松浦俊夫|from TOKYO MOON 9月19日 ON AIR Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日!
Lounge
2015年4月22日

松浦俊夫|from TOKYO MOON 9月19日 ON AIR Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日!

松浦俊夫|from TOKYO MOON 9月19日 ON AIR

4年ぶりのニューアルバム、そして8年ぶりの日本公演決定

ゴタン・プロジェクト フィリップ・コーエン・ソラル来日(1)

さまざまなゲストを迎えてお送りするTOKYO MOON。今回は今年6月に4年ぶり3枚目のアルバム『Tango 3.0』をリリースし、来春には8年ぶりの来日公演が決定したGotan Project(ゴタン・プロジェクト)のメンバー Philippe Cohen Solal(フィリップ・コーエン・ソラル)をスタジオに迎え、単独インタビューを敢行。オンエアにはなかった日本語対訳つきでお届けします。

文=松浦俊夫編集=オウプナーズ写真=西田周平

だから私たちは1年ごとにアルバムをリリースしないのです

松浦 ニューアルバムのタイトル『Tango 3.0』は“3枚目”のアルバムという意味の“3”なのでしょうか? すると“ポイント・ゼロ”というのは?

フィリップ タイトル『Tango 3.0』というのは、この21世紀という時代にタンゴをひろめよう、という想いからつけました。タンゴというのは100年近い歴史をもつ古いタイプの音楽ですよね。“3.0”というのはWEBの次世代コミュニケーションシステムのネーミング、いまは“WEB2.0”と言われますが、“WEB2.0”から“WEB3.0”へ、どのような変革が起こるのかはまだわかりませんが、私たちの生活は確実にこのWEBのコミュニケーションシステムによって大きな影響を受けています。

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|01

これは音楽の世界にもいえることで、これからもっと私たちは過去と未来の音楽をうまく融合しながら創造していくことになるでしょう。伝統的なタンゴと未来のサウンドの融合──ここに“ポイント・ゼロ”という意味も込めているのですが、もちろん3枚目のアルバムという意味、そしてゴタン・プロジェクトのメンバーが3人という意味もふくまれています。

松浦 前作から4年を経てリリースされたこのニューアルバム『Tango3.0』ですが、ゴタン・プロジェクトが本来もっている官能的でスモーキーな世界感が熟成され、あらたに多くの音楽の影響を受けてここに姿をあらわした、という印象をもちました。この4年間、メンバーそれぞれソロでの活動などもされてきたようですが、そういった活動が本作にいい影響をあたえたといえるのでは?

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|02

フィリップ おっしゃるとおり前作からの4年間、私たちは休暇をとっていたわけでなく、かなり活発に動いていましたよ。Eduardo Makaroff(エドュアルド・マカロフ)は彼自身が立ちあげたタンゴのレーベル「Mañana(マニャーナ)」であたらしいタンゴの発掘に多忙でしたし、Christoph H. Muller(クリストフ・H・ミュエレール)はソロ活動として、アフロペルー音楽を追求するRADIOKIJADA(ラディオ・キハーダ)というユニットでアルバムを制作しました。

私もソロで『Moonshine Sessions』というアルバムをリリースしました。ゴタン・プロジェクトでツアーにでているときは、もちろんずっとタンゴ漬けです。そんなさい、滞在していたホテルでギターをチェックしながら曲を作っていたときに、カントリーミュージックやブルーグラス、いわゆるアメリカのルーツミュージックを聴いて、すごくインスピレーションが沸きました。それから、ナッシュビルに行ったさいにはナッシュビルのミュージシャンたちととてもすてきなコラボレーションができたりと、いろんな刺激を受けてきたなかでアルバムが完成しました。

そのほかにも、ゴタン・プロジェクトのアルバムをリリースしている「Ya Basta(ヤ・バスタ)」というレーベルの活動もありましたし、そうそう、ニューオリンズに行ったことで受けたブルースのインスピレーション、アルゼンチンでの滞在などで感じたデジタルクンビアのインスパイアがダイレクトに反映された楽曲もこのニューアルバムに収録されています。とにかく3人それぞれの幅広い活動が、このアルバムに影響をあたえました。こういったそれぞれの経験や発見があるからこそあらたな創造がうまれる、と私は思います。だから私たちは1年ごとにアルバムをリリースしないのです。

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|03

松浦俊夫|from TOKYO MOON 9月19日 ON AIR

4年ぶりのニューアルバム、そして8年ぶりの日本公演決定

ゴタン・プロジェクト フィリップ・コーエン・ソラル来日(2)

私自身の人生は大きく大きく影響を受けて、変わっている

松浦 フィリップの言ったように、それぞれのソロ活動が本当にうまくアルバムに結実していますよね。

ゴタン・プロジェクトのファンだから彼らの音楽を聴くのだけど、あらためて3人それぞれのソロを聴いてもらえば、この『Tango3.0』をより一層理解できるといいますか、再発見できるのではないかと思います。ぜひ一度ソロでの楽曲も聴いてみてください。

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|04

さて、つぎはライブについてお聞きしますが、7年前に六本木ヒルズアリーナではじめておこなわれたゴタン・プロジェクトのライブ──僕もプロデュースに参加させていただき、DJもしましたが本当にいいショーで、東京ではないような、どこか異国的な夜がとても印象的でした。現在は『Tango3.0』をひっさげて世界中をツアーしているとのことですが、7年前から比べ、なにか変化を感じますか?

