INTERVIEW|ドラマ「不毛地帯」プロデューサー長部聡介氏インタビュー(前編)
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2015年3月5日

INTERVIEW|ドラマ「不毛地帯」プロデューサー長部聡介氏インタビュー(前編)

ドラマ「不毛地帯」プロデューサー長部聡介氏インタビュー(前編)
commmonsより「不毛地帯」オリジナル・サウンドトラック発売

ドラマを象徴するメインテーマとは

2010年3月11日に全19回の最終回を迎えたフジテレビ開局50周年記念ドラマ「不毛地帯」。回を追うごとに評判が高まっていったこのドラマのメインテーマ「FUMOCHITAI」は、ご存知、坂本龍一氏のオリジナル楽曲。commmonsより「不毛地帯」オリジナル・サウンドトラックが2月17日に発売されたのを記念して、同ドラマのプロデューサー長部聡介氏に話を聞いた。

Text by OPENERS

19本の連続ドラマの世界観やテーマ性を理解・解釈できる音楽家を

──長部さんと坂本さんの接点は?

僕はフジテレビでのスタートが歌番組で、『夜のヒットスタジオ』のときに坂本さんのパリからの中継を担当したり、『HEY!HEY!HEY!』でGEISHA GIRLSにかかわったりして、坂本さんと仕事をさせていただきました。アーティストとして興味があるのはもちろん、おもしろいひとだなと思っていましたね。歌番組からドラマに移って、いつかは坂本さんに音楽をお願いできるドラマ作品に携わって、そのテーマにあった曲を書き下ろしてほしいと思っていました。

──それが「不毛地帯」で合致したと

そうですね。YMOのころから坂本さんのさまざまな活動をフォローしてきて、坂本さんはクラシックからロック、ポップスまでいろんな引き出しがミックスしていて、とても刺激的なアーティストだと思っていました。今回の「不毛地帯」も、原作の重厚感はもちろん、世界を飛び回る空間的な大きさや、戦後のエネルギッシュさなど、さまざまな要素が詰め込まれた作品で、音楽はドラマの象徴ですから、ストーリーを映像化するにあたって、一面的な切り口ではない音楽を求めたかった。戦争や経済成長、会社や家庭など、19本の連続ドラマの世界観やテーマ性について理解・解釈していただける音楽家は教授しかいないと、企画書をつくってお願いしました。

──企画書はいつごろ出されたのですか?

2008年の夏ごろでしたね。「不毛地帯」のドラマ化の話自体は3~4年前に挙がっていて、開局50周年記念企画として、通常のドラマの倍の2クールでいこうと。

──坂本さんの反応はいかがでしたか?

「興味はある」という返事をいただいて、お会いして内容を説明しました。坂本さんは、「私たちが生きていくなかで、国家と個人、国のありようとひとの生き方に軋轢があるというのは、時代が変わっても普遍的なテーマだろう」とおっしゃっていたのが印象的でしたね。

──映画のサントラと、ドラマの“メインテーマ”はちがいますよね。

映画のサウンドトラックの場合は、シーンごとに音楽をつけていきますが、今回、教授に依頼したのはドラマのメインテーマで、1曲でテーマを表現するものです。また、ドラマのなかでどのような使われ方をするか事前にはわかりません。この「不毛地帯」は、ひとの苦痛や苦労、戦争に対する悔恨や責任、家族に対する愛情や、仕事に向ける情熱など、いろんなエモーショナルなものが詰まっていて、19本という長いドラマの時間のなかで、「いろんなバリエーションで表現していきたい」と教授にお願いしました。

──メインテーマができあがってきていかがでしたか?

とても大人な曲だなというのが第一印象でした。私の思いやオーダーを全部踏まえてつくっていただいたオリジナル曲でした。

──まわりの評判は?

まず、テレビドラマの楽曲を教授が書き下ろすということ自体に反響が大きかったですね。連続ドラマは最終回に向けてヒートアップしていきますが、ドラマのスケール感を表現した曲なので、音楽が場面場面でどんどん印象的になっていく。「かっこいいね」という反応が多いですね。いわゆる主題歌ではないので、いかに内容とリンクして視聴者に伝わるかがポイントです。終わったときに「おもしろかった」というのがいちばんうれしいです。

──フジテレビのドラマは音楽のセレクトが上手な印象があります。

プロデューサーという立場で音楽にアプローチする場合は、ドラマの全体的なイメージやパッケージ、そのドラマをどういうふうに打ち出していくかという発想が重要で、ドラマの価値を上げていくことも大切になります。

ドラマ「不毛地帯」プロデューサー長部聡介氏インタビュー(後編)につづく

長部聡介|OSABE Sousuke
1987年フジテレビ入社。『夜のヒットスタジオ』のADを経て、『HEY!HEY!HEY!』スタートからかかわる。ドラマに異動して『美女か野獣』、『離婚弁護士』、『医龍』などの人気ドラマのプロデューサーを歴任。

「不毛地帯」オリジナル・サウンドトラック
2010年2月17日発売
RZCM-46489
commmons
2800円

commmonsmart「不毛地帯」特集
http://www.commmonsmart.com/special/sp17_1.html

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