ART FILE 24|「James Turrell」|連載「世界のアート展から」
LOUNGE / ART
2015年4月6日

ART FILE 24|「James Turrell」|連載「世界のアート展から」

ART FILE 24|アメリカ・ニューヨーク|「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」

“光”の建築家による独特な空間

「James Turrell(ジェームス タレル)」(1)

ニューヨーク市内に位置する、近現代美術の中心地と言われるソロモン・R・グッゲンハイム美術館にて9月25日(水)まで、米国人アーティスト、ジェームス・タレルの個展が開催中。ニューヨークで開かれるタレルの個展としては、実に1980年以来となる。

Text by Winsome Li (OPENERS)

“seeing yourself seeing(見ている自分を見る)”

ジェームス・タレルは「光の存在を意識する」ことを題材にして、自然の光、色、空間と人間の感知を操ってさまざまなインスタレーションを作り上げた。1960年代後半、光の具体性を表現した彼は高い評価を得て、現代美術の代表的なアーティストとなった。光のビジュアル的な、感情的なパワーを広く表現できるインスタレーションに生かした。

タレルはアートを通じて、光の存在を改めて教えてくれたといえる。
日常生活のなかで、光は物や場所を照らすという役割を果たしているが、光自体の存在はなかなか認識されていない。タレルは光をひとつの素材として、具体的に造形するのだ。彼の作品はオブジェクトや写真のように焦点があるわけではないので、観客は作品を見てそれぞれの形で感じとる。この過程によって、光に対する知覚を自然に蘇らせるというわけだ。タレルが言う“seeing yourself seeing(見ている自分をみる)”という、自分の意識を観察する状態に導くのだ。

今回の展示では彼の初期作「Afrum I (White)」、「lltar(1976)」などのほか、新しく製作した大規模なインスタレーション「Aten Reign(2013)」にも注目。著名な建築家のフランク・ロイド・ライトが手掛けた、グッゲンハイム美術館の代表的なロトンダ(螺旋状の円形)を光で演出する。自然の光が天窓から美術館に差し込み、館内に設置した巨大なLEDと円錐体の設置と合わせ、空中に浮かんでいる5つの楕円形の光を構成した。タレルは巨匠フランク・ロイド・ライトのデザインを斬新な演出で構成、作品について“光で構造した建築的な空間”と述べている。

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ART FILE 24|アメリカ・ニューヨーク|「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」

“光”の建築家による独特な空間

「James Turrell(ジェームス タレル)」(2)

Text by Winsome Li (OPENERS)

砂漠の死火山を最大のアートプロジェクトに

また、「Aten Reign」の構造はジェームス・タレルの最大規模のランド・アート「Roden Crater(ローデン・クレーター)」を参考したという。アリゾナ州のフラッグスタッフ市外に位置する、現在建設中の「ローデン・クレーター」は死火山から改造するアートプロジェクト。周辺の砂漠地帯より600フィートの高さにある「ローデン・クレーター」を、展示空間及び裸眼天文台に改造し、自然の光、太陽や天体の現象とリンクしたライト インスタレーションを設ける。本展には「ローデン・クレーター」の模型、設計図なども展示される。

また、下記の映像はグッゲンハイム美術館が本展のために製作したものであり、展示の様子はもちろん、ジェームス・タレル本人が自分のアートについて語ってくれる。

James Turrell 07

Afrum I (White), 1967

James Turrell 08

Prado (White), 1967

「James Turrell」
会場|ニューヨーク ソロモン・R・グッゲンハイム美術館
会期|6月21日(金)~9月25日(水)
開場時間|10:00~17:45 ※土曜日のみ19:45まで
定休日|木曜日
入場料|22.75ドル
住所| 1071 Fifth Avenue New York, NY 10128-0173
Tel. +1-212-423-3500
www.guggenheim.org

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