連載|祐真朋樹対談
FASHION / FEATURES
2020年3月26日

連載|祐真朋樹対談

vol.42 マーティン・ポッターさん

今回のゲストは、アクティブでファッション好きなサーファーに人気のアイウェアブランド「DONT PANIC(ドントパニック)」のオフィシャルイメージキャラクターを務めるMartin Potter(マーティン・ポッターさん。Pottz(ポッツ)の愛称で知られる彼は、80年代から90年代のサーフシーンを盛り上げたプロサーファーの一人。サーフィン・スケートボード・スノーボードなどのボードカルチャーとファッションの展示会「INTERSTYLE 2020」に合わせて来日したポッツさんに、自身のファッション観から海に対する思いまでお話をうかがいました。

Interview by SUKEZANE Tomoki|Photographs by MAEDA Akira|Text by ANDO Sara

“運命の波”を待ちながらサーフィンを続けていきたい

祐真朋樹さん(以下、祐真) 僕はずっとファッションの世界でやってきて、ポッツさんはサーフィンの世界で活躍されています。お互いにあまり共通点はないかもしれませんが、年が近いので親近感がわきました。

マーティン・“ポッツ”・ポッターさん(以下、ポッツ)1965年生まれ同士ですね!確かに業界は違いますが、ファッションは間違いなくサーフィンの世界に取り入れられています。私の若い頃はサーフスタイルといえばボードショーツとTシャツでしたが、今はオシャレなものが増えて、ファッションとサーフィンのクロスオーバーが顕著に見られるようになってきていますね。Kelly Slater(ケリー・スレーター)というサーファーがOuterknown(アウター・ノウン)というブランドを立ち上げたり、Gucci(グッチ)がLeonardo Fioravanti(レオナルド・フィオラヴァンティ)という若いイタリア人のサーファーにスポンサーになったり。ファッションコンシャスなサーフブランドがたくさん出てきていることも、サーファーたちのファッションに対する意識が高まってきている証拠だと思います。

祐真 ポッツさんの世代もオシャレだったのでは?

ポッツ そうですね。ファッション好きなサーファーは多かったし、私自身、色々なサーフブランドとコラボしていました。海の中でも陸の上でも格好良い服を身につけたいと思うサーファーは私だけではなかったはず。サーフィンをする時に穿いていたのはもっぱらライクラ®ショーツ。見た目の良さだけでなく、パフォーマンス的にも素晴らしいんですよ。水の抵抗がほとんどなく、水中を魚のようにスムーズに泳げる。海の中では機能性が重要だからね。それに当時、日本に来ると、東京でショッピングをするのが楽しみのひとつでした。古いジーンズをリメイクした美しいデニムジャケットを買ったのを覚えています。みんなに「格好良いね!」って褒めてもらえて嬉しかったなぁ。あの頃の私は髪も長くて、ドレッドにしていて。常に人と違うことがしたくて、クールでありたいと思っていました。そのおかげでGOTCHA(ガッチャ)に携わることができたし、サーファーにとって、ファッションはとても重要な役割を果たしていましたよ。

祐真 ガッチャ、懐かしい。80年代ですね。
ポッツ そうです。当時、ガッチャはスポーツウェアブランドのナンバーワンでした。デザイン、機能性、すべてにおいて格好良かった。着心地が良いだけでなく、クールで、気分も良くなるようなファッションを常に提案していたんだ。

祐真 ポッツさんはスタッフとして関わっていたんですか?

ポッツ 私のスポンサーをしてくれていたんです。でも、サンプルを試着して意見したり、デザインに携わったりもしましたよ。サーファーはほとんどがアスリート体型だから、肩幅をもっと広くしたほうがいいとかね。

祐真 ガッチャはウェットスーツも作っていましたよね?

ポッツ はい。サーフィン用のウェアはもちろん、トータルファッションとして多様なアイテムを展開していました。

祐真 今はもうないんですか?

ポッツ あるけど、オーナーが変わってリブランディングを何度もした結果、当時とはまったく違うブランドになってしまった感じですね。
祐真 そもそもはどこのブランドなの?

ポッツ アメリカです。Quiksilver(クイックシルバー)にスポンサーされていたプロサーファーのMichael Tomson(マイケル・トムソン)と、Joel Cooper(ジョエル・クーパー)が、自分たちが着たいと思える格好良いウェアがないということで立ち上げたブランド。

祐真 今日のポッツさんはクールなコーディネートですね。僕がイメージするサーファーのファッションとは違うと思ったのですが、いつもこういう感じのスタイルが多いんですか?

