ART FILE 26｜「Alaïa （アライア）」｜連載「世界のアート展から」

ART FILE 26｜フランス・パリ｜「パリ市モード博物館（ガリエラ宮）」

最高の技術と素材を施したクチュール

「Alaïa （アライア）」（1）

パリの16区に位置するパリ市モード博物館（ガリエラ宮 Palais Galliera）にて、ファッションデザイナーアズディン・アライア（Azzedine Alaia）の回顧展「Alaïa（アライア）」を来年1月26日（日）まで開催中。

Text by Winsome Li (OPENERS)

「ぼくは服を作る、女性はファッションを創る」

1936年、チュニジアのチュニスで生まれたアズディン・アライア。10代の後半に彼はパリへ拠点を移し、ファッションデザイナー、ギラロッシュの元で働く。1963年、プライベートクライアント向けのオーダーメイドデザイナーとして、自身のブランドを立ち上げた。当時の大物女優である、アルレッティ、ガレタ・ガルボなども彼の顧客。友人のティエリー・ミュグレーの勧めにより、1979年に初コレクションを発表した。

ヴェルサーチなど多くのデザイナーよりも早く、アライアは70年代末からレザー素材をクチュールに取り入れた。先駆者としてレザーの良さをセンシュアルなデザインで表現。レザーのほか、ニットやフェルトウール素材などもいち早く投入し、彼の独自な感性を駆使したさまざまなシルエットが誕生した。また、メタル素材を用いたハトメ、ファスナーなどもアライアのピースに欠かせないディティールになる。

アライアは服作りにおいて優れた技術を発揮した。パターンメイキングをはじめ、布でボリュームやドレープを造形し、裁断と縫製まですべてを手がける、天才なクチュリエだ。チュニスで彫刻を専攻した彼が手がけるドレープは、まるで彫像のような存在感だ。そんな彼のクリエションはいまでも世界中の女性を惹きつける。ミシェル・オバマ、ナオミ・キャンベル、ヴィクトリア・ベッカムなど数々のセレブリティが愛用している。

女性について、アライアは語る。「女性は女優である。常にステージの上にいて、いつでもキレイな状態でいらなければならない。服は女性の一部である、体に服を感じるはず。服に注目するように、女性に注目するべきだ。顔、体、手――服は女性のキャラクターを強調し、彼女を美しくする」

ART FILE 26｜フランス・パリ｜「パリ市モード博物館（ガリエラ宮）」

最高の技術と素材を施したクチュール

「Alaïa （アライア）」（2）

Text by Winsome Li (OPENERS)

クチュール界の天才

パリで初開催となる今回のアライア展は、彼のクリエイティブキャリアを代表する、厳選した70点のアイコニックな作品が展示される。初期の作品から近年のクチュールまでずらりと並ぶ。完璧なカッティングで表したエレガンス、繊細なドレープドレス、精密なダーツやシームで仕上げたシグネチャーのシルエット、アライアによるさまざまなクリエションを見られる貴重な機会となっている。

そして、メイン会場のガリエラ宮と繋がるパリ市近代美術館のアンリ・マティスの部屋（Salle Henri Matisse）にて、一部の作品が展示されている。アライアのクチュールは巨匠マティスの大作ペイント「La danse ou Lutte des Nymphes」と「La Danse Inachevée」（1931）と並列。ファッションとアートのコラボレーションにも注目だ。