第5回:森山大道氏とのトークショー その2
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2015年4月17日

第5回:森山大道氏とのトークショー その2

第5回:森山大道氏とのトークショー その2

10月21日にラットホールギャラリーで行われた森山大道×北村信彦のトークショー。話は、ウォーホルから森山氏自身の作品におよんで……。

Photo by FUKUDA Emiko

アンディ・ウォーホルを巡って

MC●ところで、今回の展覧会ではアンディ・ウォーホルのポスターを撮ったものなども入っていますが、ヒステリックグラマーも、ウォーホルのファンデーションと契約なさったんですよね?

北村●ええ、昨年、ニューヨークのアンディ・ウォーホルファンデーションから、日本における本格的なアパレルラインを展開したいのだが、それをコントロールしてくれないか、という話がきました。
でも、僕としては、この話以前にファンデーションが展開している商品なども見ていて、正直いってすごくもったいないというか、それに対するアンチな気持ちがあったのも事実です。

ですから、最初はお断りしようと思ったんですが、よくよく考えてみると、僕が学校を卒業して以来、ずっと彼の考え方は参考になっていましたし、あのファクトリーの空間が、いまでもカッコいいと思っている自分がいたんです。そして、いま自分がここで断ってしまったら、たぶん後悔するだろうし、他の人のところに話がいくぐらいなら僕がやってやろうと思い、今年から展開することになったんです。
実はかつて僕の友人に、ニューヨークで僕がデザインした服を着ていたら、それを見たウォーホルに褒められたという話を聞いて、アポイントもなしに会いに行ったことがあるんです。毎日クラブをまわって知っている人を探しました。

第5回:森山大道氏とのトークショー その2

Photo by FUKUDA Emiko

そして、ようやく彼を知る人と巡り会えて、次に会う約束を取りつけたんです。でも、結局そのまま彼に会うことはできませんでした。僕が日本に帰国した翌月の2月22日、彼は亡くなってしまったんです。そういうことも全部思い出して、決断しました。

話は戻りますが、今回の展覧会のための写真を最初に森山さんに見せてもらったとき、ウォーホルのイメージが入っていたので「あ、ちょっとイタズラされちゃったな」とうれしく思いましたね。

森山●やっぱり、入れとかなきゃね。僕もウォーホルは大好きで、見かけると必ず撮っちゃうんですが、今回の展覧会は、それを出せる貴重な機会だと思ったので出させていただきました。いくら好きでも、そうそう出せるチャンスはありませんから。

しかも、僕と北村さんの共通項を感じる部分です。実は僕も、1971年にニューヨークを初めて訪れたとき、横尾忠則さんから「一緒にファクトリーに行く?」と誘われたんです。もちろん当時からファンでしたが、ファンていうのは、いざとなると会いたくないという変な心理があって、結局断っちゃったんです。いま考えると、ファクトリーに行けた唯一のチャンスでした。本当に残念ですね。

Photo by FUKUDA Emiko

なにが写っていても森山大道を感じる写真

MC●今回は、この展覧会に合わせたTシャツも製作されいますが、北村さんが、まずピンとこられた一枚が、この『目』の写真だったということですね?

北村●そうです。Tシャツにするならコレしかないでしょう。自分でも着たいな、と思いますし。

森山●北村さんが、まずこの『目』の写真と、もう一枚『ドット』の写真を好きだといってくれたので、この展覧会のセレクトは間違ってなかったな、と思えましたね。僕自身も大好きな写真ですから。

北村●森山さんの写真は、実際には音なんて鳴ってないんですが、シャッターを切る音や物語まで感じられます。同時に、写っている被写体以外に人の存在を感じるんです。それを感じられるか感じられないかが、僕にとっては非常に重要で、森山さんの場合は、便器を撮ろうが、花を撮ろうが、そこに森山大道という人の存在があるんですよ。

森山●僕の写真に音を感じてくれるというのは、すごくうれしいですね。もしかしたらノイジーなものかもしれませんが、僕自身も音を感じながら撮っていますし、そういう最高の次元で共振するような見方をされると、写真家としては、とてもうれしいものです。

また、僕自身、ヒステリックで写真集を作れたことは率直にプラスになりました。気持ちが解放されたというか、ものすごく楽になりましたね。それまで写真に対して、ちょっと自分で窮屈になっていた部分もありましたから。ですから、ヒステリックグラマーと出会えたことは、本当によかったと思っています。

■対談を終えて

森山●今日は、最高のスペースで北村さんとデートができてよかったです。展覧会もやっぱりショー。そしてショーというのは、入った瞬間にインパクトがないとダメなんですよ。そういう意味でも、このスペースには、なにかを体感できると確信しました。
もともとバイオレットという色が好きで、いつか額に使ってみたいと思っていましたが、このスペースを見た瞬間に「ここだ」と思いましたね。実際、非常に効果的だったんじゃないかと思い、満足しています。

■対談を終えて

Photo by FUKUDA Emiko

北村●なにもないときに、なにかを飾りたくなる壁でないとダメだと思っていました。そして、ここはそんな空間を目指して作りましたので、そういってもらえると本当に光栄です。今日はどうもありがとうございました。

森山●こちらこそ、ありがとうございました。

■森山大道展「DAIDO MORIYAMA it」

日程:2006年10月13日(金)~11月19日(日)
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581
詳細は、www.ratholegallery.comをご覧ください。

           
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