INTERVIEW|DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談
Lounge
2015年2月27日

INTERVIEW|DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談

ニューアルバム『PARADISE』リリース記念!

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談(1)

ニューアルバム『PARADISE』をリリースしたばかりのDJ KAWASAKIと、レギュラードライバーとして今シーズンF1復帰を果たすレーサー 山本左近による対談が実現。まったくちがう世界で活躍する両者を結んだ“音楽”──リスナーとして、またDJとして語ってくれたふたりの対談には、そんな“音楽”に対する情熱が溢れていた。リリースを記念しておこなわれる全国ツアー、そしてイタリアGPをそれぞれ目前に控えたふたりに話を聞いた。

文=オウプナーズ写真=鈴木健太

あたらしいDJ KAWASAKIを聴かせる1枚

──おふたりの出会いは?

山本 じつは最初に出会ったのは沖野修也さんだったんです。それもロンドンでたまたま! それが3年前の夏で、その年の冬に沖野さんにKAWASAKIさんをThe Roomで紹介してもらいました。

KAWASAKI 単純に馬が合ったということもありますが、話しているうちに彼が音楽好きであることを知り、音楽を通じて仲良くなっていきました。職業柄、セレブリティが集うような場にも顔を出すようなひとであるにもかかわらず、すごくアンダーグラウンドな音楽に興味をもっているんですよ。たとえばBODY&SOULなダニー・クリヴィットだとか、僕や沖野さんがリスペクトしているひとと近いんです。華やかな世界にいながらそれに流されず、自分の芯をしっかりもっているところは本当、尊敬します。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 1-2

山本 フランソワ・ケボキアンがあるインタビューで、「そのひとの聴く音楽は、そのひとのアイデンティティにかかわかる」と応えていたんですが、それには僕も同感で、音楽をどう聴くかという姿勢は、ほかの物事に対してもおなじことが言えると思うんです。沖野さんやKAWASAKIさんにはもともと“ジャズ”というベースがありますよね。これは僕の解釈ですが、ジャズってなんでもありな音楽で、形式はあるけどそこをあえて崩していくという部分がある。そんな自由なスタイルがふたりの人間性にも出ていると思うんですよね。だから話していてすごく楽しいし、惹かれる部分があるんだと思います。

──『PARADISE』はもう聴かれましたか?

山本 これまでのDJ KAWASAKIとあたらしいDJ KAWASAKIが半分ずつあるような1枚でした。これまでのDJ KAWASAKIは期待通りファンの心を掴んでいるのですが、あたらしいほうの曲もスタイルはちがえどみんな絶対に気に入ると思いますし、これまでのDJ KAWASAKIには反応できなかったひとたちも、このあたらしい部分には魅かれるんじゃないかな。そんなおもしろいアルバムになっています! なかでも僕がうれしかったのは、「Galactic Love」のような曲を作るアーティストって最近本当に少ないんですよ。もっとテクノでミニマルでエレクトロで、という曲はいっぱいあるんです。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 1-3

でもこの曲は、USハウスからの流れも組んでいるし、デトロイトテクノのインフルエンスもはいっている、でも1980年代の影響も受けていて、こういった音楽を作るにはまずヒストリーを知っていなきゃできないんです。これまで聴いてきた曲の歴史を、“DJ KAWASAKI”というものをとおして昇華させてできたのがあの曲なんだと思うんです。キャッチーなんだけど、芯がある、ポップさとアンダーグラウンドさが両立している曲だなと感じました。

KAWASAKI まさにそのとおりですよ(笑)! というのも、コンセプトはニューヨークの歌ものディープハウスのもつあのメロディアスでソウルフルな部分と、僕の好きなデトロイトテクノのエッジィな部分との融合だったんです。だからちょっとびっくりしました(笑)。

山本 あと、「Say You'll Stay feat.Andrea Love」は歌詞がいいですね!乙女心が伝わるというか、「Say You'll Stay=そこにいると言って」という愛らしい歌詞にぐっときましたね。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 1-4

ニューアルバム『PARADISE』リリース記念!

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談(2)

12月、elevenにてふたりの共演が実現

──F1レーサーである山本さんがDJをはじめた理由とは?

