「Tomato」メンバーが語る、東京を選ぶ理由とは|INTERVIEW
THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”
「Tomato」25周年記念イベントを東京・渋谷で開催(1)
稀代のクリエイティブ集団「Tomato」が、結成25周年を記念したイベント『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』を東京・渋谷のパルコミュージアムで開催中だ。今回、このイベント準備のためメンバーのジョン・ワーウィッカー(John Warwicker)、サイモン・テイラー(Simon Taylor)、ジョエル・バウマン(Joel Baumann)が来日。日本人唯一のメンバーの長谷川踏太も加わり、滅多に並ぶことのない4名の顔ぶれを前に、「Tomato」と東京という都市の関係について話を聞いた。
Photographs by KOMIYA KokiText by ASAKURA Nao
「Tomato」を支持してくれる東京に、お返しの意味も込めて
――なぜ、東京・渋谷で25周年記念の大きな取り組みをしようと思ったのですか?
サイモン・テイラー (以下、サイモン) 数年前からジョンと作品のアーカイブの整理していて、25周年を記念してとりあえず書籍を作ろうということになった。その後、せっかくだったら展示もやろう!、と話が大きくなるにつれ仲間が増え、プロジェクトが大きくなっていったんだ。
ジョン・ワーウィッカー (以下、ジョン) 最初に来日したとき、偶然たどり着いたのが渋谷だった。渋谷には縁あって来る機会が多いし、渋谷を象徴するファッションビルであるパルコに僕らも足しげく通っていた。古くから繋がりのあるパルコに「25周年記念のイベントをやらないか」と提案されて、ここ(日本)には僕らを支持し、親切にしてくれる人が多いから、そのお返しという意味も込めてやることにしたんだ。
――非常に多くのコンテンツが用意されていますが、どこが見どころですか?
サイモン 「Tomato」はこれしかやらないとか、これに強いというのはなくて、色んなことができるのが特徴。だから階を分けて、いろいろな作品をさまざまな形式で展示して、アナログもデジタルもありっていう、自分たちの幅の広さを表現したかった。全部見どころだよ!
日本人のクラフツマンシップに刺激を受けている
――表現活動において日本文化から影響を受けることが多いとありますが、作品のなかに日本からのインスピレーションが息づいているものがありますか?
ジョン 日本人のものをつづけながら新しい技術を開発していくという職人魂やプロセスの取り組み方には刺激を受けているね。
サイモン 間だったり、ものをつくっていく流れは独特の美徳。欧米の文化を取り込んで日本独自のスタイルに翻訳する力はとくに優れていると思う。その国その国でオリジナルの感性をもっていて、呼応し合うものとそうでないものがあるけれど、日本は感覚が僕らと近いと感じるね。
――最初に来日されたとき(1985年)から、今日までのおよそ30年で東京はどう変化したと感じますか?
サイモン 1985年から1995年は、日本のファッションが凄まじく成長した時期だった。イッセイ ミヤケやヨウジヤマモトのようなモードは既にあったけど、ストリートファッションがどんどん広がって、アジアの国ぐにが揃って日本の若者のファッションの真似をするようになった。日本がアジアの国のひとつから、世界のトップクラスに成り上がっていく課程を見られたのはおもしろかったな。
――逆に変わっていないところはありますか?
ジョン 安定感。時間の流れがゆっくりで、静かなところ。
ジョエル・バウマン (以下、ジョエル) いつ来てもクリエイティブに刺激を受けるところ。繊細な技術を生かしてあたらしいものを生み出そうとする姿勢には感心するよ。食事なんかにも日本人らしい繊細なテクニックが息づいていて、いつ来てもあらたなおいしいものを発見できるんだ。
――今回の来日で何かおもしろいものを見つけましたか?
ジョン 数日前に到着してからずっとここ(パルコ)に缶詰めだからほかに何も見れていないんだよ(笑)
ジョエル 渋谷のホテルに泊まっていてるんだけど、あの狭い空間を最大限に生かす技術は素晴らしいね。ドイツだとトイレだけで結構な場所をとるけど、日本のホテルは設計が細かく計算されているとおもう。
Page02. 少数精鋭主義であること
THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”
「Tomato」25周年記念イベントを東京・渋谷で開催(2)
少数精鋭主義であること
――「Tomato」の今後の展望(プラン)は?
サイモン 組織を巨大化したり、チームとして何か大きなことをやるというよりは、ひとつのことを掘り下げていく方向。25周年を記念する巨大な出版も控えているから、やらなければならないことがそこかしこにたくさんぶら下がっているね。
――日本の若者や、次の世代に期待していることはありますか?
サイモン 昔に比べてひとが国を行き来することも多いし、世界がオンラインで繋がっているから、どこの国のひとだからこうっていう区切りがなくなってきている。そういう意味で、自分たちがどう次の世代に影響していくか、課題でもあるし楽しみでもある。
ジョエル とにかくプロセスを大事にしながら、たどり着くべきところにいかにたどり着くか。デザインにしろ何にしろ、課程を学ぶことが一番大切だね。
短いインタビューのなかで感じたのは、彼らがいかにクラフツマンシップを大切にしているかということ。最先端のメディアやアートといった、時代とともに目めまぐるしく変化していく分野に携わるがゆえに、消費されず、コツコツと積み立てていくべき技術こそが、信頼できるパートナーなのだといわんばかりである。日本人の変わらない職人魂、時間の流れの静かさこそが、世界の「Tomato」を魅了しつづける所以なのだ。
THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”
会期|2016年4月3日(日)まで
時間|10:00〜21:00
メイン会場|パルコミュージアム(渋谷パルコ PART1・3F)、ギャラリーX(渋谷パルコ PART1・B1F)
東京都渋谷区宇田川町15-1
入場料|一般500円・学生400円・小学生以下無料
Tomato|トマト
1991年にロンドンで発足。先駆者として知られるアーティスト、ミュージシャン、デザイナーとクリエイティブ思想から構成され、デジタル世紀の先導者としてグラフィック、バーチャルメディア/デザインの最先端を常に走りつづける。現在メンバーは、ロンドン、メルボルン、東京、カッセル(ドイツ)と、世界中の都市に分散し、メディアデザイン、映像、ブランディング&CI、ファッションデザイン、近代彫刻&都市建築設計、実験的コンピューターグラフィック、ファインアートなどの分野で作品を発表。タイポグラファー/アーティストとして知られ、外国人として初めて東京タイプディレクターズクラブの会員にもなったジョン・ワーウィッカー、Work Not Workのファッションブランドも立ち上げているサイモン・テイラーや、音楽の分野ではKarl HydeとRick Smithから成る世界で最も影響力のあるエレクトロニック・アーティスト、アンダーワールドが在籍することから日本での知名度も高い。
パルコミュージアム
Tel. 03-3477-5873
http://www.parco-art.com