萩原輝美 連載 vol.133|ブランド力見せつけたグッチ、プラダ
重ねて重ねて、かるく見せる
ブランド力見せつけたグッチ、プラダ
2016年春夏ミラノコレクションです。2016年春夏は軽さと透け感…。でも、これって毎シーズン出てますよね。しかし、来年の春はちょっと違います。透ける布を着るのではなく、その下に何を着るか、何を見せるかがポイントです。重ねることで見え方が変わる。変化する色のグラデーションや質感を楽しむというコーディネイトです。ディテールを盛り込んで重ねてもシンプルに見せる。そんなひとひねりの技です。
Text by Terumi Hagiwara
ミケーレが切り拓くグッチの新境地
デザイナーはよく甘さと辛さ、優しさと逞しさなど女性の2面性を表現しようとします。しかし春夏コレクションでは2面性どころか3面、4面の多面性がスタイリングされています。
グッチは歴代のデザイナーが使っていたホテルの会場をやめ、自然光の入る明るい場所を選びました。デザイナーは先シーズン抜擢されたアレッサンドロ・ミケーレです。ポップな花と蛇の絨毯が敷き詰められステージにはグラフィカルなパーテーションが並びます。
コンシャスなレースドレスには、スポーティーなジップアップにアイコンのリブベルトがつきます。トロンプロイユに3D刺しゅうを重ね、レースニットの背中は蛇のモチーフが浮かびます。手間を加えた複雑な組み合わせがポイントです。
異素材で遊ぶプラダのシンプリシティー
プラダは白、黒、チェックにツィードと切り替えたスーツにトリミングを施し、チュールレースのケープを加えました。グラフィカルなニットコンビネゾンに重ねるオーガンジーのチュニック、エポーレットにはビジューを飾ります。シンプルに見えるボーダーのアストラカン、スエード、エナメルなど異素材の組み合わせはバッグや靴にも使われています。こんなにこってりしても、すっきりシンプルなスタイルを打ち出せるのは…やっぱりブランドの力です。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/