NYCはひとつの街のなかにすべての世界があり、すべての優秀なバーテンダーがいる

――ハーブやスパイスなどを自由に組み合わせるカクテルである、君の“ミクソロジー”へのアプローチはどういったものなのかな？

カクテルメニューをつくるにあたって私のアプローチは、それぞれのバーにおける、それぞれのカクテルのひとくちを通して、ノスタルジックな感情、優雅なやすらぎの時間、そして未知なものに対してのインスピレーションを呼び起こすこと。この考えは一個人、ひとつの場所、そしてひとつの体験に由来していることかもしれないし、もしくは、それぞれの場所で、私が心に描いたインスピレーションに依存している特別なポイントなのかもしれないのだが……。

カクテル「The Dodd」
PHOTO BY Jim Franco of Williams Sonoma

カクテル「murray sour gin blossum」
PHOTO BY Jim Franco of Williams Sonoma

――もっともつくるのが好きなカクテルって何かな？

私にとって、もっともつくるのが好きなカクテルは「Right know」かな。フレッシュなレモンジュースとオレンジジュース、炙（あぶ）ったカルダモンに、日本のウイスキーをシンプルにブレンドしたサワーだ。ひとくち味わったときにまちがいなくエキゾチックでノスタルジックな感情を呼び起こすことができるだろう。

――じゃあ、君がもっとも飲むのが好きなカクテルって何？

もっとも飲むのが好きなカクテルは、私の選んだバーボンやライウイスキーの格別な香りと風味を強調した、ビターのスペシャルブレンドでつくった「Old-Fashion」かな。

──NYCはカクテルにおける世界の首都だろうか？

カクテル「rhubarb sophie」PHOTO BY Jim Franco of Williams Sonoma

NYCはひとつの街のなかにすべての世界がある。そこには世界中からニューヨークへとやってくる、すべての優秀なバーテンダーがいる。だからほかのどの都市よりも豊かな知識と技術に触れることができるだろう。

そのうえで自分で発見したこと、それは、自分自身がその飲み物の内容についての小さなニュアンスや、またそれらの味のバランスを感じることができるようになったことだ。自分自身がまちがいなく別のレベルへと変化を遂げた。そしてそれこそが、ほかのバーテンダーが成し得ていない成功へと、私を導いたのだと思う。

――僕はウイスキーやバーボンを使うカクテルへの回帰を最近感じているんだけど、君が思う次のトレンドって何だろう？

私はバーボンやウイスキーなどのダークスピリッツがとくに注目を集めつづけると思う。一般の人びとがよりリカーの質に対して敏感になれば、彼ら自身が、より興味深いカクテルはどのような味がして、そして何が使われているかということにも敏感になるだろうからだ。たとえばラムはそんな動きのなかにある存在といえる。なぜならその高い質と、長く熟成された時間をもちながら、人びとはとても安い価格でラムを味わうことができるからだ。私は、それほど複雑にならないプロセスをもとにしながら、奥行きのある味わいをもたらすスピリッツを組み合わせ、特別なビターやチンクチャー（ハーブ酒）をつくりだすことによって、スピリッツそのものの存在を際立たせようとしている。

――ありがとう！

さて、正直、バーやクラブへはそんなに行かないけれど、僕の経験では、素晴らしいカクテルは下記の場所で楽しめる。食べ物も感動的なほどにうまいけれど、予約するのもなかなか難しいところだ（でもバーは予約が必要ないので）。

11 Madison Park, 11 Madison Avenue, NYC.
www.elevenmadisonpark.com

Minetta Tavern, 113 Macdougal Street, NYC.
www.minettatavernny.com

Macau Trading Company, 311 Church Street, NYC.
www.macaonyc.com

参考資料（英語）：
http://www.nytimes.com/2009/06/24/dining/24guide.html
http://www.nytimes.com/2009/06/21/fashion/21shake.html?_r=1&hpw