EVENT|石巻市から届いた希望のひかり
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復興への想いを“ガレキ製”卒業記念トロフィーに込めて
忘れたくても忘れられない。昨年の東日本大震災後に目にしたガレキの山。建物に家具、クルマ……ありとあらゆるものが壊され、津波に流されガレキとなって堆積したものだ。当然、高く積み上げられた山には、そこで暮らしていた人たちの大切な思い出も一緒につめ込まれている。宮城県石巻市の小学生25人がそんなガレキと向き合い、復興への願いを込めて卒業記念トロフィーを制作した。悲しいできごとの“シンボル”のようになってしまったガレキを、まるで「もう未来に向かって歩き出しているよ」と声が聞こえてきそうな明るい色の作品に変えて。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
未来に向かって力強い一歩を踏み出した子供たち
東日本大震災で倒壊した家屋は全壊、半壊合わせて約38万戸。一部損壊したものを合わせると100万戸を超える。発生したガレキは、宮城県で約1570万トン、岩手県で約450万トン、福島県で約225万トンにのぼる。当初、道路を埋め尽くしていたガレキは、連日の撤去作業が功を奏し、ずいぶん片付いたようにみえる。が、ガレキはきちんと処理をしないかぎり“消える”ことはない。バラバラに散らばったものが高く積み上げられただけにすぎないのだ。
なかでもその量がいちばん多かったのは宮城県石巻市。震災から1年が経過した現在も、まだ約570万トンものガレキが、燃やしたり砕いたりといった処理を待ち望んでいる状況だ(2012年3月26日付、西日本新聞調べ)。
そんな石巻市の市立湊小学校で、ガレキを使ったある取り組みが行われた。ガレキの山に埋もれていた木くずから、卒業を控えた6年生がみずからの手で卒業記念トロフィーをつくるというもの。子供たち25人の制作指導にあたったのは、群馬県在住の木工造形家、齊藤公太郎さん。「暮らしの証が、思い出が、幸せの断片がたくさんつまったガレキと向き合うことで、この震災を乗り越えてほしかった」と話す。まさに、ガレキと向き合うことは、震災そのものと向き合うこと。大震災という、想像を絶する体験に打ちひしがれてしまった心の傷を癒す作業であった。
「真剣に取り組む子供たちの姿は、私の想像を超えていました。真剣な眼差しからは、心の奥にしまわれている鬱積(うっせき)した感情の大きさを感じ、完成までの子供たちの表情の変化を見ていると、『意味をもつ作業である』という確信がわいてきました」
完成したトロフィーの明るく豊かな色使いとモチーフからは、着実に子供たちの心の扉が開きはじめたことをうかがい知ることができる。「トロフィーを見ている人と天国の人たちの気持ちが通じ合えばいいなと思い、ユニコーンのデザインを考えました」という鈴木丈くんや、トロフィーに「被災した人が安心して楽しい暮らしができるように」と願いを込めた大黒彩さん、「元の街のように復興し、さらに良くなるように」と龍に守られた街をつくりだした奥田駿斗くん──そこには、悲しみを乗り越え、未来に向かって力強い一歩を踏み出した子供たちの姿があった。
25人それぞれの想いがつまったトロフィーを現在、制作する様子を記録した写真パネルと併せて、皇居外苑内の「楠公レストハウス」で目にすることができる。被災した人の心に温かく寄り添う彼らとともに、復興支援の想いをあらたにしたい。
災害廃棄物処理推進展
楠公レストハウス
日時|3月20日(火)~6月30日(土) 8:30~17:00
場所|東京都千代田区皇居外苑1-1
主催|環境省
協力|石巻市、石巻市教育委員会、石巻市立湊小学校
問い合わせ
環境省 廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課
Tel. 03-3581-3351(代表)