さる山|辻野 剛展「ガラス/透過」開催
さる山
ガラスは作り手の思うままであり、作り手はガラスにされるがままである
辻野 剛展「ガラス/透過」開催
「光を透過するガラス。その性質を改めて意識し、辻野 剛氏と企みました」――と、元麻布『さる山』店主、猿山 修氏。「白熱球の光をはらみ和らげる白色ガラスの揺らぎ、透明ガラスを透して見るゆらめく炎。ワイングラスにつづき、辻野氏製作、猿山デザインによるランプシェードとキャンドルホルダーがあらたにくわわることとなりました。ほかに、透明ガラスと白色ガラスを用いたテーブルウェアや照明器具もならびます」。6月29日(土)から7月7日(日)まで、辻野 剛展「ガラス/透過」が開催される。
Text by YAMAMOTO Chinatsu
山本千夏による、辻野 剛展「ガラス/透過」の魅力
宙吹きのガラスの魅力を伝えたい。そのためのシンプルな方法として、制作の場で見て感じたことを書きたいと思う。そこはガラスを溶かす炉の熱で空気がゆらゆらしていて、あちらこちらに揺らぎが点在していた。
熱せられたガラスに息が吹き込まれ、かたまりはたちまち形をあたえられる。ガラスが膨らみ、ときに宙を舞うようにくるくると回され、引き伸ばされたりくっつけられたりして、見る見るうちに出来上がる。デザイン上、角をしっかり出すなど、型の使用が必要となる場合は、型そのものを作ることからはじまる。このときも、ガラスの特性と向き合いながら一つひとつ手によって生み出されることに変わりはない。つぎつぎに展開する動作と、ガラスの固まらないうちに仕事を終えなければならないスピード感は劇的でさえある。
作り手とガラスの関係は互いに寄り添うているようでもあり、また互いを操作し合っているようでもあった。ガラスは作り手の思うままであり、作り手はガラスにされるがままである。作り手はガラスを知り尽くし、素材の調合、温度の管理、動作の選択などによって形作るが、またそのすべてをガラスによって制限され、強いられているようでもある。終わることのないスリリングなせめぎ合い。どちらもどちらをコントロールしきれず、しかし作り手は、コントロールしきれないと手放してしまうのではなく、そのはざまに生じる揺らぎを活かす。揺らぎは形と表層とにあらわれる。形の揺らぎは選択の楽しみに、表層の視覚的な揺らぎは光をともなうと一層うつくしい。
ぴたりとしてそれでもどうしても埋まらないはざまがものの生まれる場所である。このはざまがあるからこそ、息が吹き込まれ、揺らぎ、光が透る。そうやって出来上がったものが、今、ここに確かに形を成してあり、手に取れるのである。
辻野 剛展「ガラス/透過」
会期|2013年6月29日(土)~7月7日(日)
『さる山』
東京都港区元麻布3-12-46和光マンション101
Tel. 03-3401-5935
営業時間|13:00~18:00
会期中無休
http://guillemets.net/
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