカワタン」(以下、ユカワタン)の料理長だそうです。

クラシックフレンチというのは、いわゆる古典手法に則ったフランス料理。もしかして堅苦しい? 古臭い? と、一瞬アタマをよぎった私は、なんとまぁ浅はかだったかと、後に反省することになるのですが、美味しいお食事はもちろん大好き。美味しく食べるため、旨い酒をいただくためにこの私は生きています。

それともうひとつ気になったのが、若くして星野リゾート施設の料理長を任されている事実。きっと"デキるヒトに違いない"という直感もあり、

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「ブレストンコート ユカワタン」料理長、松本博史シェフ。

どんな人物なのか、お会いしたいとも思ったのです。

というわけで場面は移り、やってまいりました軽井沢星野エリア。東京からクルマを走らせて3時間弱。新幹線なら1時間ちょい。改めて言うまでもなく、ここは首都圏から好アクセスの避暑地であり、星野リゾートの本拠地でもあります。

「ユカワタン」とは、軽井沢ホテルブレストンコートに併設されたレストラン。

その名称は、星野エリアの敷地を流れる湯川からきており、“タン”とはフランス語で時間。湯川の流れのようにゆるやかな時間を過ごしてほしいという意味が込められているんです。「ユカワタン」は、ブレストンコート宿泊の「食体験」を至高のものとするため、2011年、ホテルのメインダイニングとして設けられました。

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木立に囲まれた軽井沢ホテルブレストンコート。

一棟建て、屋根天井の吹き抜けワンフロアに、用意された席数は24席。宿泊者以外も予約可能ですが、ランチ営業はせず、ディナータイムもアラカルトなし。シェフおまかせコース1本というストロングスタイルで営業しています。しかも先の席数で、バトラーが4人という贅沢なスタッフ配置。最高の料理を、ベストな瞬間を逃さずサーブしようとする姿勢ゆえでしょう。

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夕暮れの頃の「ユカワタン」。ひと晩に9組だけの至福のテーブル。

Page 02. 本当においしいと思えるものは、自分の過去にありました

EAT|ホテルブレストンコート

なるほど、クルマで片道3時間かけても通いたい!

「ブレストンコート ユカワタン」にて
もてなしの心が溢れるクラシックフレンチを食ス(2)

本当においしいと思えるものは、自分の過去にありました

ユカワタンのはじまりは、評判の「星のや東京」料理長、浜田統之氏が作ったものですが、料理人が変われば味は変わります。浜田シェフから引き継いだユカワタン2代目、松本博史シェフが、このレストランで何を成し遂げようとしているのか? 舌で確かめる前に、まず知識から。

聞けば、前職は東京の有名なレストランで働いていた松本シェフ。そのレストランには野菜が山梨から直送されていましたが、お客様からもスタッフからも評判のその野菜を、正直おいしいと思えなかったそうです。

北アルプス連峰を望む長野県小川村、周囲を自家菜園に囲まれて育った松本シェフの野菜に対する味覚のモノサシは、断然にシビアでした。

東京を離れ、自分がかつて食した、本当においしい野菜を扱いたい。言わば、己の美食体験を探して、この地にたどり着いた松本シェフ。その松本シェフの"勝負皿その1"が「里山の恵み」(前菜)です。

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左/「里山の恵み」の盛り付けシーン。それぞれの素材をひとつずつ盛っている。右/取材当日の「里山の恵み」お品書き。

これ、単なるサラダではありません。すべての素材が主役級。季節によりますが、およそ70種類の野菜とハーブが、それぞれ最も適した手法、味付け、温度帯で調理され、丁寧に盛りつけられているのです。だからどれを食べても、歯ごたえシャッキシャキ。素材本来の香りと甘みが引き立っています。

「フォークでごそっと、すくってください」と、松本シェフ。たしかに異なる素材を同時に食した方が、味の複雑味が増してさらに美味しい! 圧倒的な手間がかかっているのでしょうが、絡みつくような甘みは、ドレッシング要らずです。

中山道の宿場町として江戸時代に賑わった軽井沢。地名の由来は、この地の地質である軽石からきています。その軽井沢も明治期に入り、人気が落ちた時期がありました。東海道の難所、大井川を鉄道で渡れるようになり、わざわざ中山道を選ぶ必然性が薄まったからです。すると軽井沢に目をつけたのが外国人。彼らがこの地で暮らすために持ち込んだのがレタス、トマトといった西洋野菜でした。つまり我が国でひと足先に西洋野菜作りがはじまったのが、ここ軽井沢であり、大量生産に偏らず、野菜本来の旨味を求め続けたノウハウが、この辺りの農家には代々伝わっているのです。

ここでもうひとつの主役をお伝えします。それは、ペアリングされたワイン。「ユカワタン」では、メイン一皿ごとにワインをサーブしてもらうことが可能。ちなみに私が体験した「里山の恵み」に対するペアリングは、ソーヴィニヨン・ブラン種の白ワインでした。エチケットには「Vincent Pinard Sancerre Florès」とあります。フランスでも有名な30代の若き造り手だそうです。白ぶどうジュースのようにフレッシュ感が半端なく、それでいてしっかりとワインの味わいを残しています。このワインがファンファーレとなり、頬張る手が止まらないのです。

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つまり、ソムリエ鈴木良隆さんのチョイスがまた素晴らしいんですよ。

料理を引き立てることに徹した姿勢を崩さず、それでいて驚きを与えてくれます。

鑑評会に足繁く通い、ぶどうの仕上がりをヒアリングしているのはもちろん、シェフの思いをドリンクで補完しようとする徹底さが気持ちいい。

ちなみにアルコールNGの人はノンアルコールカクテルを。

左/ソムリエ兼バトラーの鈴木良隆氏。右/ファンファーレのような印象の白ワイン。旨いっ!!

