マツダのデザイン力を分野を超えアピール

ミラノ デザインウィークを、自社のデザイン力をアピールする好機ととらえるのが、マツダだ。2015年は、家具やファッションの展示が多いブレラ地区で、「Bike by KODO concept」と、「Sofa by KODO concept」を、「CX-3」および新型「ロードスター（あちらではMX-5）」とともに展示した。

マツダデザインと銘打たれたショーウィンドウごしの展示ルームは、黒を基調にしたシックなもの。足を踏み入れると、マツダの特徴であるソウルレッドと呼ばれる凝った塗色に塗られた2台の車両が置かれた。主役はもうひとつ、このデザインウィークのために製作されたソファとバイクだ。

Sofa by KODO concept

Bike by KODO concept

「ソファは安定感と動きを同時に表現するのに心を砕きました。バイクのほうは、“凜”というコンセプトに基づいて品格と緊張感を表す造型を目指しました」。会場で、マツダのデザイン部の担当者がそう説明してくれた。

ソファは、造型は同社のデザイン部が手がけ、製作はミラノの家具職人にまかせた。ぱんっと張った革が美しく、脚部はアルミニウムと、よく見ると素材も凝っている。さらに「ここに注目してください」とデザイナーに促されて背後に回り込むと、赤い差し色が入っている。さながらマツダ車のグリルのようだ。ちょっとした遊び心だが、目立たぬようにやるのが「日本的なデザイン」ということだった。

マツダ職人の手になる鍛造チューブ

いっぽうバイクは、そもそもシンプルな造形美を活かすためにピストをベースにデザインしたかったとか。マツダのデザイナーには自転車好きが多かったので、コンセプトメーキングの時からかなり盛り上がったプロジェクトになったそうだ。

「ホイールとペダルはマービック製ですが、残りはほぼ自社製。マツダの職人がクロモリ鋼を鍛造してチューブを作っています。円断面のチューブだと、うっかり太くするとクラシックな雰囲気になりすぎるので、径のバランスには気を遣っています」

チューブ径を途中で変えることでモダンさをうまく演出

ウィンドウには誇らしげにマツダデザインの文字

ハンドルバーをよく見ると、内部が赤色で塗装されている。さらに、サドルのところのトップチューブの部分に、いわゆる面とりがしてあって、まるでクルマの側面のようなキャラクターラインが見てとれる。「MX-5のイメージを活かした」（デザイナー）というのだ。

周囲はレストランも多く、イタリアの常で路上にまでテーブルが並べられて、昼も夜も大賑わいだった。その喧噪とは対照的に、あくまでもクールに自社のデザイン力をアピールするマツダの姿は、もうひとつのミラノ デザインウィークの顔という印象を与えてくれた。

• 特集｜ミラノサローネ国際家具見本市 2015