AUDI Twin-Cup
Audi Twin-Cup|アウディ ツインカップ
世界一の技術を磨く
アウディは、技術とサービスの向上を目指し、世界中からよりすぐられたアウディディーラーが参加する、「アウディ ツインカップ ワールドチャンピオンシップ」を開催している。そのアウディ ツインカップの日本代表を決めるコンテストが、10月17日に富士スピードウェイで開催された。
文=松尾 大写真=荒川正幸
日本代表が世界一に
アウディ ジャパンは3つの成長戦略として、ブランド力の向上、より高い顧客満足度の獲得、店舗ネットワークの充実をかかげているがブランド力や顧客満足度の向上に欠かせないのが、サービス体制と整備技術だ。
アウディジャパンの大喜多寛社長は「地道でなかなか日が当たりにくい仕事ですが、アフターセールスは自動車の世界において非常に重要です」という。サービスの技術レベルが向上し、高いレベルでのサービスが提供できることで、顧客満足度が高まり、アウディブランドに対する信頼が増す。すると、またアウディへの買い替えというサイクルが生まれる。
そのため、アウディは世界36カ国で「アウディ ツインカップ」というサービス技能コンテストを開催。さらに世界一決定戦として、「アウディ ツインカップ ワールドチャンピオンシップ」を実施している。
多くの自動車メーカーにおいても同様な整備技術競技会は開催されているが、世界規模となるとアウディくらいのものだろう。まさにアウディ車のサービス技能におけるワールドカップという「世界」という目標ができることで、サービススタッフに脚光があたり、それに奮起し、より高い技術が得られるというのが狙いだ。
実際、アウディは、J.Dパワーの直近の調査によると顧客満足度総合2位、輸入車1位となるなど、サービス体制の向上が右肩上がりをつづけている。
そんな世界一決定戦「アウディ ツインカップ ワールドチャンピオンシップ2011」において、テクノロジー部門で優勝したのが日本代表として出場したアウディ高松チームだった。2011年10月4~7日までスペインで開催され、日本代表はテクノロジー部門でアウディ高松が優勝、サービス部門でアウディ月寒が13位、総合でも日本代表は6位という好成績を収めた。
Audi Twin-Cup|アウディ ツインカップ
世界一の技術を磨く
新王者は宮城から
ワールドチャンピオンシップ2011の余韻も冷めやらない10月17日、今度は来年のワールドチャンピオンシップ出場をかけた「アウディ ツインカップ」日本代表決定戦が富士スピードウェイで開催された。
この大会に集まったのは、テクノロジー部門、サービス部門ともに12チーム。全国から選りすぐりの人材が集結した。
競技内容は、テクノロジー部門が、エンジン不始動の修理と基本点検、サービス部門が顧客への応対とカーチェックというものだった。
テクノロジー部門の課題、エンジンの不始動については、テスターにかけても発見が難しいもので、ちゃんとプロセスどおりに診断しないと、45分という制限時間内には原因の究明にはたどり着けないものだった。
人間のようにどこが調子悪いとは話せないクルマのどこに不具合があるのかを見つけ出す姿は獣医のようなものである。
先日の世界大会で優勝したアウディ高松チームによると、世界大会より、日本の決勝のほうが難しいかもしれないと語っていた。それだけの難問をクリアしないと全国104店舗を代表するチームにはなれないというわけだ。
テクノロジー部門に参加した12チームはみな実力が拮抗していたが、最終的に優勝したのは世界を制したばかりのアウディ高松チームではなく、全国のアウディディーラーのなかで東日本大震災の影響をもっとも強く受けたアウディ宮城野チームだった。
アフターセールス部門 寺田部長代理の言葉によると、テスターからのメッセージの背景から何が読み取れたか、そして基本点検においてはアウディ車を正しく早く直すための道具であるスペシャルツールを使いこなせたかが鍵となったという。「ヒントは日常の業務のなかにある」と締めくくった。
その言葉を裏づけるかのように、宮城野チームは「普段やっていることを忠実にやっていただけ、現場主義です」と答えた。実際、競技会のためのトレーニング時間は3日前から3時間ずつという短いものだったという。それでも代表になれたのは、プロセスどおりに丁寧に作業を進めた結果だといえるだろう。「アウディは日常の整備で先進技術に携わることができるメーカーなので、やりがいがある」という答えも印象的だった。
Audi Twin-Cup|アウディ ツインカップ
世界一の技術を磨く
サービス部門は二連覇
サービス部門で優勝したのは、先日の世界大会に出場したばかりのアウディ月寒 水沼竜也さんが2年連続での授賞となった。
サービス部門の設問は顧客をともなった外観のチェックと車両不具合箇所の発見と各部調整というものだった。まず、25分の制限時間が設けられた顧客対応においては、親しみやすさ正しいプロセスでの進行がなされているかが評価のポイントとなる。
カーチェックもおなじく25分の制限時間で、車両に設定された5箇所の不具合を発見するなど、整備にまわす前段階での車両の状態の見極めをサービススタッフがおこなえるかどうかという部分が問われた。
「日常業務で気をつけているのは、お客様の話をよく聞くこと」と2年連続での優勝を勝ち取ったアウディ月寒の水沼さん。つぎは世界大会で前回以上の成績を残すことが目標となる。
先日の世界大会で優勝したアウディ高松チームが「世界を制したことで、お客様の目が変わりました。これからはより高いクオリティの整備が求められていることを痛感しています」と語っていた。
このように、つねに高い緊張感の中で丁寧に仕事を遂行するという姿勢が、アウディの顧客満足度の高さにつながっているのではないだろうか。
Audi Twin-Cup|アウディ ツインカップ
世界一の技術を磨く
アウディオーナーから見たツインカップ
今回開催されたツインカップには、OPENERS読者のアウディオーナーにも特別に参加いただいた。参加していただいた鴇田修一さんは、早稲田大学アジア研究機構招聘研究員として公共政策の教鞭を取り、企業の海外進出支援やM&Aをおこなう会社のボードメンバーという。
以前は、べつのメーカーのクルマを所有していたが、ル・マンに24時間レースを観戦に行き、そのときのアウディのパフォーマンスを見て以来、好きになったのだという。
所有するA6 3.0 TFSI Sラインのすべてが気に入っているという鴇田さん。4輪駆動の車両を所有するのははじめてだが、ふだんは4駆を意識させず、けれどいざとなったときの安心感はさすがだという。もうすでに、つぎもアウディと決めている鴇田さんの目にツインカップはどう映ったのだろう?
「まず自社内だけど世界規模というスケールがすばらしい。競技会が真剣な技術研鑽の場になり、モチベーションを高めている。今日のように高いスキルを見せられると信頼感は高く、彼らが整備してくれていると思うと安心。サービススタッフはかかりつけの町医者、そして整備はリハビリ入院ということでしょうか。アウディのバックグラウンドはすごいですね」
また、高松チームの語った「優勝したのでお客様の目がより厳しくなる」という言葉にも、「そういった言葉が出てくるというのは好循環の連鎖と言えるものですね。これからのアウディにも期待できます」と。
最後の表彰式まで参加した鴇田さんは「自動車はプロダクトアウトが基本です。しかし、アウディはユーザーと接点をもとうという姿勢がはっきりしている。この競技会はその象徴的な取り組みで、この接点がユーザーの声としてのマーケットインになっている。だからつねによいクルマを生み出すことができているんだと思います。現在の人気は過去の努力の積み重ねであり、未来は現在の努力の産物です。アウディには時代に応じたひとと街に融和するクルマの姿、いわゆる公共哲学を感じますね」と語った。