特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|恵比寿映像祭ってなんだ?
特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方
Introduction
恵比寿映像祭ってなんだ?
今年も「恵比寿映像祭」がやってくる! 5回目を迎えるこの映像祭は、世界のさまざまな映像表現を展示する“国際フェスティバル”である。2日間の休館日を除く、2月8日(金)から24日(日)までの15日間、18カ国80人の作品が恵比寿に集結する。ここではまず基本の「き」、第5回恵比寿映像祭とはどのようなイベントなのかをおさらいしたい。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
「映像とはなにか?」を探し求める場
第5回を迎えるこの映像祭。ごく簡潔に言えば、「映像とはなにか?」というひとつではない問いに対し、展示、上映、ライブ・パフォーマンス、シンポジウムなど、さまざまな角度から答えを探し求める場である。スタートしたのは2009年2月。“映像祭”という名称ではあるが、英語名に「Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions」とあるように、アートとオルタナティブな映像――つまり視覚に訴えるありとあらゆる表現を受け入れるという姿勢を、第1回の開催時からつらぬいている。
また本イベントが「公的なアートイベント」だというと、意外におもわれる方がいるかもしれない。主催するのは、東京都が運営する写真・映像専門の美術館である東京都写真美術館。東京から世界に向けて、質の高い文化を発信していこうという「文化発信プロジェクト」の一環としておこなわれる。そのため、入場料にくわえて、ほとんどのプログラムを無料で体験できるのだ(一部、着席数が限られているものは有料)。
ジャンルも世代もさまざまな顔ぶれが一堂に
国際フェスティバルというだけあって、毎年世界中から多数のアーティストを招聘している。今回も各方面からラブコールが絶えない、サラエボ出身のシェイラ・カメリッチや英ロンドン出身のジェレミー・デラーなど、いまもっとも旬なアーティストをはじめ、独ミュンヘン出身のヒト・スタヤル、英サマセット出身のベン・リヴァース、米カリフォルニア出身のハーモニー・コリンなど、すでに国際的に高い評価を受けているメジャー級アーティストが参加。また、川口隆夫や鈴木康広といったアートの領域だけにとらわれない活動を展開する気鋭の日本人アーティストまで、ジャンルも世代もさまざまな顔ぶれが名を連ねる。
アーティストが恵比寿映像祭の花形なら、影の主役ともいえるのが、学術的な側面からアーティストをサポートするキュレーターやプログラマーだ。それぞれ異なる専門性を持つ彼らは、本イベントでその本領をいかんなく発揮。作品の面白さが一番いい形で伝わることはもちろん、「訪れた人になにか“気づき”をもたらすような」(キュレーターの山峰潤也さん)会場づくりにも砕心する。そして、この「キュレーション」がなされている点は、恵比寿映像祭の特徴のひとつでもある。いまや、アートイベント自体珍しいものではなくなった。ジャンルも規模もさまざまなものが各地で開かれている。なかには、イベントオーガナイザーが集まって開催しているイベントも存在するなか、恵比寿映像祭は、フェスティバルという広く開かれた場を舞台に、専門性の高いプロの切り口をもって作品を紹介することを目的としているのだ。
「日記」というキーワードから探る映像の力
毎年2月に開催されている恵比寿映像祭。今年は2月8日(金)から24日(日)まで、12日(火)と18日(月)を除く15日間にわたって開かれる。総合テーマは「パブリック ⇄ ダイアリー」。「日記」をキーワードに、映像の力を考えていくというものだ。人が生涯をつうじて残す痕跡や記憶、想いを、時間は無情にも消去していく。しかし、映像があるから思い出せる、映像を残すことで忘れられる、あるいは、映像をきっかけにして、曖昧だったものがはっきり見えるようになったりすることも事実。わたしたちは、映像の力を借りることで、時間を再生し、俯瞰(ふかん)し、乗り越えることができるのかもしれない。
かりに、当事者の視点で記され、日づけや時間といった情報にまつわるものを「日記」とするなら、「日記」的な表現はあらゆる場所に見出すことができる。映像の世界に目を向けると、個人的なテーマで綴ったドキュメンタリーというのは、映像で綴る「日記」的表現。そして、出展アーティストのひとりであるアラーキーこと荒木経惟をはじめ、写真家たちによる日常のスナップショットもまた、写真で綴る「日記」的表現のひとつと言えるだろう。
もっと身近な話で言うならば、ブログやソーシャルメディアなど、近年では従来の「日記」に取って変わるものも存在する。プライベートな空間で、私的な出来事を綴るものだったはずの「日記」が、人の目に触れることを前提としたものに変わりつつあるのだ。そんなすこしずつ曖昧になってきているプライベートと公共の場。子どもから大人まで、会社員からアーティストまで、だれもがなんらかの形でかかわっている、普遍的なテーマといえる。今回の恵比寿映像祭では、この揺らぎにも似た領域に大胆に迫っていくのである。
<開催概要>
第5回 恵比寿映像祭 「パブリック ⇄ ダイアリー」
日程|2月8日(金)~24日(日) ※2月12日(火)と18日(月)を除く
時間|10:00~20:00 ※ただし最終日のみ18:00まで
※2月8日(金)、9日(土)、10日(日)、13日(水)、14日(木)、16日(土)、20日(水)、21日(木)、23日(土)は19:00~の川口隆夫パフォーマンスに伴い、一部鑑賞できなくなる作品があります。あらかじめご了承ください。
会場|東京都写真美術館/恵比寿ガーデンプレイスセンター広場/ザ・ガーデンルームほか
料金|入場無料 ※ただし、定員のある上映、イベントなどは有料
主催|東京都/東京都写真美術館/東京文化発信プロジェクト室(東京都歴史文化財団)/日本経済新聞社
<企画構成/会場>
[恵比寿映像祭 本会場]
展示|東京都写真美術館 3階+2階+地下1階 展示室ほか
上映|東京都写真美術館 1階ホール
シンポジウム|東京都写真美術館 1階ホール
レクチャー|東京都写真美術館 1階アトリエ
ラウンジトーク|東京都写真美術館 2階ラウンジ
[恵比寿映像祭 別会場]
ライブ・イベント|ザ・ガーデンルーム(恵比寿ガーデンプレイス内)
[恵比寿映像祭 屋外展示]
オフサイト展示|恵比寿ガーデンプレイスセンター広場(恵比寿ガーデンプレイス内)
[恵比寿映像祭共催プログラム 恵比寿近隣]
地域連携プログラム(共催)|恵比寿近隣文化施設およびギャラリーなど14施設
公式サイト
http://www.yebizo.com