今森光彦×幅允孝Talk Show|New BMW GRAN TURISMO@BMW Studio ONE 03
Chapter 10 Talk Show “Nature”
第4回トークショウ 「カルチャー」 今森光彦×幅允孝 03
──切り絵の話が出ましたが、じつは今森さんは切り絵の名人で、切り絵の本も出してらっしゃるんですよね。今日はここで実演していただけるそうです。切り絵はいつごろからやってたんですか?
(今森さんハサミと折り紙を手に取りおもむろに切り紙をはじめる)
今森 小学校1年生から5年生までやってましたね。それから30年のブランクがあって、あるときうちの子どもにクリスマスの飾りつけを作ってあげたんです。そしたらえらいよろこびましてね。普段私の写真をほめることなんてないんですが、これはすごいと感動してました。それから再開してまた10年近くつづけてます。あっこれハサミがよくないですね(笑)。
今森 はいできました。
(今森さん見事なチョウチョの切り紙を披露、会場から拍手が沸き起こる)
──いやぁすごい。なんか嫌になっちゃいますね。なんでそんなになんでもできちゃうんですか。
幅 そう、僕もはじめて今森さんの切り絵の本を見たときびっくりしましたよ。写真だけじゃないんだって。
今森 でも僕の写真の原点だと思います。形へのこだわりですよね。対象をよく観察して立体視しないといけないから、写真とよく似ていると思います。それから僕は自分の見たものしかひとには伝えられないから、切り紙のモチーフも自分が見たものなんです。ちなみに私の切り紙は「チョウチョ」じゃないんですよ。「なんとかアゲハ」とか「なんとかシジミ」とか。いま作ったのは「カラスアゲハ」。チョウチョだけでも200種類作れます。
幅 えーっそれはすごい。じゃあ「オオムラサキ」お願いします!
今森 まかせとけ、みたいなね。あはは。
──今森さんの写真見てると田んぼとか昆虫とか、切り絵もそうですけど、今森さんの好奇心や好きなものを共有したいという気持ちが伝わってきますね。
今森 そうですね。僕の場合は博物学的好奇心ですね。俯瞰でものを見わたす博物学的視点で、ひとりのナチュラリストがおなじ場所でものを見つづけるとこうなるという、ひとつのものの見方の提案だと自分では思っています。
幅 それってすごく大事なことですよね。僕も自分の読んだ本しかひとに薦められないし、こういう仕事をしているのも自分が感動したものをひとにも教えたいという共有欲みたいなものです。ひとから与えられた整理された情報を九九を覚えるように覚えていくのではなくて、自分の目で見て、調べていくうちに興味がひろがっていく。それがものを知るよろこびだと思います。知らないものにどう出くわすかが重要だと思うんです。そういう広がりって計算してもできるものではないし、贅たくなことですよね。
今森 本は出会いが大事ですよね。
幅 そうですね。今ってものの知り方がワカサギ漁的になっていて、ネットでぴゅっと釣り上げた情報はどうしても断片的になりがちで、その釣り上げた穴と穴がつながり合っていなかったりしますよね。でも本来はなにか情報を得たときに、知ってそこでおしまいではなくて、自分の頭の中にそのつながりをマッピングできるかどうかが大事だと思うんです。
──心象風景みたいなものですよね。旅をしていても頭をからっぽにして色んなものを発見していく旅ってありますよね。それと似てますね。
幅 そう、こことそことあそこを回って、それをスタンプラリーのように証拠を残していくような旅ではなくて。
- 第4回トークショウ 「カルチャー」 今森光彦×幅允孝 01
- 第4回トークショウ 「カルチャー」 今森光彦×幅允孝 02
- 第4回トークショウ 「カルチャー」 今森光彦×幅允孝 03
- 第4回トークショウ 「カルチャー」 今森光彦×幅允孝 04
問い合わせ先|BMWカスタマー・サポート 0120-55-3578 (年中無休 9:00-20:00)