ART│ジョン・ジェラード『Sow Farm』をラットホールギャラリーで開催
ART│仮想世界を取り込んだ作品で知られるアーティストの日本初個展
ジョン・ジェラード『Sow Farm』をラットホールギャラリーで開催
アイルランドとオーストリアを拠点に活動するアーティスト、ジョン・ジェラード(John Gerrard)による日本初個展『Sow Farm』が南青山のラットホールギャラリーで開かれている。2月28日(土)まで。
Text by YANAKA Tomomi
ハイパーリアリズム的な不気味さと崇高さをもちあわせる作品群
仮想世界を取り込んだ作品の制作で知られてるジョン・ジェラードは1974年、アイルランド生まれ。オックスフォード大学で美術・絵画の学士号を、シカゴ美術館付属美術大学で博士号を取得し、現在はオーストラリアのウィーンとアイルランドのダブリンを行き来しながらグローバルな活動を展開している。
ジョン・ジェラードの代名詞ともいえるのは、本来は軍事用に開発され、現在は主にゲーム産業でもちいられている「リアルタイム3Dコンピュータ・グラフィックス」を駆使した作品。地理的に弧絶した場所で稼動している農畜産業の姿を数千枚の写真をもちいたヴァーチャル3D映像化し、時の経過やそのほかの環境要素と合わせ、作品として世に送り出している。
本展は、個展のタイトルにもなった2009年の大型のプロジェクション作品『Sow Farm』と、2012年の映像ディスプレイ作品「Sunspot Drawing」の2作品で構成。アメリカ中西部に実在し、分娩をするために大勢の雌豚を収容した大規模な養豚場をモデルにした「Sow Farm」では、畜舎の周囲360度をゆっくりと旋回するカメラが24時間365日のサイクルで、畜舎のある風景を映し出す。
いっぽう、「Sunspot Drawing」は、アメリカの政治犯収容所のある場所としても知られるキューバのグアンタナモのとある道に夜明けから日暮れまで、ジョン自身が虫眼鏡を手もちで掲げつづけるシュミレーション作品。365日の時間経過にしたがって変化するものの、仮想上でしかない太陽光線が生み出す光の焦点の行方を私たちは目で追うように作品の本質へと導かれていく。
ハイパーリアリズム的な不気味さとある種の崇高さをもちあわせるジョン・ジェラードのアート。エネルギー問題や政治、経済、そして戦争といったテーマが強調され、現代社会を下支えしているグローバルな生産ネットワークの見えざる部分へと私たちの関心をいざなう。