ART|アルド・バッカー『Time&Care』展
沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)氏インタビュー
スフェラ・エキシビションにて『Time&Care』開催
デザインにおける「人間らしさ」と「非人間的な面」の境界の探究をつづけ、世界中で高く評価されているオランダのデザイナー、アルド・バッカー。アジア初の個展『Time&Care』展が、京都市・東山のスフェラ・エキシビションにて2月3日(金)から2月26日(日)まで開催される。
Text by MATSUDA Natsuki(OPENERS)
モノの存在を問うデザイン
近年、国際的な活躍が目立っているオランダのデザイナーたち。なかでもアルド・バッカーは、その独特な造形で強い個性を放つプロダクトデザイナーだ。「ミラノ・サローネ」、「デザイン・マイアミ」を始めとするヨーロッパの重要なデザイン・イベントで紹介され、英デザイン誌『Wallpaper*』の「Design Awards 2011」を受賞するなど、着実に評価が高まっている。
今回開催される『Time&Care』展は、漆を用い、職人の手仕事により仕上げた代表作「Urushi series」ほか、幅広い作品をアジアで紹介する初めての個展だ。自分を表現する素材として完璧で、人工的なかたちを作り出せる「非人間的」なガラスを選び、視覚的な分かりやすい「人間らしさ」から距離を置き、緊張感のある作品を輩出してきたアルド・バッカー。人間味のある手法と、ある種完璧で人工的な造形とのコンビネーションこそ彼のテーマだ。そして、ガラスを用いた創作におけるすべての可能性を追求し、自身のガラス作品のベースを完成させたのち、木を用いた家具デザインに立ち返る。
自身の創作について「私の作品は、永遠に終わりのなさそうな、とてつもなく時間のかかるプロセスによる結果であり、デザインは、“形の贈り物”による仕事だと思っている。この考えは、“クリアなコンセプトがあれば、自動的に興味深いフォルムへ繋がる”という現在のデザインの常識とはそぐわないだろう。近年、“本物志向”や“オリジナリティー”という単語は、雑な使い方をされているように感じる。私自身の言葉の用い方、それを作り上げるフォルムにおいては、これらの言葉と厳密に向かい合うようにしており、私は自分のデザインがそれぞれ“自立した単体”であると判断した時のみ、物理的な実態を与える」
「Urushi series」のデザインは、このような自問に対するはっきりとした意思表明であり、彼の活動における新たな礎となった。素材への愛と終わりなき技術の追求により、人びとのさまざまな感覚を呼び覚ますことを目指し、彼のデザインは「非人間的」な存在感、すなわちモノ自身の存在を問うている。
アルド・バッカー|Aldo Bakker
1971年 オランダ生まれ。ジュエリーデザインの技術を習得したのち、ガラスを中心に創作活動を始める。アムステルダムのレストラン『Zuid-Zeeland』のインテリアデザインや、オランダのデザイナースクール『Design Academy Eindhoven』で教鞭をとるなど活動の幅も広い。
www.aldobakker.com
『Time&Care』展
期間|2012年2月3日(金)~2月26日(日)
時間|11:00~20:00 (入場は閉館の30分前まで)
会場|スフェラ・エキシビション
京都市東山区縄手通り新橋上ル西側 弁財天町17 スフェラ・ビル2F
休館日|水曜日
入場無料
http://www.ricordi-sfera.com/index.html