松浦俊夫|ベルリンのプロデュース・チーム、ジャザノヴァ来日
松浦俊夫|from TOKYO MOON 7月29日 オンエア
ベルリンのプロデュース・チーム、ジャザノヴァ来日インタビュー(1)
日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、おとなたちの至福のとき。そんな時間をさらに豊かにするのが、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』――。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激するおとなのためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて24時からオンエア。ここでは、毎週放送されたばかりのプログラムを振り返ります。今週は、ボーカリストにポール・ランドルフを迎え、ライブ形態で来日を果たしたベルリン発のプロデュース・チーム、ジャザノヴァに話をうかがいます。
Text by MATSUURA Toshio
オンエアにはなかった対訳を公開!
今回は、先日ブルーノート東京でおこなわれた来日公演が大盛況だった、ドイツ・べルリンのJazzanova(ジャザノヴァ)をキャッチ。メンバーのステファン・ライゼリンク、アクセル・ライネマー、そして、フィーチャリング・ボーカリストのポール・ランドルフの3人を迎えて、ライブバンドとして制作したニュー・アルバムや、現在おこなわれているライヴ・ツアー、そして今後の活動のゆくえなど、たっぷり話をうかがいました。ここでは、スタジオでおこなったインタビューの完全対訳をお届けします。じっくりとお楽しみください。
REVIEW|TRACK LIST
01. Samuel Yirga / I Am The Black Gold Of The Sun (Real World / Rice)
02. Jazzanova / Believer (Live at Blue Note Tokyo)
03. Jazzanova / I Human (Live at Blue Note Tokyo)
04. Jazzanova / Encore (Live at Blue Note Tokyo)
05. The Jimi Hendrix Experience / Bold As Love (Reprise)
松浦俊夫|from TOKYO MOON 7月29日 オンエア
ベルリンのプロデュース・チーム、ジャザノヴァ来日インタビュー(2)
来日公演はとっても楽しかった!
――それでは今夜のTOKYO MOONのゲストをご紹介しましょう。『ジャザノヴァ・ライヴ featuring ポール・ランドルフ』ということで来日公演をおこなっているメンバーのなかから、ジャザノヴァのステファン・ライゼリックとアクセル・ライネマー、そしてボーカリストのポール・ランドルフの3人に来ていただきました。番組へようこそ。
こんにちは。
――まずは、ちょうど昨夜に一日目のショーを終えられたばかりということで、その感想から聞かせてください。
ジャザノヴァ とっても楽しかったです! 2ステージあったんですが、ファーストステージからすごい盛り上がりでした。自分たちが煽(あお)る前から、立ち上がってくれるノリのいいお客さんばかりでね。セカンドステージは、ファーストステージの勢いのまま、最初からおもいきり演奏できました。
――今回のアルバムで、メンバーがある程度固定されたそうですが、レコーディングを含めて、いままでどれぐらいの期間一緒にやっているんですか?
ポール・ランドルフ(以下、ポール) レコーディングのときからずっと……というわけではないんですが、ツアーがはじまってからは、わりとメンバーが固定してきました。以前は、バック演奏のメンバーにかんしてはチームA、B、Cといろんな選択があったんですが、それがだんだんチームAとチームBぐらいにしぼられてきて(笑)、いまはほぼ固定のメンバーで活動しています。
―― 90年代のなかばに(ジャザノヴァが)ドイツから出てきたときは、かなりの衝撃を受けました。それまではDJはDJだし、ミュージシャンはミュージシャンという、別べつのものだったのが、ジャザノヴァではそれが一つに融合されていて、とても新鮮でした。そして、今度はそれがバンド形態に変化したわけですが、そこにはどんな経緯があったのでしょうか?
