写真家・植田正治へのオマージュ〜“砂”を背景にして|Levi’s® Made & Crafted™
LOUNGE / ART
2016年4月25日

写真家・植田正治へのオマージュ〜“砂”を背景にして|Levi’s® Made & Crafted™

Levi's® Made & Crafted™|リーバイス® メイド アンド クラフテッド™

2016SS最新コレクションで紡ぐファッションストーリー

写真家・植田正治へのオマージュ(1)

リーバイス®の歴史を踏まえたデザインに、現代の革新的な高品質素材と縫製技術を取り入れたモダンライン――それが「リーバイス® メイド アンド クラフテッド™」(以下、LMC)。カリフォルニアの砂漠からインスパイアされた2016年春夏コレクションを、フォトグラファーの田邊剛氏とスタイリスト坂元真澄氏のディレクションで撮影した。 “砂丘”での撮影が広く知られる写真家・植田正治へのオマージュである。LMCらしい、リアルかつ最先端のファッションストーリーをご覧いただこう。

Photographs by TANABE GoStyling and Direction by SAKAMOTO Masumi (The VOICE MANAGEMENT)Text by americaEdit by KASE Tomoshige

植田正治への思い

リーバイス®という“スタンダード”から生まれたブランド、LMC。毎シーズンさまざまなテーマのもとに先進的かつ実験的、それでいてリアルでウェアラブルなコレクションを発表し続けている。そんなLMCが2016年春夏コレクションのテーマに掲げたのが、砂漠である。

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

乾いた空気と強い日差しによりくっきりと浮かび上がる、荒涼としたロサンゼルス郊外の不毛地帯。日本人がイメージする“砂丘”とは少々趣の異なる風景ではあるが、空と大地のみが織りなすストイックなシーンという意味では、そのイメージは“砂丘”と呼んで相違ない。

そしてアートの分野において、多くの人が頭に思い浮かべる美しい“砂丘”の情景といえば、写真家・植田正治(1913〜2000年)の作品世界のそれではないだろうか。

1913年に現在の鳥取県境港市に生まれ、写真家を志して上京。写真学校卒業後間もない19歳のときに郷里で写真館を開業する。以降およそ70年におよぶ創作活動を、一貫して生地である山陰地方で行ったことで知られる、日本が誇る巨匠だ。

故郷の空、静謐な砂丘が広がる地平線を背景とし、被写体をまるでオブジェのように配置するという完璧に計算された植田の演出写真は、写真が誕生したフランスにおいても“Ueda-cho(植田調)”という日本語そのままで通用するという。

そんな植田正治にリスペクトを表する“オマージュ”でありながら、今の時代感やトレンドエッセンス、クリエイターとしてのオリジナリティ、そしてLMCの魅力と個性を十二分に表現できるファッションストーリーを――――それが撮影の要諦であった。このミッションを実現するにふさわしい人物として撮影を依頼したのが、フォトグラファーの田邊剛氏とスタイリスト坂元真澄氏。いずれも植田の“砂丘”写真に大きな影響を受けた、気鋭のクリエイターである。

そんな二人によるストーリーの幕開けは、バックスタイルの美しいジーンズと、ポケットのアーキュエットステッチ(実際にはステッチではなく加工により表現されたもの)、そしてアンティークのチェアや傘、ハットなどの小道具が散りばめられたカット(画像トップ)だ。砂丘と空の境界線、ソリッドな風景、意味深な小道具と人物の動きによって、見る人それぞれのストーリーを喚起させる。

そしてどことなく“昭和”が香る、クラシックな欧州製の軍用自転車と、ハットという共通項を持たせた男女のポートレイト(画像2枚目)。シンプルな服だからこそ、二人の微妙な距離感や表情が引き立つのではないだろうか。

広大な砂漠に配置された、男2、女1という不思議な組み合わせのカット(画像3枚目)では、人物の距離は遠く、向かう方向もまちまち。すでに時代と場所はあやふやなものになっている。この先どんなストーリーが展開されるのか、ページを繰っていこう。

リーバイス メイド アンド クラフテッド

Page02. 自然のバックグラウンド

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リーバイス® ダブルエックス

Tel. 03-6418-5501(9:30~18:00|土・日曜休)

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写真家・植田正治へのオマージュ(2)

自然のバックグラウンド

「今回の撮影は植田正治さんへのオマージュですが、どのようにして現代的なニュアンスを伝えるかがポイントだと思いました。今のモデル、そしてLMCのモダンな服を通じて、植田さんの時代から現代へとつながるような砂丘の写真を撮れたら、と考えたのです」と語る坂元真澄氏。鳥取で暮らしたことがあり、早くから植田写真に魅了され、実際に鳥取を舞台に“植田オマージュ”の撮影を行ったこともあるというクリエイターだ。

田邊剛氏も、植田を強くリスペクトする実力派フォトグラファーのひとりだ。「なぜ砂丘で撮ったのか? それは、近所に砂丘があったから──という植田さんの言葉が印象に残っていたんです。スタジオのようになにもない、“天然のバックグラウンド”として砂丘を背景に使いながら、構図や人物の配置、遠近法や小道具の使い方まで徹底的に演出された植田さんの写真。それに対して、砂丘に映える強い顔のモデルたちをキャスティングして、くすっと笑ってしまうくらいのファンシーさとストーリー性を表現する自分らしい演出を“天然のバックグラウンド”で繰り広げる。そんなイメージで撮影を行いました」