フィリップ 基本的にはあまり変わっていないと思います。バンドメンバーはエドュアルド、クリストフ、私の3人ですし、まわりのスタッフやミュージシャンもゴタン・プロジェクトの立ち上げ当初からほとんど変わっていません。

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|05

ボーカリストのCristina Vilallonga(クリスティーナ・ヴィヤロンガ)、ピアノのGustavo Beytelmann(グスタボ・ベイテルマン)、バンドネオンのNini Flores(ニニ・フローレス)、ヴァイオリンのLine Kruse(リン・クルース)などは最初のレコーディングからずっと一緒のメンバーです。もちろんあたらしいアルバムにはあたらしい仲間、あたらしい試みもあります。Dr.John(ドクター・ジョン)はバンドネオンではなく、ゴタン・プロジェクト初のハーモニカ録音の楽曲「El Mensajero」のためニューオリンズで参加してくれました。

基本的にはひとつのファミリーでゴタン・プロジェクトを形成しているようなものなのですが、おっしゃるようにワールドツアーとなるとだいたい3年間ぐらい世界中の、僕たちを望んでくれるのなら地球上のどんな場所でもライブをしに行っているので、私自身の人生は大きく大きく影響を受けて、変わっていると思います。

松浦 フィリップは大きく変わってはいない、と言いますが、ゴタン・プロジェクトのビジュアルを使った表現──音と映像のシンクロや、打ち込み音楽と生のミュージシャンたちとの融合というのは7年を経て進化し、熟成されてきていると僕は思っています。僕自身も7年ぶりにみる彼らのライブ、2011年3月26日JCBホールでおこなわれますが、とても楽しみにしています。最後になりますが、あなたの人生を変えた1曲、1曲に決めるのはむずかしいと思いますが、教えていただけますか?

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|06

フィリップ うーん……2曲、2アーティストで悩んでしまうね……。あえて1曲選ぶとしたら、Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)の「What’s Going On」が、私の人生を変えた1曲と言えるでしょうか。父が家で歌っているのを聴いたのが「What's Going On」を聴いた最初だと思いますが、この曲は本当のソウルミュージックだと思います。私のいう“ソウルミュージック”というのはブラックミュージックという意味ではなく、“魂の音楽”という意味です。タンゴはアルゼンチンの人びとのソウルミュージック。カントリーやブルーグラスはアメリカ人にとってのソウルミュージック。どんな肌の色のひとたちも関係なくもっている“魂の音楽”です。

Gotan Project フィリップ・コーエン・ソラル来日|07

ちょっと個人的な意見になりますが、私はソウルミュージックを昔から愛していますが、私が神を信じるのは自分が困難に陥ったときだけだったんです。でもこのマーヴィン・ゲイの「What’s Going On」を聴いたとき、神を心から信じるようになりました。「独りではないんだ」と感じたんです。いかなる状況にあるどんなひとでも、「独りではないんだ」と感じることのできる曲だと思います。最近昔の彼のインタビューを読んだのですが、彼がこの楽曲をレコーディングしていたときに感じたもの、それは自分はただの“ツール”(道具、なにかのかわりのもの)である、という実感だったそうです。

自分よりも大きななにかに自分は生かされている、と。ほかの曲のレコーティングではまったく感じたことのなかった感触だったそうです。この曲を聴いて神を信じるようになった私は、彼の言ったことを信じます。彼の気持ちがそのまま私に伝わってきた、ということでしょう。「What’s Going On」、私の人生を変えた1曲ですね。

松浦 ありがとうございました。

GOTAN PROJECT TANGO 3.0 TOUR

GOTAN PROJECT TANGO 3.0 TOUR
日程|2011年3月26(土)
会場|JCBホール(東京ドームシティ内)
チケット発売日|11月20日(土)
主 催|J-WAVE
後 援|フランス大使館/アルゼンチン共和国大使館/東京日仏学院
協力|ランブリング・レコーズ/ホットスタッフ・プロモーション
企画制作|conversation

カンバセーション
Tel. 03-5280-9996
http://www.conversation.co.jp

GOTAN PROJECT|ゴタン・プロジェクト

GOTAN PROJECT|ゴタン・プロジェクト
1999年“タンゴとエレクトロニカの融合”というコンセプトのもと、フィリップ、クリストフ、エドュアルドの3人で結成。成熟した大人のリスナーにむけられた深く高質なサウンドと、自身たちが「現代アートの作品」と称する最新の映像技術、舞台装置を駆使した革新的なライブ/ステージングはまたたく間に世界中に衝撃をあたえた。

代表曲「ケレモス・パス」を収録し、2001年に発表されたデビューアルバム『レヴァンチャ・デル・タンゴ』は100万枚を超えるセールスを記録。03年11月には六本木ヒルズアリーナにて待望の初来日公演が実現。06年にリリースされたセカンドアルバム『ルナティコ』は全世界で200万枚を売上げ、通算400回以上におよぶ公演を成功させた。

その後『オーシャンズ 12』『Shall We Dance?』『セックス・アンド・ザ・シティ』など、ハリウッド映画/TVでもそのスタイリッシュな楽曲が使用され話題となった。ジャイルス・ピーターソンが「あたらしいワールドミュージックを創りあげたアーティスト」と評し、自身のラジオ番組で大きくとりあげたほか、ジャズやワールドミュージック、ダンスミュージックに造詣の深いクリエイター、文化人のあいだでも強い人気と称賛を誇る。さらなる音楽的進化を遂げて発表されたニューアルバム『TANGO 3.0』をたずさえ、前回を大きく上まわる動員を記録するワールドツアーでも、その美しいビートと映像は健在。ジャズやブルースなどのあらたな音楽的要素も取り入れ、これまでよりも生の管弦楽器を多用した官能的なステージを繰り広げる。

松浦俊夫『TOKYO MOON』

毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz

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moon@interfm.jp

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www.interfm.co.jp

           
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