POGGY’S FILTER|vol.13 READYMADE 細川雄太さん(後編)
FASHION / MEN
2020年1月31日

POGGY’S FILTER|vol.13 READYMADE 細川雄太さん(後編)

一番大事なのは服よりも、自分とその人との関係

細川 ほかにもJay-Z(ジェイ・Z)が着てくれたり、アーティストがPVで着てくれたりとか、そういうのはポツポツとあったんですけど、まともにちゃんと「あなたのために作ります」って一緒にやったのは、トラヴィスが最初じゃないですかね。

POGGY トラヴィスはシカゴのRSVPとかでREADYMADEを買ってたんですかね?

細川 最初は、Easy(イージー、元RSVPのストアマネージャーでトラヴィスのマネージャーも務めた人物)かもしれないですね。

尾田 後から聞いたら、ツアーの先々で買ってくれてたみたいで。最初の頃は、あんまり本人もREADYMADEって意識せずに買っていたらしいです。ギフトもしてないのに、インスタにもあげて着まくってくれた。

細川 トラヴィスがラスベガスのホテルで盗難に遭ったんですが、その時に盗られたREADYMADEのダウンがどうしても欲しいからって言うので、それを送ったんです。その後LAに行った時に連絡したら「会おう」ってなって彼の家に行ったら「パンツを作って欲しい」っていう話をされたんですよ。フワッとしたイメージをもらって、それを自分でデザインして形にして。

POGGY トラヴィスとはパックTも作っていますよね。例えばREADYMADEで使っているヴィンテージのダッフル生地って、限りのあるものじゃないですか。READYMADEで注目されて以降、結構偽物が多く出回ったり、値段も高くなったり。パックTみたいなのを始めたのは、そういう生地が取れなくなった代わりのアイデアとしてできたものですか?
細川 そういう理由もありますね。あと、僕はTシャツのリメイクとか、パーカのリメイクっていうはあんまり好きじゃなくて、READYMADEでもやってないんですよ。だから、パックTではリサイクルコットンを使ってるんです。

POGGY パックTのシリーズは、蒼々たる人たちとコラボをしていますよね。

細川 これはコラボで回していきたくて、企画したんですよ。

POGGY 最初はDamien Hirst(ダミアン・ハースト)でしたっけ?

細川 VERDY君ですね。HYPEFEST(ハイプフェスト)に合わせて作って。その次にダミアン、トラヴィス、バビロン(Babylon LA)、Dr.Woo(ドクター・ウー)ですね。

POGGY すごいメンツですよね。READYMADEのすごいところって、そういうのが意識的にじゃなくて、細川さんがナチュラルにやっているところだと思います。あんまり計算をしている感じがしないのですが。
細川 そうですね。全くしてないです。

尾田 でも基本は全部、細川が決めているんですよ。

細川 でも、フワッと。例えば「こういう売り方をしたら面白いんじゃない?」って。けど、それくらいですよ。

POGGY 細川さんの中の基準って、単純に「やりたいか、やりたくないか」ですか?

細川 それはすごくありますね。楽しいか、楽しくないかとか。あとはお世話になった人は裏切らないとか。売れる前から付き合ってくれている人とか、そういう義理とかは大切にしようと思っていますね。相手がやめるって言うまで、このショップには卸し続けようとか。あと、「何でこことコラボしたの?」って聞かれても、「仲が良いから」って。それ以上の理由はいらなんじゃないかなって思いますね。ビジネス的には良くなくても、僕が応援したいと思えば、それでいいんじゃないかなって。

POGGY 売れるからとか、そういうのではなく?

細川 そうそう。もちろん、売れたら売れたで嬉しいですけど。でも、一番大切なのは、服がどうとかっていうよりも、その人と僕との関係だと思っているので。服の関係がなくなっても、その人との関係はなくならないようなものが一番大切ですね。マックスフィールドに卸し始めた当初、たまたま同級生だった友達がアメリカ人と結婚してLAに住んでいたんです。僕は英語が喋れないから「旦那さん英語喋れるなら来てくれる?」って、一緒に来てもらったんですよ。その旦那さんは消防士なんですけど、彼を連れていったら無事卸せることが決まって。それで僕はマックスフィールドに「これからはこの消防士から買ってくれ」って(笑)。
尾田 今でもそのご夫婦がREADYMADEのアメリカ国内のセールスをやっているんですよ。

細川 最初は「お金払うから、サイドビジネスとしてやって」って。その友達も当時はLAで仕事がなかったんで、お小遣いにはなるかもしれないしって。そういう友達話から始まってるんです。

POGGY それが、今は相当なビジネスになってるわけですからね。

尾田 その旦那さんは、今も消防署で働いているんです。だから、パリの展示会には有給を取って来てくれてるんですよ。

POGGY そうなんですね(笑)。

細川 ずっとファッション業界にいて、ファッションを知っている人と一緒にやるのも良いと思うんですけど、俺はずっと彼と一緒にやろうと思っていて。

POGGY すごく細川さんらしい話ですね。最後に将来のヴィジョンなんかがあれば教えてください。

細川 それがあんまりないんですよね。目の前のことをやるのに必死なタイプなんで。次のファッションウィークで新しいブランドを立ち上げる予定なので、今はそれをLAのアーティストと一緒に頑張っているところです。将来のヴィジョン……何ですかね? 「年商何十億になりたい」とか、そういうのは思ったことないです(笑)。自分が有名になりたいとかもないし。近しい人たちがそれで食えたら一番幸せかもしれませんね。
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