ART│ラットホールギャラリーにてガーダー・アイダ・アイナーソンの初個展
ART|さまざまな表現方法を駆使する、世界が注目するアーティスト
ガーダー・アイダ・アイナーソン展『I Am The Only Free Man On This Train』
東京とニューヨークを拠点に活躍するアーティスト、ガーダー・アイダ・アイナーソン氏による個展『I Am The Only Free Man On This Train』が8月2日(金)から10月6日(日)まで港区南青山のラットホールギャラリーで開催される。新作のペインティングやシルクスクリーン、立体作品が発表される。
Text by YANAKA Tomomi
“権力と反権力”の一筋縄ではない関係性を浮かび上がらせる
1976年にノルウェーで誕生したガーダー・アイダ・アイナーソン氏はペインティングや立体、コラージュ、写真、インスタレーションとさまざまな表現方法を駆使する気鋭のアーティスト。彼は、政治やポップカルチャー、サブカルチャーなどの幅広い領域からそこで機能している記号やシンボルを作品に取り込み、極端に拡大したり、一部分のみ切り取ったり、控えめに用いることで本来の意味を失い、実体をもたない空虚なものへと脱構築していくのだ。
タイトルが映画『ドクトル・ジバゴ』(1965年)でクラウス・キンスキー演じるアナーキストのセリフから引用された本展にアイナーソン氏は、アメリカの刑務所の独房内に設置されている懸垂用の棒を連想させる鉄製の立体作品や、郵便切手をモチーフにしたシルクスクリーンなどを出展。アウトロー像の神話や歴史への意識を強くうかがわせるほか、9.11以降のアメリカに顕著な管理社会下における「権力と反権力」の闘争への示唆が含まれた作品が並ぶ。
このほかにも、彼のこれまでの作品同様、権力構造への問いかけが埋め込まれている蛍光ピンクのアクリル絵具がカンヴァスを占める『Fluorescent Pink』シリーズの新作も発表。さらに、本展にあわせて『Fluorescent Pink』と『Stainless Steel(Fine)』のペインティングシリーズを収録したモノグラフも刊行されるという。
近年、北欧最大級の美術館として知られるノルウェーのベルゲン美術館での個展や北欧を巡回した展覧会などで注目を集めるガーダー・アイダ・アンナーソン氏。多彩な作品群から浮かび上がる“権力と反権力”の、一筋縄ではいかない関係性がある。