ポッツ そうですね、普段はこういう服を着ることが多いかな。仕事の日は襟付きのシャツを着るし、プライベートでもジーンズはあまり穿かない。今は人前で話すことが多いから、常にスマートなファッションを心掛けています。若い時はどんな格好をしていても許されるけど、もういい大人だからね(笑)。

祐真 グレートーンがいいですね。ソックスも可愛いね。

ポッツ ありがとう。ワニのプリントなんですよ。気に入っているんだ。仕事の時はスマートな格好をしないといけないから、靴下で遊ぶ。パンツの裾で隠せるからね。楽しい靴下を集めるのが好きなんです。
祐真 いいですね。さっきも話に出ましたが、仕事の時は襟付きのシャツを着る、ということに対してポッツさんなりの理由があったら教えてください。

ポッツ うーん、なんでしょうね。子どもたちにクールなパパって思われたいというのが一番の理由だったりするかもしれません。それから、私は映画に出てくるファッションを参考にするのが好きなんです。例えば、バート・ランカスターが出ているような昔の映画に描かれている男性はみんなスマートじゃないですか。あの当時の男性が旅行に出掛ける時のファッションは、シャツにスーツとドレスアップしていることが多い。紳士的なファッションはきちんとして見えますよね。今は、旅行となるとTシャツにショートパンツとラフなファッションになりがちでしょ。でも、最近の若い世代はそういうきちんとした感覚が戻ってきているように思います。

祐真 素晴らしいことだと思います。ところで、ポッツさんもドントパニックの老眼鏡を使ってますか?

ポッツ もちろん愛用していますよ。最近急激に老眼が進んできちゃって。

祐真 僕もです。

ポッツ WSLのコメンテーターをするようになってから、スクリーンでスコアやライディングを見たりと目を酷使することが増えたからかな。それで視力が悪くなってしまった。だからドントパニックに出会えて本当によかったよ。スタイリッシュで、若々しくクールに見えるから、自分の年齢を意識せずに済む(笑)。父がかけていたような老眼鏡とはまるで違うところも気に入っています。祐真さんもツートーンが似合ってますね。
祐真 ありがとう。ところでポッツさんは現在はどちらにお住まいなんですか?

ポッツ 今はオーストラリアのメルボルンに住んでいます。

祐真 素敵な街ですよね。メルボルンでオススメの場所があれば教えてください。

ポッツ メルボルンは多国籍な街なだけあって、世界各国の料理が楽しめます。イタリア、ギリシャ、エスニック、アジア……。素晴らしいレストランがたくさんあって、どこへ行っても美味しいんだ。オーストラリア料理といわれてもピンとこないかもしれないけど、イタリアンも和食も最高だし、何を選んでもはずれがない。ファッションを楽しみたいなら、チャペルストリートは必ずチェックしてほしいエリアですね。東京のような雰囲気で、みんなスマートでとてもオシャレなんだ。それからレーンウェイと呼ばれる路地裏や小道アーケードを散歩するのもオススメです。いろんなお店があって楽しいですよ。トラムで観光名所やマーケットなど、美しい街並みを巡るのもいいですね。

祐真 海はどうですか?

ポッツ ビッグウェーブで最高!メルボルンはオーストラリアの最南にある、海に面した港町です。大きな嵐がしょっちゅう通り過ぎるから、南から押し寄せて来る波が大きいんだ。あまり人も多くなくて静かだし、サーフィンをするのに適した街ですよ。

祐真 最近はどれくらいの頻度でサーフィンをしているんですか?

ポッツ ほぼ毎日ですね。
祐真 世界中を旅する際はやっぱり海に入るんですか?

ポッツ 旅行より出張が多いから毎回ではないけど、時間に余裕がある時は必ず入ります。世界中のどこへ行っても、海に入れば家に帰ってきた感覚になるから。地域によって水温や塩分の濃度の違いはあっても、海に入ればフィーリングは同じ。世界中のどこにいても家にいるような感じがして落ち着くんだ。

祐真 サーファーならではの感覚なんでしょうね。

ポッツ それにずっとサーフィンを続けているからか、あまり年齢を感じないんです。もっとも、年齢はただの数字だって言いますよね。まだまだサーフィンがしたいし、できると思っています。サーフィンは続ければ続けるほど健康でいられるスポーツ。私にとって海は特効薬のようなもの。嫌なことがあったり、落ち込んだりしても、すぐに癒やされて元気になれるハッピーな場所です。海の中では何もかもすべて忘れて、ただ目の前に広がる海にフォーカスして、次に来る波を待つだけ。青い海はあまりにも美しくて、陸の世界で何が起きているのかなんて関係ないと思えるほど。それに、もしかしたら次に来る波は人生で一番の波かもしれない。それがサーフィンの魅力だと思っています。波はとどまることなく常に変化しているし、動いている。毎日同じ海に入っても、違う体験ができる。サーフィンをすることで、海のことや波のこと、自分自身のことを絶えず学ぶことができるんですよ。運命の波を待ち続けながらね。

祐真 素敵なストーリーです。知り合いのサーファーが、海でゴミを拾う活動をしているのですが、僕も見習おうと思っています。ポッツさんもやってますか?

ポッツ もちろん!海の恩恵を受けるサーファーは、戦場のフロントラインのように海を守る責任があると感じています。私たちに素晴らしいものを与えてくれる海を美しく保つことで恩返しをしたいという気持ちです。

祐真 その通りですね。みんなでやれば気分もいいですよね。ずっと元気でいられるように、お互い頑張りましょう。今日はありがとうございました。
DONT PANIC(ドントパニック)
サーフィン、 スケートボード、 スノーボード……まだまだ夢中で遊び続ける現代の大人たちへ。 ライフスタイルに合わせて選べる“ハイブリッドリーディンググラス”を擁するアイウエアブランド。
オフィシャルサイト|https://dontpanic.tokyo/
Instagram|@dontpanic.tokyo
                      
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