ジャザノヴァ ジャザノヴァのリリースした楽曲を順番に見ていくと、変化を感じとってもらえるとおもいます。最初はソウルを中心に、とにかく狂ったように(笑)サンプリングをしていました。そのときは、まだDJ観点で作品をつくっていたわけですが、時間がたつにつれて、ほかのアーティストのプロダクションを手がけるようになると、レコーディングのテクニックやスキルが上がっていきました。それが、すこしずつ自分たちの作品にも反映されるようになっていったんです。
そういう意味では、今年5月に発売した『Funkhaus Studio Sessions』(2012年/Sonar Kellektiv)も、前作の『Of All The Things』(2008年/Verve)という過程を経て生まれた作品です。『Of All The Things』のライブツアーで磨かれたバンド形態のサウンドを反映させたものなんです。こうやって見ていくと、これまでの経緯はすべて自然な流れのなかで起きたことだったなとおもいますね。
演奏している自分たちがまず楽しもうというおもいがある
――その前作で、ポール(・ランドルフ)は3つの曲に参加していましたが、今回はフィーチャリングボーカリストとして、ある意味バンドの中に入り込んでツアーに参加しています。そこで、ジャザノヴァのおふたりは、ポールを迎え入れようとしたきっかけを、そしてポールはその話を受けたときにどう感じたかをそれぞれ聞かせてください。
ジャザノヴァ ポールを誘ったのは、お客さんからのリクエストがきっかけでした。「ライブでやっている音源を、ライブでしか聞けないのはもったいない」ということで、今回はそれをアルバムにしてリリースしようということになったんです。これまでにやってきた曲も、リードボーカルはほとんどポールだったので、自然とこういうかたちになりました。
ポール 声をかけてもらったときは、非常に光栄でした。当初は「一日だけ一緒にライブをやる」ということだったんですけど、とても相性がよかったので、そのあともライブをすることになったんです。まずは50公演まで増えて、一年目を終えたら、今度は二年目も、三年目もとなり、もう四年目になりました。
ジャザノヴァ ポールは、いままでほかのボーカリストとライブでやってきた曲も、自分のスタイルに変えてこなすことのできる素晴らしい歌い手。彼をジャザノヴァのボーカリストとして迎えることができて光栄です。
――昨日のセカンドステージを見ていて、舞台上のメンバー自身が一番楽しそうだなというのを感じました。おそらく会場にきていたお客さんも、最初は緊張しているところがあったとおもうんですが、メンバーの楽しさがだんだん浸透していって、最後には会場全体がダンスフロアのように変わっていったとおもうんです。
ジャザノヴァ&ポール そうですね。音楽をやっている以上、気持ちが入って自然とノッてしまうような音楽をつくっているつもりなので、演奏している自分たちがまず楽しもうというおもいはあります。それは、ほかのアーティストのライブを見ていてもおなじです。演奏する側が楽しんでいれば、観客に伝染しますし。そこをきちんと意識しながら、「自分たちも観客を受け入れるんだ」という姿勢でやっていれば、必ずどこかで心を開いてくれるとおもっています。
松浦俊夫|from TOKYO MOON 7月29日 オンエア
ベルリンのプロデュース・チーム、ジャザノヴァ来日インタビュー(3)
お客さんとの生々しいやりとりの素晴らしさを、いまは実感している
――ここで、ステファンとアクセルのおふたりに質問させてください。もともと、おふたりはスタジオで音楽をプロデュースする側で、どちらかというと“ビハインド ザ ステージ(=裏方)”的な役割だったとおもうんです。逆に “オン ステージ(=ステージ上)”で活動するようになったことで、なにか意識の変化はありましたか?
ジャザノヴァ ステージに立っていると、お客さんの反応を直接感じられるのがいいですね。“ビハインド ザ ステージ”にいたときは、ぼくたちが流した音楽に合わせて、お客さんが踊っているのを見ることしかできませんでした。だけど、ステージに立ってライブで演奏するということは、卓球のように自分たちの感情を出して、それを受け止めたお客さんから、またちがう感情が返ってくる。その生々しいやりとりの素晴らしさを、いまは実感しています。
――フィンシルバーをはじめ、いろんなアーティストのプロデュースをしたり、コラボレーションしたり、リミックスしたりしていますよね。ジャザノヴァとしての活動と、それ以外の活動とのちがいを一言でいうとなんでしょう?
ジャザノヴァ 昔からいろんなアーティストとのかかわりはあるんですが、いままでは、DJとしてビートを提供したり、スタジオで作業するプログラミング的なことが多かったんです。それが、フィンシルバーのレコーディングのときには、いつものベルリンのスタジオを飛び出て、彼らと直接触れ合ってというプロセスをきちんと踏んだんです。とても新鮮でしたし、彼らとはいまでもいい関係がつづいています。
――この夏は、このメンバーでいろいろな場所を回るそうですが。
ポール ちゃんとしたスケジュールは把握していないのですが、いまわかっているだけで、クロアチア、ウィーン、パリ、イタリア、アムステルダム……。ヨーロッパを中心にいろんな場所を回る予定です。
――いちファンとして、ぼくはもう次のことを待ち望んでいるところがありまして。ジャザノヴァは、これから先どんなふうに進んでいくのでしょうか?
ジャザノヴァ いま、あたらしいアルバムに向けて動き出していますが、音の方向性はまだ決まっていません。ただ、ライブをつづけていきたいので、どんな音でもライブで表現できるようなものに仕上げたいと考えています。
――DJとミュージシャンの融合、そこからバンド形態への移行、インディペンデントなレーベルでの活動と、ジャザノヴァがやり遂げたことは、ぼく自身もふくめて、そういった活動をする人たちに多大な勇気を与えてくれているとおもいます。ますますこれからの活動に期待しています。
ジャザノヴァ ありがとう。
――最後に、自分の人生を大きく変えた一曲を教えてください。
ポール あえてあげるとすれば、ジミ・ヘンドリックスの「Axis: Bold As Love」か「Machine Gun」。そのどちらかですね。
ジャザノヴァ ふたりに共通していえることですが、80年代後期と90年代初期のヒップホップからは、かなり大きな影響を受けました。いわば、ジャザノヴァのベースにあるものです。アーティスト名をあげると、ア・トライブ・コールド・クエストやDJプレミア。あとは、エリック・B.&ラキムの「Paid in Full」。とくにColdcut Remixは、ぼくたちの人生には欠かせない一曲ですね。
(協力:ブルーノート東京 / P-VINE)
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp
Inter FM 76.1MHz
www.interfm.co.jp