Mercedesbenz|メルセデス・ベンツ Cクラス ワゴン|第20回(後編)|「正しいステーションワゴンを問う」
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2015年4月7日

Mercedesbenz|メルセデス・ベンツ Cクラス ワゴン|第20回(後編)|「正しいステーションワゴンを問う」

第20回 メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴン(後編)

「正しいステーションワゴンを問う」

1990年代初頭に起きたワゴン・ブームは、バブル崩壊後のミニバンの勃興で歴史の1ページへと追いやられた。そしてときは2008年。メルセデス・ベンツの新型「Cクラス ステーションワゴン」に乗り、あらためてステーションワゴンの存在意義を問うてみた。

文=下野康史Photo by Mercedes Benz

セダンと変わらない軽快な操縦性能

セダンと変わらない軽快な操縦性能 1.8リッターにスーパーチャージャーを組み合わせた「C200コンプレッサー・アバンギャルド」に乗ってみると、とてもよかった。

いちばん感心したのはハンドリング(操縦性)で、アジリティ(俊敏)を謳い文句に掲げてデビューしたセダンと、その点ではまったく遜色ない。

ルーフを後ろまで延ばしたワゴンは、当然、セダンより車重が増える。Cクラスも同グレード比較でプラス60kg。大人ひとりぶん重い。カーゴルームの荷重を想定して、足まわりもセダンより硬めにチューンされる。

にもかかわらず、セダンとまったく変わらない軽快な操縦性能を維持しているのは大したものである。乗り心地も以前乗ったセダンの「アバンギャルド」や「エレガンス」よりしなやかで快適に思えた。

新型Cクラスのワゴンぶり

ところで、正しいステーションワゴンの定義とはなんだろう。両サイドに4枚の人間用ドアと、後ろに荷物用のテールゲートをもつ“5ドア”のボディ構造は同じでも、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のような、いわゆるハッチバック車とステーションワゴンとの違いはなにか。

それは荷室の上がり框(がまち)に“敷居”があるかないかである。ステーションワゴンは、ない。テールゲートを開けたところから、フラットな荷室が広がっている。

さらに、正しいステーションワゴンは、荷室フロアの地上高が低くなければばらない。「レンジローバー」のような大型SUVだと、たとえ荷室に入口に敷居がなくても、もともとフロアが高床式なので、嵩(かさ)のある重量物をひとりで出し入れするのはホネである。もっともレンジローバーともなると、スイッチひとつでエアサスの圧力を抜いて、車高をグッと低くする“荷物積載モード”が付いているが。

ボディの堅牢性を考えると、敷居はあるに越したことはない。逆に言うと、ボディ後部全面が開口部になっているステーションワゴンは、剛性を確保するのがむずかしいのである。

荷室の床を低くつくるのも、むずかしい。とくにプロペラシャフトが床下に延びるFR(フロントエンジン・リアドライブ)車はそうだ。ホンダなどはFFのミニバンでも「低床プラットフォーム」を声高に売りにするくらいだ。

こういった点でも、新型Cクラスのステーションワゴンぶりはお見事である。メルセデスはワゴンづくりをすっかり自家薬籠中のものにしている。荷室入口のところで測ると、フロアの地上高は57センチ。長身者なら膝小僧くらいの低い位置にある。

三つ指ついてお出迎え

しかし、なんでこういうことに妙にこだわるかというと、つい先日、フェンダーのローズ(Rhodes)をクルマで運んだのである。1970年代のロック・シーンで一世を風靡した電気ピアノだ。

ぼくのは“スーツケース”と呼ばれるいちばん小さい73鍵だが、打鍵式だから、いまの電子ピアノに比べると、イヤガラセみたいに重い。大人ふたりで担い、国産ハッチバック車のそそりたつ敷居の位置までうんとこしょと持ち上げて、ぎっくり腰の恐怖に怯えつつ、不自然な体勢でなんとか荷室床に安置した。

三つ指ついて荷物を迎え入れてくれる新型Cクラス・ワゴンがあったらなあと、つくづく思ったものである。


セダンと変わらない軽快な操縦性能

車両概要|メルセデス・ベンツCクラス
ステーションワゴン

メルセデス・ベンツのコンパクトセダン/ワゴン/クーペを構成する「Cクラス」。3代目となる現行型の日本デビューは2007年6月でセダンから。今回紹介した「Cクラス ステーションワゴン」はその約10ヵ月後にラインナップされた。

ボディサイズは、全長4600mm、全幅1770mm、全高1460mmで、取り回しのしやすさが身上。もちろんワゴンとしての使い勝手にも配慮され、トランク容量は通常450リッター、後席をたたむと1465リッターまで拡大する。

ワゴンボディだけでもバリエーションは豊富で、1.8リッター直4+スーパーチャージャーの「C200コンプレッサー ステーションワゴン」にはじまり、その上級「C200コンプレッサー エレガンス」、そのスポーティバージョン「C200コンプレッサー アバンギャルド」、2.5リッターV6搭載「C250ステーションワゴン エレガンス」とスポーティな「C250ステーションワゴン アバンギャルド」がそろう。

そして頂点に君臨するのは、AMG社が手がけた457psを発生させる6.2リッターV8をコンパクトなボディに押し込んだ高性能版「C63 AMGステーションワゴン」。価格も453万円から1050万円と幅が広い。つまりそれだけ、広い層にアピールできるモデルである。
http://www.mercedes-benz.co.jp/

           
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