連載・和醸和楽|第42回 生み出される酒の一滴一滴に魂を込める『高木酒造』
LOUNGE / EAT
2015年5月21日

連載・和醸和楽|第42回 生み出される酒の一滴一滴に魂を込める『高木酒造』

早くも23BY(酒造年度)に向けて始動しはじめた『十四代』

生み出される酒の一滴一滴に魂を込める『高木酒造』

20年あまりの私の酒造りキャリアのなかでも、“22BY(酒造年度)”は忘れられないモノとなりました。

文・写真=和醸和楽

音のない空間から、発酵をつづける酵母の音

昨年の夏の暑さで、酒米は高温障害の影響で堅いお米となり、どの蔵元さんも酒を醸すなかでご苦労をされたことと思います。私の蔵も例外ではなく、お米の特性を把握するまでに苦労をしました。そんななかでも順調に仕込みは推移し、ゴールが見えてきた矢先の大地震……。

揺れは大きかったものの、建物やお酒の被害はありませんでしたが、電気が途絶え、酒造りにとっては大きな痛手を被りました。丸3日間、電気のないなかでの仕込みがつづきました。どんなことがあっても途絶えることだけはないようにと、酒を造りつづけることに心血を注ぎました。

真っ暗な仕込蔵に入ったときのことです。音のない空間から、発酵をつづける酵母の音が聞こえてきました。「プツプツ……プツプツ」。静寂のなかで酵母たちの発酵音は見事にハーモニーを奏で、それは神秘的な瞬間でした。いままで何百という醪(もろみ)を見てきましたが、今回のような酵母のもつ生命力を体感ができたことは私の今後の酒造り人生においてきっと大きな財産として活かされるはずだと確信をしています。命の尊さを痛感したからこそ、生み出される酒の一滴一滴に魂を込めることができるのだと思います。

和醸和楽|高木酒造 03

和醸和楽|高木酒造 04

早くも23BY(酒造年度)に向けて始動しはじめた『十四代』

この震災を機に、私はさらなる進化を求め、来期に向けて早くも蔵の増築に着手しました。毎年毎年繰り返される、設備面での補強や新設は私にとっての大きな励みでもあります。皆さまの口に入る一瞬のために私たちは酒造りに情熱を込めて向き合っています。うれしいときの酒、悲しいときの酒、酒にはいろんな場面でその場を演出する要素を兼ね備えていますが、私はいまこそ前進するときの“力の水”となるようなそんなお酒を皆さまにお届けしたいと心から感じています。

全国の蔵元は、皆想いを込めて酒を醸しつづけています。いま世の中で楽しまれている日本酒は、きっと清酒が誕生してから最高の酒質レベルであると私は確信をしています。“好き”“嫌い”というもの差しでお酒を見るよりも、自分に“合う”“合わない”といったニュアンスでステキなお酒との出逢いをお楽しみいただければうれしいかぎりです。

5月中旬には『龍の落とし子』の田植えをして来ました。早くも23BY(酒造年度)に向けて始動しはじめた『十四代』です。

高木酒造株式会社
高木顕統

高木酒造
山形県村山市大字富並1826

           
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