第4回:森山大道氏とのトークショー その1
第4回:森山大道氏とのトークショー その1
今回は、10月21日にラットホールギャラリーで行われた、森山大道×北村信彦のトークショーの模様をお伝えします。
ある種、恋にも似た展覧会
MC●まずこの『it』と名付けられた今回の展覧会用の写真をご覧になったとき、北村さんはどんな印象をおもちになりましたか?
北村●最初、森山さんの方から四つ切りのプリントを見せていただいたんですが、見た瞬間に配置まで決まりましたね。
もちろん作品ひとつひとつのイメージも強いんですが、トータルの世界観として、どこかしっとりエロティックで、モダンで、でも通して見るとロマンティックという、僕にとっての森山さんの世界が凝縮されていました。“なるほどitってそういう意味だったんだな”と思いましたね。
森山さんは、この『it』というタイトルに対しては、どういう思いだったんですか?
森山●子供の頃から、父が誰かを見たときに、よく「この人はitだな」というようなことを言っていたのを聞いていました。子供心に、itってなんだろう?と思っていましたが、そのうちに、1920年代の映画『it』に由来する言葉で、僕の父ぐらいの世代にとっては、とてもリアルに使っていた言葉だということがわかりました。
そして、僕はずっと、その『it』という言葉から発せられる、ある種エロティックな語感がいいな、と思っていました。だから今回のお話を聞いたときも、まずこの言葉が浮かんだんです。
もちろんチョイスに関しては、タイトルから選んだわけではないんですが、写真を選んでいく過程で、やっぱり僕の中にも『it』な気分がありました。
あと、これはご本人を目の前にしていうのは照れくさいんですが、今回の展覧会は僕としては、はっきりと北村さんに向けて選びました。最初にこのギャラリーで、展覧会をやりたいというお話をいただいたときから、とにかく北村さんに向けようという、その一点でしたね。
しかし、ある特定の人に勝手に思い込んで向けるというのは、自分で規制にかかっちゃう分、実は難しいんですよ。ですから、今回のセレクションは、おもしろかったけど難しかったですね。
北村●久々に、全身に鳥肌が立ちましたよ。
ヒステリックグラマーに感じる『it』な部分
MC●北村さんとしても、このラットホールギャラリーの第一回目の展覧会は森山さんで、と決めていらっしゃったんですよね?
北村●ヒステリックの写真集出版活動の次のステップとして、このギャラリーがあるんですが、そもそもその出版活動も『青DAIDO』があっていまがある、というのが僕たちの正直な気持ちです。ですから、やっぱり一回目は森山さんしかいないでしょう、ということで、お願いしたわけなんです。
森山●僕としても、うれしかったですね。もう20年近い付き合いになるわけですが、僕はヒステリックグラマーというブランドにまつわるすべてが好きなんです。事務所に行ったり、デザインルームにお邪魔したりすることもあるんですが、ワクワクするんですよね。僕自身がそういうものがもともと好きだし、ヒステリックグラマーというネーミングも好きですね。それこそ『it』な部分を感じます。
そういう意味では、僕の写真の中でも、全体として多少グラフィックなチョイスにはなっています。グラフィックという言葉の中には、センセーショナリズムとかスキャンダリズムというニュアンスも入っている気がしますので、そういう広い意味でのグラフィックな展示をしたいと思いました。
MC●作品はすべてここ数年で撮影されたものなんですか?
森山●基本的には、ここ2、3年で撮った、未発表の作品です。半分近くが、展覧会などで海外に行ったとき、散歩がてら撮ったもの。残りが、池袋や新宿や原宿などで打合せの合間などで撮ったものです。そういうもののネガを全部ひっくり返して、さっきお話したようなカタチに修練していったのが、今回の写真というわけです。
■森山大道展「DAIDO MORIYAMA it」
日程:2006年10月13日(金)~11月19日(日)
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581
●森山大道サイン会開催
11月4日(土) 16:00~17:00
詳細は、www.ratholegallery.comをご覧ください。