ART FILE 29|「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」|連載「世界のアート展から」
ART FILE 28|イギリス・ロンドン|「デザイン・ミュージアム」
「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH(ハロー、マイ ネーム イズ ポール・スミス)」
ファッションデザイナー、ポール・スミスのマインドに迫るとともに、そのクリエイションの秘密を探るエキシビション「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」がロンドンのデザイン ミュージアムで開催されている。これまでのキャリアを振り返り、いかにして“ポール・スミス”は生まれ、進化をつづけるのかが、いま、つまびらかにされる。
Text by YANAKA Tomomi
最初にオープンした狭小ショップやポールのオフィスまでも再現
1976年にパリのホテルのスイートルームで小さなメンズコレクションを発表することからスタートした「ポール・スミス」。現在では毎シーズンごとにパリでメンズ、ロンドンでウィメンズのコレクションを発表しており、数多くのラインを抱えるまでに成長した。
そして、そのブランド規模にもかかわらず、根底には“something unique(ユニークさ、独自性)”と“personal touch(ちょっとしたポール・スミスらしさ)”というスピリットが変わらずに流れつづけている。
ここまで築き上げてきたポール・スミス氏のクリエイション、インスピレーション、コラボレーション、ウィットと美の世界に迫る本展。ブランドの歩みをポール個人のアーカイブを紐解きながら明らかにするほか、デザイナーの本質をユニークな視点から考察する。
会場には、イギリス・ノッティンガムにポールが最初にオープンした3メートル四方の狭小ショップや、絶え間ないインスピレーションの源である無数の本やオブジェなどに、埋め尽くされたポールのオフィスまでも再現。さらに、洋服はもちろんのこと、アクセサリーや本、アート、アンティークアイテムといった洋服のコレクションを引き立たせるアイテムや、ポールがセレクトした展示物も並べられ、デザイナーのデザインプロセスが披露される。
このほかにも静止画と動画を配したデジタル・ルームでは、ビジュアル作品にポール自身が語るナレーションもくわわり、観る者をデザイナーのマインドのなかへといざなうなど、盛りだくさんの仕掛けも。