むしろこちらの方が、手が込んでいるんじゃないかと思わせる、鈴木さん凝り凝りのモクテル(※モックのカクテル)もまた、料理の味にぴったり寄り添っています。このモクテルも、料理一品ごとに付いてくるからスゴい。

なるほど東京には持ってこれない味が、ここにありました。でもこれ、まだ前菜なんですよ。本当のサプライズはまだまだ! こんなもんじゃありません。

Page 03. テーブルにフワッと花開く、ヴェッシー包みの滋味深き薫り

EAT|ホテルブレストンコート

なるほど、クルマで片道3時間かけても通いたい!

「ブレストンコート ユカワタン」にて
もてなしの心が溢れるクラシックフレンチを食ス(3)

テーブルにフワッと花開く、ヴェッシー包みの滋味深き薫り

ヴェッシーとはズバリ、豚の膀胱。しっかりと下準備したヴェッシーで食材を包み、一定時間お湯をかけ続けて低温加熱する調理方法が"ヴェッシー包み"です。

ヴェッシー包みの利点は、香りと水分を逃さず、「食材とヴェッシーがあたかも化学変化するかのように、複合的な香りを纏う」(松本シェフ)ことにあります。しかし今日ではヴェッシー自体が流通しづらく、食用バルーンや紙包みで代用されることがほとんど。それを松本シェフは農家から直接買い付け、自分たちで下準備をこなして使用しています。

料理は、盛り付けの前に、ヴェッシーが膨らんでいる状態でテーブルに運ばれます。その理由は、ヴェッシーを切り開く際に立ち上るおいしい香り。バトラーがナイフを入れる、その貴重な瞬間も逃さず届けてくれるのです。

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「フランス料理の美味しさをもっと知ってもらいたい」と、松本シェフ。フランス料理の美味しさとは、味の多重性であり、技を重ね合わせて調理された旨味と教えてくれました。

ゆえに、フランス料理の手間のかけ方は、最高ランクのもてなし。時間の糸目をつけず、リラックスして臨むテーブルに、これ以上のマッチングはありません。

そして今宵のヴェッシー包みは、仔鳩。ソースは鳩の内蔵にフォアグラを加え、コンソメスープで煮詰めたもの。ジビエ肉の臭みを、鉄分のあるソースで抑え、低温加熱によりまろやかさが備わりました。

さて、この原稿では松本シェフの勝負皿2つをフィーチャーしましたが、コース全体像は下記の通り。

アペロとしてシャンパーニュロゼとともに。

1 ノリとチーズのパリパリ
2 フォアグラとトウモロコシのテリーヌ
3 いとう(川魚)のジュレ
4 馬肉のタルタル、生ウニ乗せ
5 羊肉のアメリカンドッグ
6 紫蘇とビーツのシャーベット
7 鮎づくし4品(フリット 野菜添え、最中、蓼酢のテリーヌ、コンソメ)

メインとして

8 里山の恵み
9 鯉のマリネと燻製をビーツに合わせて
10 イワナのグリルとリゾット
11 仔鳩 ヴェッシー包み
12 各種スイーツ

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これでも一部抜粋。そう、質も量も怒涛です。そしてドリンクのペアリングはアペロからスタート。この充実したラインナップで、満足しない人などいるのでしょうか?

はい、このリポートはここでお開き。いつもは自室に戻ってから深夜までグデグデと寝酒を飲む癖があるのですが、その夜はスパッと寝てしまいました。何でだろう。なんか明日からまた頑張ろう! っていう気がして。

軽井沢高原教会と星野遊学堂

話は変わりますが、山手線のドア脇あたりが定位置となっている軽井沢高原教会のポスター、皆さん見たことありませんか? あの教会は、実はホテルブレストンコートの敷地内にあるんです。つまり、ここは軽井沢高原教会で挙式をするカップルたちの憧れの地でもあります。

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しかし教会のプレートをよく見ると「星野遊学堂」とあります。この教会は、大正10年に材木小屋で開かれた「芸術自由教育講習会」が原点。その昔、そこで講師をしていたのが、高名な内村鑑三氏。内村氏が、大正15年に先々代、星野嘉助氏に書いた「成功の秘訣」という文書が残されています。

一.自己に頼るべし。他人に頼るべからず。
一.成功本位の米国主義に倣ふべからず。誠寶本位の日本主義に則るべし。
一.雇人は兄弟と思ふべし。客人は家族として扱ふべし。
(抜粋)

素晴らしい料理で感覚が研ぎ澄まされた状態で、こうした言葉に会うとシビれます。星野エリアで過ごすと奥深さを感じるのは、旅のなかの”気づき”をそっと教えてくれるからなんだろうな。よく遊び、よく学べ。

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ハイ、先生、了解です。


more info.

宿泊は、ホテルブレストンコートのデザイナーズコテージがオススメ。シンプルさを追求したスタイルのあるお部屋で、夕食の余韻を楽しんで。

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翌朝食は、「ノーワンズレシピ」にて、ビュッフェおよびメインは「そば粉のクレープ」。

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ピッキオのスタッフが野鳥の森を案内してくれるネイチャーウオッチングは大人も存分に楽しめる内容。宿泊の際はぜひ参加を!!

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問い合わせ先

星野リゾート 軽井沢ホテルブレストンコート

Tel.0267-46-6200

https://www.blestoncourt.com

           
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