第5回 ジェーン・レイ――ファイヤーキングの成功
第5回
ジェーン・レイ――ファイヤーキングの成功
文=KANAZAWA Ariadna写真=Jamandfix構成=TAKEISHI Yasuhiro
成功の牽引役、ジェーン・レイの魅力
ファイヤーキングレーベルのなかでも、最初にジェイドカラーを印象づけたシリーズといえば、やはり「ジェーン・レイ」ではないでしょうか。
“G-3800”とナンバリングされたこのシリーズは、時代によってアイテム数の減少はありながらも、シリーズ中もっとも長い期間である1945年から63年まで製造され続け、ファイヤーキング成功への足がかりとなったのです。
現在でもいちばん手に入れやすいと思われるジェーン・レイですが、40年代に製造されたジェイド以外のカラーなど幻のアイテムもいくつかあります。
とくにプロトタイプであるこのスーププレート(写真上下)は、まだ大規模なファイヤーキングブームがはじまる前だった2002年のプライスガイドでも、なんと$600(約7万2000円)もの高値を付けていました。
また、デミタスコーヒーを飲む習慣がないゆえに、アメリカでおそらくごく少量のみがラインナップされていたデミタスカップも、いまとなってはレアアイテムといえるでしょう。
ジェーン・レイの特徴といえば、“RAY”が意味する「放射線、光線」のように、細かくフチに向かって伸びる溝や、薄手のミルクガラスの特徴である美しい透け感を最大限に生かした、シンプルなデザイン力だと感じています。
“彼女”がアメリカの家庭にやってきた
また、その名の由来にかんしては女性の名前という説もあります。なぜなら、ファイヤーキングとしていちばん最初に販売された「アリス」シリーズも、女性の名だったからです。
この2つのシリーズはほとんど同時期に製造を開始したこともあり、当初はそれぞれジェイドカラーのミルクグラスと“ヴィトロック”と呼ばれた陶器のような質感のガラス製が販売されていました(ジェーン・レイのみ他にアイボリーのミルクグラスもありました)が、'48年にアリスの製造が終了するとジェーン・レイはジェイドのみに力を注いでいきます。
そして大々的な売り場での宣伝効果や「スタータスセット」「フルセット」と呼ばれていたセット販売により、購入してすぐにキャビネットを美しく飾れることが、当時アメリカの女性たちの心をしっかりと掴んだのです。