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

オリジナルへの強い敬意を持つクリエイター同士、実に細かく、慎重に植田正治への“オマージュ”を作りこんでいった二人。特に植田の生地である鳥取に縁のある坂元氏は、ロケ地やモデルの選定、設定や小道具、ストーリー運びに至るまで、入念な準備と思索を繰り返した。もちろんLMCのコーディネイトについては、言うまでもあるまい。

ハットに丸眼鏡。やはり“時代”を強く感じさせる小物の演出と、コントラストの強いモダンな服とのマッチング。そしてピントがボヤけるほど距離を感じる人物と自転車により、広大な“砂丘”の空虚さが際立つポートレイト(画像トップ)は、モノクロ写真の力強さが伝わる一枚。そしてその自転車を振り返るような人物のカット(画像2枚目)は、自転車がこのストーリーにおいて果たす役割と意味合いを象徴しているかのようだ。

やはりハットに丸眼鏡という共通項によって一体感を漂わせるポートレイト(画像3枚目)では、女性らしい強さと洗練されたセンス、成熟したメンタリティ、シンプルにして存在感抜群なLMCの服の魅力を見事に表現。また背景遠方に佇む男性の直立不動の姿勢と視線が、独特の違和感を生んでいる。

女性のポートレイト(画像3枚目)と正反対の方向から撮られたような構図の男性のカット(画像4枚目)は、一転して動的でコミカルなポーズに。雨が降らずとも傘をさし、誰に対してかハットを脱ぐ。朽ちた切り株をステージに見立て、その上でおどけてみせる役者のような立ち居振る舞いが、ソリッドな服とのコントラストを生む。そしてスモーキーな空と乾いた“砂丘”、そして傘のネイビーは、LMCのブルゾン、Tシャツ、ジーンズのコーディネイトとシンクロしている。

Page03. 色彩のない世界にあるもの

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写真家・植田正治へのオマージュ(3)

色彩のない世界にあるもの

かすかに感じる風に耳を澄まし、薄曇りの水色の雲に溶けていくような、ノースリーブのロングシャツをまとう女性のポートレイト(下画像右上)。闇のようなブラックと、シャンブレーのような淡いトーンのコントラストが絶妙である。ブルージーンズもウォッシュ感のあるものを選ぶことで、背景とも調和するカラーパレットが完成した。

雲と空と“砂丘”と。三層を織りなす、大自然の柔らかなペールトーン(下画像右下)。“天然のバックグラウンド”は、刻一刻と変化し、無限の表情を見せてくれる。静かな世界の中で、足跡のみが“人”と“生”を感じさせてくれる。

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

ペールブルーと白は、空。ベージュと黒は、砂と日陰。服と自然が見事な調和を見せる男2人のポートレート(上画像左上)は、サングラスで目を隠すことでアノニマスなものに。人物をオブジェのように捉える、植田写真に通ずる画作りだ。

ここまでの物語のなかで印象的な存在であった、アンティークチェアと3本の傘(上画像左下)。傘とチェアを残して消えた3人はどこへ向かったのか。なぜ3人の足跡がないのか。さまざまな謎を残す情景のなかで、“砂丘”に刻まれた風紋が悠久の時の流れを感じさせる。

そして今回のストーリーのクライマックス(下画像)へ。“砂丘”という“天然のバックグラウンド”に突如出現した、巨大な布を使った“人工のバックグラウンド”と、その境界に佇む彼ら。思い思いの場所で強い個性を放ちながら、絶妙な距離感で調和し、美しい旋律を奏でるような構図が素晴らしい。

時代も国も超越するようなニュートラルさで繰り広げられた、モダンでユニークな男女たちのストーリー。リアルなファッションというフィルターを通して、今、植田正治に捧ぐオマージュがあるとすれば、きっとこれ以上のものはないはずだ。同時に、今季のLMCがイメージする微妙なトーンや光のコントラスト、柔らかい砂のようなテクスチャーを、余すところなく感じ取っていただけたのではないだろうか。

自転車や傘など、意味があるようでない小道具たち、濃いキャラクターと人間味があるようでないモデルたち、さらに意図があるようで実はただの“バックグラウンド”にすぎないロケーション。極限のシンプルさが強さへと昇華するLMCの服のように、このストーリーも、実は“メッセージがない”という強いメッセージが込められているのかもしれない。

02|リーバイス メイド アンド クラフテッド

田邊剛|TANABE Go
フォトグラファー。1981年生まれ。千葉県出身。文化服装学院スタイリスト科を卒業後、写真家・富永よしえ氏に師事。2005年に独立し、多くの雑誌や、広告、ミュージシャン、俳優などの撮影で活躍。状況によりデジタルカメラを駆使しながらも、フィルムが持つ独特の質感や空気感にこだわり、人物のキャラクターやエモーション、刹那的情景の魅力をストレートに伝える“強い”写真を撮る。本撮影のキーパーソンである植田正治は、「最も好きな写真家の一人」。

坂元真澄|SAKAMOTO Masumi
スタイリスト。1975年生まれ。ELLE専属スタイリストのアシスタントを経験後、スタイリスト祐真朋樹氏に師事し、2001年に独立。ファッション誌、広告、カタログ、ミュージシャン、タレント等のスタイリングを幅広く手掛け、その審美眼と切れ味鋭い独創的なスタイリングで高く評価されるクリエイター。日本の伝統、ミリタリー、植物等への造詣が深い。10代の数年間を、鳥取県で過ごす。当時は身近なものであった”砂丘”だが、現在、あらためてそのすごさを実感するようになったという。The VOICE MANAGEMENT所属。

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