山本 正直DJになりたいと強く思ったことはないんですよね。なんといっても音楽を聴くことが好きで、高校生くらいからレコードを買いはじめ、ちょっとずつその数が増えていくうちに今度はターンテーブルを手に入れて、レコードをつなぐ練習をしているうちに、いつの間にか“DJ”と呼ばれるようなことをやっていた、という感じです。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 2-2

KAWASAKI 昨年The Roomで沖野さんと僕と左近君の3人でイベントをやったんですよ。そこではじめてちゃんと彼のDJを聴いたんですが、左近君が聴いてきた音楽の歴史がみえましたし、彼はいろんなひとのDJプレイもすごく見てきているので、それぞれのいい部分を自分のものにしてきているなと感じました。彼のプレイはとにかくストイックなんですよ。ブースに入った瞬間に豹変するというか、瞬時に自分の世界へ深く入っていく──きっとレースのときもこんな感じなんだろうなって思いました。

そういうのを“感情準備”というのですが、それが意識せずともつねにできているんでしょうね。あの切り替えの早さは、本当にプロの世界で戦ってるひとなんだなって感じました。

山本 どんなスポーツでもそうですが、とくにレースでは集中力というものがとても重要で、一瞬たりともミスの許されない世界ですから、いざヘルメットをかぶってマシンに乗り込んで、走る準備ができた瞬間にはすべてのことがレースに集中している状態に切り替わっているんですよ。DJブースに立った瞬間もおなじで、そのとき集中すべきことに集中するというのはもう癖かもしれません。

KAWASAKI 話しかけられないオーラが出てます(笑)。

山本 真剣にありたいという想いがつねにあって、DJブースに立った以上、そのひとがプロであれアマチュアであれ、フロアにお客さんがいるのであればそのときできるベストを尽くすべきだと思っているんです。その状態で笑顔があればベストなんでしょうけど、僕の場合まだまだDJとしての経験も少ないし、余裕もないんです(笑)。

KAWASAKI  DJのときはお酒も飲まないですしね。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 2-3

山本 もともと普段あまり飲まないからというのもありますが、一度お酒を飲んでからDJをしたことがあって、そのとき自分のやりたいことが思うようにできなかったんですよね。つぎになにをかけるか、フロアの反応を見てどうリアクションするか、そういった判断がお酒を飲んでいるとあまくなってしまうんですよね。もちろんお酒がエネルギーに変わるひともいますけどね。

KAWASAKI 僕の場合は後者ですね。自分が飲みたいというのももちろんありますけど、お客さんとおなじテンションでいたいんですよね。僕はクラブで働いてきて、お酒の力を借りて瞬間的に現場をスパークさせるコツを学んできたので、それを活かして盛り上げるという、DJでありながらスタッフの目線でフロアを見ているんだと思います。

──そんなおふたりの競演を見ることのできる機会はまたありますか?

KAWASAKI  12月10日に僕、左近君、DAISHIDANCEと、まだ未定ですが、あと数名とでelevenにて『PARADISE』のリリースパーティーを予定しています。

ニューアルバム『PARADISE』リリース記念!

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談(3)

発信していく側がもっとあたらしいものを提示していかなくちゃいけない

──DJプレイに対するこだわりはなんですか?

山本 僕はDJをする以上は自分のメッセージを聴いてくれているお客さんに伝えたいと思っていて、それはクラブカルチャーにおいてずっと昔から伝わってきていることだから、できる・できないは別として僕もそうしたいし、自分の気持を伝えたいと思っています。

KAWASAKI つねに自分らしくいたいですね。自分らしくいながら、同時に進化したプレイができればと。アルバムごとにその蓄積をお見せしていきたいと思っています。

──最近ではポップミュージックにもハウスのエッセンスが取り入れられることも多く、よりポピュラーな音楽になっていると思うのですが、それによるシーンの変化は感じますか?

KAWASAKI ジャパニーズハウスと言われているなかにもいろいろあると思うんですよ。J POPを4つ打ちにしただけのようなものもあれば、海外にも通用するようなものもある。僕らは後者を目指しているのですが、そこはリスナーが聴き分けてくれるとうれしいですね。

ただ、ポップになったということにはいい部分もあって、アンダーグラウンドなクラブミュージックと、ポップとされるメジャーなものとのフィールドがなくなってきている。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 3-2

そういう意味では普段クラブに行かないひとも来るきっかけが多くなって、シーンが活性化されていいのかなと思います。

──クラブシーンの変化についてはいかがですか?

