トヨタが燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発表|Toyota
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2015年1月23日

トヨタが燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発表|Toyota

TOYOTA MIRAI|トヨタ ミライ

FCVでも“FUN TO DRIVE”

トヨタが燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発表

トヨタはセダンタイプの新型燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を、トヨタ店、トヨペット店にて、12月15日より発売を開始する。価格は723万6,000円で、販売目標台数は、2015年末までに約400台とし、それ以降は販売状況を見ながら判断される。

Text & Event Photographs by UCHIDA Shunichi

「自動車の次の100年」が合言葉

開発陣の合言葉は、“自動車の次の100年”だったと、トヨタ自動車製品企画本部主査の田中義和氏は明かす。この合言葉をもとに、注力したポイントは5つあった。すなわち、「小型高性能新トヨタFC(フューエルセル:燃料電池)システム」「FCVならではのパッケージング」「モーター走行によるFun to Drive」「知恵を形にしたデザイン」「FCVならではの機能」である。

「自動車の次の100年のために、水素エネルギー社会実現の先駆者となるクルマ。このコンセプトを実行するため、持てる技術をフル投入し全力で開発を進めてきた。その結果、環境性能が優れているのはもちろん、運転して楽しく、静かで気持ちの良い快適な乗り心地を備え、ずっと乗っていたくなるようなクルマを発表することができたのではないかと思っている」と田中氏。

そして、「このクルマが、支持されることで水素社会に向けた確実な一歩が踏み出されることを願っている」と期待を滲ませた。

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20年以上の開発の集大成

まず新トヨタFCシステムは、20年以上にもわたる開発の集大成で、コンパクトでありながら非常に高性能なシステムである。FCスタック(セルを重ねてひとつにまとめたもの)は、水の電気分解の逆、すなわち、空気中から取り込んだ酸素と、高圧タンクから送られた水素が化学反応をし、最大114kwの電力を瞬時に生み出す。サイズは非常にコンパクトで床下搭載が可能になったことから、今回のセダンパッケージが可能となった。

田中氏は、その性能の高さをエネファームなどの家庭用燃料電池と比べ、「小型でありながら、家庭用燃料電池の116倍以上のパワーを出さないといけない。そのためには、わずか1.3mm程度の厚みでセルを製造できる、高いレベルの設計が不可欠だった」と語った。

また、2本搭載される水素タンクの貯蔵性能も世界トップレベルで、「材料や生産技術の見直しを図り、コスト低減を進めている。くわえて、タンク強度をはじめとした万全の対応をすることで、安全性についてもガソリン車と同等のレベルを確保している」とし、高効率と安全性を高次元で融合したことを強調する。

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なお、このシステムを用いた水素の充填時間は、3分程度。1回の充填による走行距離はJC08モードで約650kmである。また、FCユニットのコンパクト化により大人4人が快適に移動でき、トランクには大型のスーツケースが収納できるパッケージを実現した。

TOYOTA MIRAI|トヨタ ミライ

FCVでも“FUN TO DRIVE”

トヨタが燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発表 (2)

上級セダンにも負けない乗り心地を追求

走りの面ではまず、最大出力113kw、335Nmのトルクを発生するモーターにより、高い加速性能を実現。特に追い越し加速で優れた性能を発揮する、とのこと。

さらに重視した点は静粛性だ。FCVはエンジン音がなく静かな反面、風切音やロードノイズが目立ってしまう。そこでMIRAIのウィンドウには遮音性の高い、アコースティックガラスが採用されると同時に、遮音材も効果的に配された。また、空力性能についても、排気管のないFCVならではの特徴を生かし、床下をフルカバーで覆うことで、スムーズな風の流動を実現した。

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走りの楽しさを追求するためにボディ剛性にもこだわった。「FCユニット搭載を生かしたボディ構造に加え、スタックフレームも熱可塑性炭素樹脂を採用し、高い剛性と軽量化を実現している」と田中氏。またリアサスペンションまわりに、ブレース(斜めの補強材)を追加し、剛性をさらに上げるとともに、サスペンションの動きをスムーズにさせることで、路面の凹凸を吸収し、上級セダンにも負けない乗り心地を追求したという。

「モータードライブ走行、低重心、高剛性ボディ、前後重量バランス、圧倒的な静粛性、空力性能といった要素を兼ね備えたMIRAIだからこそ、環境性能だけではなく、走りの楽しさ、“FUN TO DRIVE”を手に入れることができた」と田中氏は胸を張る。


TOYOTA MIRAI|トヨタ ミライ

FCVでも“FUN TO DRIVE”

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奇をてらうデザインには決してしたくない

MIRAIのデザインは “知恵を形に”をコンセプトに、一目でわかるあらたな価値をテーマとして生み出された。エクステリアデザインは、空気、即ち酸素を吸い込んで水を出す機能を形にすることで、FCVならではの先進性を表現している。

まずフロントは、空気を取り込む機能を左右2つのグリルで大胆にデザイン。ヘッドランプには、新開発の超薄型LEDランプを採用するなど、スタイリッシュで個性的な仕上がりとなっている。

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サイドビューは、ウォータードロップ(水滴)をイメージとし水の流れを表現。FCユニットおよび水素タンク部が収まるサイドシルからリアフェンダーにかけ、跳ね上がるように伸びるキャラクターラインが印象的だ。また、ピラーやボンネット下をブラックにすることで、ボンネットやルーフを浮いているよう見せるデザインは、MIRAIのエクステリアにおけるアイコンとなっている。

