新世代ジャガー「XF」が切り開く世界(後編)
新世代ジャガー「XF」が切り開く世界(後編)
高級感のみならずスポーティな走りを堪能できる「ジャガーXF」。この新しいスポーツサルーンの延長線上にみえる、名門ブランドの未来を占う。
文=生方 聡Photo by Jaguar
センターコンソールにあるスターターボタンに目をやると、赤い光が脈打つように明るさを変えている。誘われるままにボタンを押すと、エンジンの目覚めと同時に、沈んでいた丸いダイヤルがゆっくりとせり上がり、私の手に収まった。
「Jaguar Driveセレクター」と呼ばれるこのスイッチこそ、XFの独自性を端的に表すもの。XFのコクピットにはシフトレバーの常識など存在しない。
「P」「R」「N」「D」「S」というレンジこそ見覚えがあるが、ダイアルを回して選ぶというのが新感覚。その奇抜さに躊躇するかと思っていたが、いざ触れてみるとすぐに馴染める使い勝手の良さ。
さっそくDレンジをセレクトすると、XFは力強く歩みはじめた。
スポーツサルーンの名にふさわしい
XFに用意されるエンジンは、3リッターV6と4.2リッターV8、そしてスーパーチャージャー付4.2リッターV8の3タイプ。なかでもXFの魅力を存分に堪能できるのが、“スーパーチャージドV8”を意味する「XF SV8」だ。
ラグジュアリースポーツの「XKRクーペ/XKRコンバーチブル」譲りのパワーユニットは最高出力313kW(426ps)、最大トルク560Nmという圧倒的な性能を誇り、しかも、どんな場面でも右足の動きひとつで背中をググッと押すような加速を示すのだ。
これを支えるSV8のスチールモノコックボディはすこぶる剛性が高く、20インチタイヤからの入力にもビクともしない。もちろん、コーナリング中に路面を執拗に捉えるしなやかな脚は健在。つまりXFはデザイン、パワー、ハンドリングのすべてにおいて、スポーツサルーンの名にふさわしい実力を備える新世代ジャガーだったのである。
ジャガーはどこへ行く?
そんなニューモデルとともに、最近関心を集めているのが、ジャガーを取り巻く新しい環境。フォードにかわってインドの「タタ」が、イギリスの名門を傘下に収めたのは周知のとおりだ。
かつて支配された側のインドが、イギリスのジャガーを手に入れたことに驚きを隠せないが、その一方で、タタは豊富な資金力を持つインドの大手複合企業だけに、「われわれはジャガーとランドローバーに最大限の敬意を払い、そのアイデンティティを維持する」という言葉は力強く響く。
だから、ジャガーにとって今回の買収が成長へのステップになると信じたいし、このチャンスに登場したXFがその原動力になることを期待したい。
XF 3.0 Luxury 650万円
XF 3.0 Premium Luxury 760万円
XF 4.2 Premium Luxury 870万円
XF SV8 995万円
ジャガー|http://www.jaguar.co.jp/