祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.17 『PLEASE』編集長 北原徹さん
FASHION / MEN
2017年3月15日

祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.17 『PLEASE』編集長 北原徹さん

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今回のゲストは2016年3月に創刊した雑誌『PLEASE』編集長の北原徹さん。『PLEASE』は創刊号からコム デ ギャルソン オム プリュスを特集し、2号連続でポーターとコラボレーションしてバッグを制作するなど大きな話題を集めるファッション誌だ。撮影から編集まですべてを自身がディレクションしていることでも注目されている。立ち上げのきっかけとなったエピソードを交えながら、北原編集長のマガジニストとして『PLEASE』に懸ける想いを探った。

Interview by SUKEZANE TomokiPhotographs by YABUKI Takemi (W)Text by ANDO Sara (OPENERS)

『Olive』のような雰囲気でメンズ雑誌を作りたかった

祐真朋樹・編集大魔王(以下、祐真) 2016年3月の創刊から4号目を数えますが『PLEASE』、とてもいい展開になっていますね。

北原徹さん(以下、北原) おかげさまで、ありがとうございます。

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祐真 立ち上げたきっかけはなんだったんですか?

北原 15年ぐらい前から自分で何かやってみたいなと思っていたんです。まだリニューアルする前の『POPEYE』編集部にいた頃でしたね。当時からとにかくいろんな実験をしてみたくて、4×5のカメラ(大判カメラ)を買って自分で撮影してみたりして。まだまだフィルムが使える環境だったので、試せることは何でもしたかったんです。

祐真 懐かしいですね。

北原 雑誌がどんどんカタログ化していくような時代で、祐真さんと一緒にリニューアルを手掛けた『POPEYE』では、世界に通用するファッション誌を目指せたとても良い経験でした。多くのビッグメゾンが『POPEYE』に載りたいと言ってくれていたので。同時に、自分で何か『Olive』のような雑誌を作ってみたいって思うようになっていったんです。

祐真 確かに『PLEASE』には『Olive』のような世界観がありますよね。

北原 キャリアとしてはメンズ誌が長いので、1号目は『POPEYE』の流れでメンズブランドを特集したのですが、作っている最中にはすでに『Olive』のような女性誌がやりたいと思っていました。

祐真 『an an』編集部も長くなかったっけ?

北原 『POPEYE』のほうがちょっと長いんですよ。8年ちょっと在籍していたので、やっぱりメンズのほうが得意は得意なんですよね。

祐真 だけどやりたいのは『Olive』だったと。

北原 まさしくそうですね。雑誌を作るなら絶対に『Olive』だと思っていたんです。

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祐真 何か思い入れがあったんですか?

北原 好きだったんですよ。可愛いというのは良い言葉だなとずっと思っていました。スタイリストの近田まりこさんや西野英子さん、ヘアメイクの新井健生さんが全盛期だった頃の。

祐真 新井さんとはよく仕事していたもんね。それが『PLEASE』2号目や、SUMIREちゃんと遠藤新菜ちゃんが表紙の『PLEASE』3号目につながるのかな?

北原 『装苑』専属モデルと『ノンノ』専属モデル、夢の共演です!彼女たちをモデルに、わかりやすい“可愛さ”を表現しました。でも彼女たちの写真を見ても『PLEASE』を女性誌とは思いませんよね。メンズだけど『Olive』っぽい雰囲気で作りたいと思ったんです。

祐真 面白いよね、展開が。

北原 まぁ、行き当たりばったりではありますけど(笑)。カルチャー色が強いですよね。

祐真 代表で、編集長で、写真も撮って。やっぱり、大変でしょう?こういう道をあえて選んだのはなぜなんですか?

北原 お金もないですしね(笑)。この前ゲストでラジオに出たのですが、最近買ったものは?と聞かれて、特に買ってないなと思いつつ、あ、『PLEASE』だ、と(笑)。

祐真 大きな買い物ですよね。

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100%マガジニストだけでできている『PLEASE』

北原 人生を買ったつもりで、それぐらいちゃんとやらなきゃと思っています。マガジンハウスにいた頃からずっと『Olive』を作りたくて、ファッション誌ってなんだろうってどこかでずっと考えていて、なんとか自分を説得しながらやって来ていたんです。大手にいたらできないこと。大手が悔しがること。自分にしかできないこと。そんなことを考えながら今『PLEASE』を作っています。

祐真 大きなエネルギーですよね。『PLEASE』という名前の由来はなんですか?

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北原 実はいくつか意味があるんです。元々響きがお茶目でいいなと思っていたのですが、ではもうちょっと調べてみようとなった時に、僕が高校生の時に初めて買ったロックアルバム、RCサクセションの「PLEASE」のことを思い出したんです。彼らがリリースした4枚目のアルバムタイトルなのですが、初めて自分たちの手によってレコーディングが実現したことから「このレコードには、人工甘味料、合成着色料、防腐剤などはいっさい使用されておらず、すべてバンドマンだけで演奏されています。安心して御利用下さい」と歌詞カードに注記されているんですよね。その前に発売されたシングル「STEP」は、スタジオミュージシャンによる演奏だったので、その鬱憤が晴れたわけですね。だから『PLEASE』もマガジニストだけでできているという気持ちを込めました。

祐真 それはいい話ですね。

北原 それからビートルズの「PLEASE PLEASE ME」。PLEASEには2つ意味があるんですよね。直訳すると「どうか僕を喜ばせてくれ」となるんです。PLEASEっていいなと思っていたら誰も商標を取っていなくて、これはもう僕のものだ!という感じで嬉しかったですね(笑)。でも最近調べていたら九州JRが『PLEASE』というフリーマガジンをずっと作っているみたいなんですよ。商標は取っていないみたいですが、むこうのほうが歴史は長いです(笑)。

祐真 会いに行ったら?面白そうじゃない?そういえばPLEASEともう一つで迷ってなかった?

北原 なんでしたっけ……。PLEASEがあまりにもしっくりきちゃって、もう忘れちゃいました(笑)。それから今でこそみんなが使うようになりましたが「SHARE」も商標取っておけばよかったなぁと。洒落、って読めるのがいいですよね。でもPLEASEは小学生でもわかるシンプルな言葉なのでとても気に入っています。

祐真 なんとなくパンクが続いていますね。

北原 好きですからね。ファッションはパンクですから。

祐真 まぁ、こういうもの作ったらパンクですよね。大手でできないものを、と言っている時点でパンク。

北原 続けないと価値にならないと思うんですよね。

祐真 自費出版している人って結構いると思いますが、3号を越える人ってまずいないと思うんですよね。だから4号はすごいですね。

北原 半年経ちましたね。1年分、できました。今日びっくりしたのが、とある広告代理店から媒体資料くださいって連絡がきたんですよ。嬉しかったですね。

祐真 すごいですね。来るよ『PLEASE』!

北原 来たらいいですけどね。やっといろんなことが回り始めるので。

祐真 来るって。やめないほうがいいですね。やめる気もないでしょうけど。

北原 乗りかかった汽車ですね。暴走列車です。

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祐真 終着駅は?

北原 ないですね。普通に定年を考えながらサラリーマンやっていたら縮こまってしまっていたかもしれません。

祐真 タイムリミットはないわけですからね。今後も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

北原 こちらこそありがとうございました。

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北原 徹|KITAHARA Toru
マガジニスト。ファッション誌『PLEASE』編集長。マガジンハウスで『an an』『クロワッサン』など多くの雑誌を手掛け、『POPEYE』では副編集長を務めた経歴を持つ。Ray and LoveRock(レイ アンド ラブロック)名義でフォトグラファーとしても活躍中。

           
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