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室内全体は、側方から正面へとラウンディッシュに回り込んだコアとなる立体に、薄型の硬質パネルが上下から包み込む構成とし、一目でわかるあらたな価値を表現している。また、シートはパッドが3次元的にコアを包み込む構成とし、先進的なデザインと、ホールド性の良い快適な乗り心地を実現させた。これが、MIRAIの内装デザインでこだわりぬいたポイントだとトヨタは謳う。

「このクルマのデザインは、未来に相応しい先進的なものに仕上げることが大きな命題だった。しかし、奇をてらったものには決してしたくない。ユーザーがこんなクルマに乗りたい、水素で走るクルマはこんなに格好良いんだと憧れてもらうデザインにするために、徹底的にこだわった」と田中氏。

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FCVでも“FUN TO DRIVE”

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ユニークなウォーターリリーススイッチ

FCVならではの機能が、このMIRAIにもそなわる給電システムだ。外部給電機を接続することで、最大9kwの電力供給が可能になる給電機能を搭載している。災害などの非常時には、家庭や避難所でMIRAIを発電機として使い、大容量の電力を供給することができるので、万一の備えとして非常に心強い機能だ。

このクルマにはユニークな機能がもうひとつ。ウォーターリリーススイッチだ。発電で発生する水は、自動的に排水されるが、このスイッチを使えば好きなタイミングで排水できるという。

田中氏によれば、「たとえば地下駐車場に入る前に排水処理を済ませるといった実用的な活用を想定して設定したが、最初のうちは友人などに水の出るところを見せて盛り上がってもらったり、話題にしてもらえたら少しうれしい」とのこと。

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開発はプリウスよりも早く始まっていた

1960年代、トヨタはまだ地球環境問題やエネルギー問題が今日ほど顕在化していない時代に、ハイブリッド車の開発をスタートさせた。当初ガスタービンハイブリッドの開発を経て、1993年に初のハイブリッド車「プリウス」の開発がスタート。1997年に一般販売を開始するに至ったことはご存知の通り。現在は全カテゴリーにハイブリッド車をラインナップしている。

だが、トヨタ自動車代表取締役副社長の加藤光久氏によると、実はFCVの開発はプリウスに先行して、1992年からはじまっていたという。2002年12月には、世界に先駆けSUVタイプのトヨタ“FCHV”を日米に限定導入し、2005年モデルでは、国内で初めて型式認証を取得。試行錯誤を繰り返しながら愚直に開発に取り組みつづけ、以来、導入してきたFCVでの走行距離は200万kmを超える。

「これまでの研究と市場でのデータを開発にフィードバックし、クォリティを上げる努力を日々おこなってきた。FCスタックをはじめ、外部から調達するメーカーが多い高圧水素タンクなどFCVの心臓ともいえるFCシステムを、トヨタは自社で開発している。そのような努力はひとえに自動車メーカーとしてできることを、常に追求しつづけるトヨタのものづくりへのこだわりだ。MIRAIは、プリウスを超えるさらなるイノベーションの幕開けだと思っている」と」と加藤氏は強い口調で語った。

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FCVでも“FUN TO DRIVE”

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未来はトヨタだけでは実現できない

MIRAIの販売はトヨタ店とトヨペット店でおこなわれ、水素ステーションが設置されているエリアの周辺地域で、かつ、ユーザーのケアが確実にできる範囲から立ち上がる。今後は、水素ステーションの整備と歩調を合わせながら、販売エリアを徐々に拡大していくという。

トヨタ自動車代表取締役副社長の前川眞基氏はユーザーのケアについて、「MIRAIははじめての燃料や多くの新技術を活用しているため、安心してユーザーに乗ってもらうために万全な体制を構築したい。そのため、MIRAI特有の点検整備が可能な拠点の整備や、MIRAIならではの点検プログラムなどを準備している」と述べた。

また、クルマと人が“つながるサービス”として、MIRAI専用のオプションナビを発表。T-connect DCMパッケージを申し込むことで、水素ステーションの位置情報や稼働状況をチェックすることができる。さらにFCシステム遠隔見守り機能によって、万が一ユーザーのクルマに異常が発生した場合、それを検知し対応する体制を、販売店とメーカーにて準備していくことも同時にアナウンスされた。

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発表会席上で加藤副社長は、「我われはいま、まさにスタート地点に立った。今日が完成の日ではなく、改めてこれからの取り組みに精進していく。課題はまだたくさんある。それでもトヨタは、これからの未来を変えていく、このクルマを出そう、まず一歩を踏み出そうと決断した。

このMIRAIという名前には、クルマの未来、地球の未来、そしてこれからを担う子どもたちの未来への想いが込められている。しかし、そんな未来はトヨタだけでは実現できない。皆さんとともに歩んでいく道のりであり、当然、トヨタにとってもこれまで以上のチャレンジになる。これから始まる長い長い道のり。この発表会はそんな道のりを必ずや登り切ろうというトヨタの本気さ、チャレンジスピリットを発表する場だとも思っている」とプレゼンテーションを締めくくった。

まさに、これからが正念場。水素を作る段階でCO2が排出される問題をはじめ、インフラに関しても整備の途上にあると言える。それでも、加藤副社長の語る“第一歩”をトヨタは勇気をもって踏み出したのだ。

           
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