KAWASAKI 音楽にかんして言えば、エレクトロが多くなっているように感じます。アメリカのディープハウスというよりは、ヨーロッパのエレクトロハウスというプレイに変化していますね。

山本 あとミニマルやテクノも多いですよね。音楽は変われど、僕はそこに来ているひとたちのエネルギーというものがクラブカルチャーにとって重要なんじゃないかなと思っていて、最近そういう意味ではトガっているひとは以前より減っている気がしますね。

KAWASAKI お客さんのほうがいろんな音楽を聴いていたりするので、むしろ発信していく側がもっとあたらしいものを提示していかなくちゃいけないんじゃないかな。僕はヒット曲のオンパレードという“予定調和”なDJはいやなんですよね。それはクリエイターとしてちがうんじゃないかなと思っていて、もちろんエンターテイナーとしてみんなが聴きたい曲もかけますが、自分が学んできた音楽も混ぜてプレイしていきたいですし、アルバムを通じてもっと深く知っていってくれたらと思っています。

DJ KAWASAKI×F1レーサー 山本左近 音楽対談 3-3

山本 知らない音楽でも素直にかっこいいって言える姿勢はすてきですね。僕はいい曲に出会うたび、人生が豊かになっていくと思っているので。

「自分はこのジャンルしか聴かない!」といったこだわりをもっているひとって案外多いと思うんです。でも楽しみたいと思う気持ちさえあれば、どんな音楽でも抵抗なく受け入れられると思うんですよ。音楽って、聴けば聴くほど楽しみが増えていくものなんですから!

──今後の予定をお聞かせください。

KAWASAKI 『PARADISE』をひっさげ、全国ツアーをスタートします。

山本 今後のレースの予定としては、ベルギーグランプリにはじまり、イタリア、シンガポール、そして10月には日本グランプリがあり、そこから韓国、ブラジル、アブダビへ。今シーズンはHRT F1チームのレギュラードライバーとして出場しているので、一戦一戦集中して精一杯がんばりたいと思います。応援、よろしくお願いします!

KAWASAKI 久しぶりに会って状況報告をしながら、互いに成長している姿が見れるのが楽しみですね。12月のelevenは盛大にやるつもりでいるので、ぜひ皆さん遊びにきてください!

──ありがとうございました。

『PARADISE』

『PARADISE』
価格|2500円
EMI Music Japan
http://emimusic.jp/artist/dj_kawasaki/

"PARADISE" Japan Tour

9月19日(日・祝前) 京都 / Metro
9月22日(水・祝前) 神戸 / Troop Cafe
9月25日(土) 盛岡 / players cafe
10月2日(土) 金沢 / MANIER
10月9日(土) 沖縄 / Club Be Green
10月15日(金) 名古屋 / CLUB MAGO
10月23日(土) 札幌 / ACID ROOM
10月30日(土) 大阪 / NOON

11月6日(土) 福岡 / O/D
11月13日(土) 宮崎 / Labo_underground
11月20日(土) 宇都宮 / SPACE LAB π
11月22日(月・祝前) 岡山 / MARS
12月4日(土) 仙台 / CLUB SHAF
12月10日(金) 東京 / eleven
12月11日(土) 長野 / FAME

DJ KAWASAKI

DJ KAWASAKI|DJ カワサキ
iTunes ダンスチャートで8曲連続No.1獲得。また、自身が手がけた作品がTOP10に同時に7曲ランクインするという前人未踏の記録を打ち立てたDJ KAWASAKI。関連作品の総セールスは30万枚を越え、一躍トッププロデューサーの仲間入りを果たした。現在、JJazz.Net SUNTORY「WHISKY MODE」、渋谷FM「The Room Radio」にてナビゲーターも努めている。
Official Blog|http://www.extra-freedom.co.jp/blog/dj_kawasaki/
twitter|http://twitter.com/djkawasaki
myspace|http://www.myspace.com/djkawasaki

山本左近

山本左近|YAMAMOTO Sakon
2006年 第12戦ドイツGPより日本人としては最年少の24歳21日でスーパーアグリF1のレギュラードライバーとしてF1デビュー。ブラジルGP決勝中のセクター2ではマイケル・シューマッハーにつぐ2番手タイムをたたき出す。そして今シーズン、F1チーム「ヒスパニアレーシング」よりサードドライバーとして参戦。第10戦 イギリスGPよりレギュラードライバーとしてF1へ復帰する。

           
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