INTERVIEW|桐島ローランドが考える“3.11後”
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2015年1月5日

INTERVIEW|桐島ローランドが考える“3.11後”

INTERVIEW

福島県南相馬市にサステイナブルなコミュニティカフェを

桐島ローランドが考える“3.11後"の地域再生

カメラマン、クリエイターとして幅広いプロジェクトにかかわる桐島ローランドさんが、福島第一原発から20km圏内の福島南相馬市の小高区に、人びとが集う場所であるコミュニティカフェを作りたいと動きはじめています。なぜ福島なのか、そこにカフェを作る意義や構想をお聞きしました。

Text by MINOWA Yayoi

次世代の生き方を、南相馬市から発信する

東日本大震災発生から3年が経つ。いまだ26万人以上の方々が故郷に帰れないという状況がつづいている。今の福島がどうなっているのか、リアルな情報も少なくなり、震災直後のような関心が薄れているのも事実のようである。

桐島ローランドさんは、福島県の相馬市に知り合いがいたこともあり、震災直後からたびたび福島県南相馬市を訪れていた。福島第一原発から20km圏内の南相馬市小高区もバイクなどで何度か通ったという。

ここは朝から夕方までしかひとが入れない「避難指示解除準備区域」と、ひとの立ち入りができない「居住制限区域」がある。最近では昼間立ち入りのできる地域には、理髪店などの事業を再開するひとも出てきているという。

桐島ローランド|南相馬 02

「ある意味、一番厳しい場所だと思います。ただ、こういう場所に来て実際の状況を見て、そして地元のひとと話をすると、今の福島の状況を人びとに知ってもらうための場所の必要性を強く感じています」と、ローランドさんは話す。

「震災や原発事故からの教訓を風化させてはならないし、こういう厳しい条件の場所だからこそ、次世代の生き方を提案することに意味があるのではないか」と、小高区に人びとが集えるコミュニティカフェをつくるために動きはじめている。

エネルギーについて学ぶこともできる場所にしたい

構想しているカフェは、現在も放置された建物をリノベーションし、一般のエネルギーをなるべく使わずに自立できる仕組みを実際に建物に取り入れ、トークショーやライブ、地元の人びとと交流できるようなイベントを頻繁に開催したいと考えているという。そこでは都市に住む若者も、福島に住む人びとも、また福島第一原発で働く作業員の方々も、そして被災地を自分の目で見たいというツーリストも、立ち寄って話をしながらおいしいコーヒーが飲める場所になる。

元々エネルギー問題に関心があったというローランドさんは、蓄電池やソーラーパネルだけでなく、自然の力を建築にうまく使う“エクセルギー”の考え方も取り入れたいという。エクセルギーとは、雨水を太陽熱で温めて、その放射熱をうまく使って暖かさを生み出したり、夏には雨水と風を使った冷放射を活用するなど、エネルギーに頼らなくても快適性を生み出す仕組みとして、環境建築家の黒岩哲彦氏が提唱。カフェにかかわるエネルギー収支もオープンにして、人びとや子どもたちがエネルギーについて学ぶこともできる場所にしたいという思いもある。

実際の設計やリノベーションには、サステイナブル(持続可能)な建築で豊富な経験のある建築家の隈研吾氏らが、メンバーとして加わる予定。ローランドさんの自宅の設計も担当したという気心も知れた隈氏とのタッグは、あらたな展開を見せてくれるはずだ。

「過疎化した地域に若者が入っていくことで何らかのチェーンリアクション(連鎖反応)が起こる例をいくつも実際に見ています。今は活気のない場所だけれど、地元のひとを巻き込みながら若者たちがあたらしいことをはじめることは、何らかの動きを作る起爆剤になる」と、ローランドさんは期待を込める。

桐島ローランド|南相馬 03

桐島ローランド|南相馬 04

相馬を“現代の鉄馬”・カスタムバイクの産地に

ローランドさんには、もう一つのプランがある。それは南相馬をカスタムバイクで有名にしたいという構想だ。福島県相馬には「相馬野馬追」という千年以上つづく伝統的な祭りがある。甲冑に身を固めた500余騎の騎馬武者が、腰に太刀、背に旗指物をつけて疾走するという豪華かつ勇壮な祭りだ。南相馬市には馬追いの歴史が息づいている。

そこで現代の鉄馬といえるオートバイを、南相馬のひとつの産業に育てられないかと考えたのだ。「日本のカスタムバイクはその品質の良さで、世界中で人気のある、いわばクールジャパン商品」とバイクを趣味にし、レースなどにも出場経験のあるローランドさんは説明する。

「相馬はスペースもたくさんあるし、商品がバイクなら風評被害の問題もほとんど影響がない。逆に福島産の意味を世界が受け入れてくれるはずです。東京からもさほど遠くないし、若者がかかわれる事業になれば」とその意義を語った。

もちろんコミュニティカフェとも関連させて、多くのひとが訪れる場を作りたいという。さらに、コミュニティカフェにしても、カスタムバイクショップにしても、作っていく過程を公開し、そのストーリーそのものに共感してもらうことが大事だと強調する。

今回のプランに共感してくれたひとからの、クラウドファンディングによる事業も念頭においているというこの計画。今後もその展開を追っていきたい。

桐島ローランド|Rowland Kirishima
写真家・映像作家・クリエイター。ニューヨーク大学・芸術学部写真科卒業。ニューヨークで写真家として活動をはじめ、1993年に活動の拠点を東京に移す。父親はアメリカ人、母親は作家の桐島洋子。兄弟にモデル・女優の桐島かれん、エッセイストの桐島ノエルがいる。2002年に結婚。子煩悩な2児の父親。2007年のダカール・ラリーにモーターサイクル部門で初参戦し、完走。2013年の参院選に東京選挙区から立候補。議席獲得には至らなかったものの、32万票強の支持を得た。現在は、写真家として多忙な日々を送りながら、福島原発事故の被災地の支援や、ボランティア活動など、自分の力でできることをコツコツとつづけている。共著に『桐島君、何だって君は選挙なんかに出ようと思ったんだい? 』(田原総一郎氏との対談/マガジンハウス刊)がある。
http://rowland.jp/

箕輪弥生|MINOWA Yayoi
環境ライター・NPO法人「そらべあ基金」理事。環境関連の記事や書籍の執筆、東京・谷中近くのグリーンなカフェ「フロマエcafé&ギャラリー」を営むなど、自然エネルギー、オーガニックな食や自然素材などを啓蒙・実践する活動をおこなっている。著書に『エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)ほか。
http://gogreen.petit.cc/

           
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