萩原輝美 連載 vol.152|YUIMA NAKAZATO インタビュー
デザインするのは服ではなくボディ。
めざすは空間デザイナー YUIMA NAKAZATO
中里唯馬さんは7月行われたパリ・オートクチュールで日本人招待デザイナーとしてコレクションを発表しました。会場は多くのデザイナーが使う「パレ・ド・トーキョー」の地下ホール。コレクションを主宰するサンディカに参加を働きかけ、結論が出たのが5月。半年かけたチャレンジとコレクションを聞こうとショー翌日、パリのアトリエを尋ねました。
Text by Terumi Hagiwara
ファッションデザイナーという枠にとらわれない
――EXILEや映画「ルパン三世」など舞台衣装デザイナーとしても活躍していますね。クチュール参加を決めた思いとは…?
中里唯馬(以下、中里) 舞台衣装は劇場に足を運んでくれる人たちの目にしか触れません。もっと多くの人たちに僕の作品を見てもらいたかった。衣装製作はオートクチュールと同じ1点ものです。挑戦するにふさわしいステージだと思った。
――作品は小さなユニットを手で繋げた量感たっぷりのドレス。凝った技を使った、まさにクチュール仕立てでした。
中里 1着のドレスに300個のパーツが使われています。一つ作るのに何時間もかかる。
――モデルの肩から長い義手がぶらさがっているのは?
中里 3Dプリントで作ったんです。いずれはボディも3Dでデザインできるようになる。その第一歩です。
――参加が決まるまでにはずい分時間がかかったとか。
中里 初めは自分で手紙を書いて作品を送りました。でもそれだけではダメだった。推薦者が必要ということでデザイナーやジヤーナリストに手紙を書いてもらった。サンディカに入っている外国人デザイナーの何人かのリストが送られ、そのうちの一人の推薦が必要だと…。みんな大御所デザイナーばかりで会ったこともない。唯一人、アントワープの学校で講義を聞いたデザイナーがいました。そこで一緒に写した記念写真を同封したんです。ラッキーでした。それが決め手。
――初参加の感想は?
中里 パリコレクションってすごいです。反響がその場でジンジンかえってくる。初めての感覚。できるなら続けたい。
――これからの夢は?
中里 ファッションデザイナーという枠だけにとらわれたくない。アートディレクターの石岡瑛子さんみたいに、空間そのものもデザインするのが夢です。
インタビューを終えて
黒い服に身を包み、端正な第一印象。ご両親は現役で活躍されている舞台衣装デザイナーと彫刻家。実家はアートの現場そのもの。なるほどと思わせるD.N.Aです。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/