POGGY’S FILTER|vol.13 READYMADE 細川雄太さん(後編)
FASHION / MEN
2020年1月31日

POGGY’S FILTER|vol.13 READYMADE 細川雄太さん(後編)

前回に引き続き、大阪を拠点とする人気ブランド、READYMADEの細川雄太氏を迎えてお送りする、『POGGY'S FILTER』vol.13の後編。伝説的とも言える、マックスフィールドでのポップアップの話から、昨年話題となったトラヴィス・スコットとのコラボレーションの経緯など、今回もまた貴重な話が続々と登場します。また、前編に引き続き、READYMADEのセールスを担当している(株)アントラクトの尾田浩行氏にも参加していただき、POGGY氏、細川氏、尾田氏の3人による、トークセッションをご堪能ください。

Interview by KOGI “Poggy” Motofumi|Photographs & Text by OMAE Kiwamu

1日で完売したマックスフィールドでのポップアップ

POGGY Chrome Hearts(クロム・ハーツ)とOFF-WHITE(オフ・ホワイト)とのコラボをやったのって、何シーズン目のことですか?

尾田浩行さん(以下、尾田) まだ展示会とかはやっていなかったので、何シーズン目とかではないですね。POGGYさんに「尾田さん、LAですごいものを見てきたんですけど。これからは展示会をやらないブランドのほうが格好良いですよ」って言われていたので、僕たち、最初は展示会をやっていなくて。

細川雄太さん(以下、細川) LAで、Fear of God(フィア・オブ・ゴッド)のJerry(ジェリー)に、サンプルを車のトランクに詰まっている状態で見せてもらったっていうやつですよね。

POGGY 確かにあの時ジェリーに“No Show, No Showroom, No Exhibition”がブランドのコンセプトの一つだって言われて衝撃を受けたのは確かですが、今考えるとすごく無責任な発言ですね(笑)。

尾田 POGGYさんみたいな世界のカリスマが言うんだから、細川に「展示会をやったらダメだ」って言いました(笑)。ブランドとしては売れ始めるようになったんですけど、3年くらい展示会をやらなかったから、会社の中で大ヒンシュクを買いました。けど「やらないです」って言い続けていたら、「舐めてるのか?!遊びじゃないんだ!」って怒られて。それで初めての展示会を渋谷でやることに。

細川 僕はその時はまだREADYMADEも遊びの延長だったんで。

POGGY 逆に「展示会やらなくてラッキー!」みたいな感じですか(笑)?
細川 そうですね(笑)。作ったものはMaxfield(マックスフィールド)が全部買ってくれてたんで、そんなに困ってもいなくて。

尾田 マックスフィールドが他で売るなと言っていた時代だったんで。だから、その頃、他のお店に卸したものが売れ残っても、全部返品してもらってそれをマックスフィールドに買ってもらっていました。

POGGY 今でこそ、展示会をやらないとか、ウェブを作らずにインスタだけでいくっていうブランドはあると思うんですけど、READYMADEってそういうやり方が早かったですよね。

細川 未だにウェブはないですからね。通信販売もしてないし。閉鎖的なほうが面白い感じはしますよね。分からなかったら、調べようとするじゃないですか。最初から全部見えてしまったら、すぐに終わってしまいそう。

POGGY 実際、READYMADEってかなり謎に包まれていますよね。

細川 「日本のブランドなの?」って、今でもたまに言われますもんね。でも、それで良いんです。

POGGY 普通は、例えば新しい商品が出来たら、それを「この雑誌に掲載してもらいたいから、売り込みに行こう」とか、「このセレクトショップが良いから、ここに持って行こう」みたいなことをやると思うんですけど、READYMADEって、そういうことを全くやっていないんですよね。日本の雑誌じゃなくて、HYPEBEAST(ハイプビースト)みたいなところが取り上げたり。あとは周りの友達が盛り上げてくれるみたいなやり方って、日本ではREADYMADEが早かったんじゃないでしょうか。
細川 本当に周りの人が流行らせてくれたというか、神輿担いでくれたような感じですね。

POGGY 2017年にハイプビーストのトップブランド(『Top 10 Emerging Fashion Brands 2017』)に選ばれていましたけど、その頃は結構いろんなところとコラボしたり、飛び回っていましたね。

細川 そうですね。飛び回っていました。

POGGY マックスフィールドでレコード(記録)を作ったりとか。どういうレコードでしたっけ?

細川 1日の売上金額ですね。マックスフィールドのお店のラックから、商品がすべてなくなりました(笑)。

尾田 しかも、それがポップアップのプレオープン日で。一般のオープンが次の日だったのに、売るものがなかった(笑)。

細川 翌朝の5時から並び出したお客さんもいたみたいで(笑)。

POGGY その時って、フィア・オブ・ゴッドとJust Don(ジャスト・ドン)とA BATHING APE(ア・ベイシング・エイプ)のコラボと……。

細川 あと、1500万円くらいのバッグを作りました。あとはDaniel Arsham(ダニエル・アーシャム)と熊を作ったり、Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)のドレスとか。
尾田 そのドレスを作るにあたって、細川は過去のコレクションピースが揃っているアーカイブ倉庫に入れさせてもらったんですよ。

POGGY それはすごいですね!最近ではTravis Scott(トラヴィス・スコット)とのコラボレーションが話題になりましけど、ミュージシャンでいち早く着たり、使ってくれた人って誰ですか?

細川 実は僕の鞄を最初に買ってくれたのは、Ozzy Osbourne(オジー・オズボーン)なんですよ。多分、僕が初めて作った鞄だと思うんですけど、マックスフィールドで買ってくれて、それを娘にプレゼントして。

POGGY マジですか?!(笑)

細川 だから、一番早かったのはオジー・オズボーンかもしれないです(笑)。

尾田 しかも娘が、その鞄を持ちまくってくれて。当時、オジー・オズボーンって家族でテレビに出てたりして話題になっていて、パパラッチされるたびに、READYMADEの鞄を持っていたんですよ。そういう写真がタブロイド紙とかに載っていて、俺たちも「また載った!」って喜んで(笑)。

細川 それから、モデルのBella Hadid(ベラ・ハディッド)さんとか、インフルエンサー的な人が持ってくれたりしました。

尾田 ミュージシャンだと、一番最初にインパクトの大きかったのはErykah Badu(エリカ・バドゥ)じゃないですかね。大阪のアトリエまで来てくれて。

細川 ある時、突然メールが来たんですけど、エリカ・バドゥのことは全然知らなかったんで、「アトリエに来るとか言ってるけど、誰なんだろう?!」って(笑)。

尾田 まさか本人が来るとは思っていなかったけど、黒塗りの車2台で来たんですよ。「とりあえず、今晩のステージで着させて」って言われて、サンプルを渡したら、その日の衣装にしてくれました。一曲目から、エイプのために作った非売品のボクシンググローブを付けて、ボクサースタイルで大阪のビルボードに登場するっていう(笑)。
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